著者 : 吉田富夫
携帯が何十台もわたしを狙うなか、やむなく立ち上がって、みんなに手を振ってみせた。誰かが言うのが聞こえた。「見ろ。気取っておるわいー」農民はネットの世界を跋扈し、作家はノーベル賞受賞の狂騒に巻き込まれるー。“世界一美しく、世界一醜悪な故郷”高密県から放たれる人間悲喜劇12篇。ノーベル文学賞受賞後初の短篇集。
抗日運動、内戦、中華人民共和国誕生、文革、改革・開放、姦通、駆け落ち、死姦、身売りー激動の現代中国史を背景に繰り広げられる、八歳まで母乳しか受けつけずに育った混血男児・上官金童とその母、そして八人の姉たちの数奇・摩訶不思議な運命模様。
わたしの本のどれか一冊だけでわたしの文学の風格をお分かりになりたかったら、『豊乳肥臀』をお読みいただきたいー構想十年、執筆九十日。母の死後、一気呵成に書き上げられた、ノーベル文学賞作家渾身の大傑作。これぞ中国!これぞ文学!
清朝で五人の皇后を出すという、栄光に包まれた巨大な一族。その末裔で、大伯母に西太后をいただく著者が、清朝崩壊、中華民国成立、国共分裂、中華人民共和国成立さらに文化大革命を経て現代まで、激動の歴史に翻弄される清朝貴族の流転を描く。うつろう時の背後で奏でられるのは「采桑子」の哀切な調べ…西太后の末裔が描く自伝的小説。魯迅文学賞受賞。
許されぬ恋は雨にうち震え、閉じこめられた遙かな思いにライラックは香る。旧き邸によぎる遠い人の面影。革命と動乱はやむことなく、骨肉のあらそいと生死のあわいに京劇の調べはたゆたう。時をこえてひそやかに息づくおさなき日の想い。十四の愛と十四の宿命は、酔うもやるせなく、醒めるもまたやるせない…清朝貴族の斜陽を描く自伝的小説。魯迅文学賞受賞。
本書は「現代の『紅楼夢』」「記念碑」「奇書」「後世に伝わる書」と賛美の反面、「モラル不在の作品」「反共」「猥本」「作者を法により罰せよ」と罵詈雑言を浴びた。そこに描かれているのは二十世紀末の中国の現実であり、中国人の生存情況や精神位相、および生命意識などである。