著者 : 名梁和泉
「これは、わたしが小学校の、高学年だった頃の話です」--少女が雑誌に投稿した、ある家族を襲った不気味な怪異の記録。悪化していく一方の父の怪我、何者かに乗っ取られ不気味な笑い声をあげる妹。そして親類たちの死。霊能者“マツシタサヤ”によって怪異は鎮められ、記録は締めくくられる。だが、この投稿を皮切りに、マツシタサヤを巡る不可解な記録が世に溢れはじめ……(澤村伊智「サヤさん」)。 同窓会をきっかけに、故郷の実家に泊まることになった「私」。すでに実家には誰も住んでおらず、何も無い家に過ぎないはずなのに、「私」以外の何者かの気配が段々と濃くなっていく。鳥籠の中で邪悪な笑みをたたえた阿弥陀如来像、座敷の蒲団の中で蠢くモノ、そしてーー。忌まわしい記憶とともに、何かが迫ってくる(三津田信三「何も無い家」)。 ホラー界の巨星、三津田信三が、屈指のホラー小説の名手六人それぞれに相応しいテーマで「自分が最も怖いと思う怪談を」と依頼して編まれた戦慄のアンソロジー。 澤村伊智「サヤさん」 加門七海「貝田川」 名梁和泉「燃頭のいた町」 菊地秀行「旅の武士」 霜島ケイ「魔々」 福澤徹三「会社奇譚」 三津田信三「何も無い家」
山に棲む獣『紛』が里の子を己の子とすり替える。現代では迷信扱いの民話を鞍臥の人は今でも心のどこかで信じている。なぜならあたしがその「マガイの子」だからー。東京で美大に通う風哩は、「お山」で従兄が惨殺された事件の記憶がない。セクハラ教授問題で訪れた変なカウンセラーと話すうち、夢に見る「マガイ」の事を喋ってしまう。高校生の弟・怜治がまだ住む地元では「お山」の磨崖仏を調査する謎の研究者が暗躍し始め…。
火山島を望む温泉町・根倶の老舗旅館に婿入りした鵜乃吉。妻の亜津子はつれないけれど超美人。徴兵逃れのための婿入り、なんて声は気にしない。この地で小噴火は日常だけど、今日のはちょいと様子が違った。旅館組合連中がひそひそする「真耶子さんが戻ってくる」。なんで義妹が戻ってくるのが関係あるんだい?皆が信じている噂を知らぬは鵜乃吉ばかり。この島の噴火は、美しき姉妹の所為。え、心が揺れると火山が噴火してしまう特異体質?そんな馬鹿な!さらに旅館に、密偵やら逃亡中のテロリストやらが潜んでいるという疑いも湧き出てきて。過去が折りたたまれた不思議な温泉旅館で、徐々に明らかになる歴史と真実とは…!?姉妹愛と夫婦愛のスラップスティック・温泉地奇譚。
30歳過ぎのひきこもりの兄を抱える妹の苦悩の日常と、世界の命運を握る“悪因”を探索する特殊能力者たちの大闘争が見事に融合する、空前のスケールのスペクタクル・ホラー!二階の自室にひきこもる兄に悩む朋子。その頃、元警察官と6人の男女たちは、変死した考古学者の予言を元に“悪因研”を作り調査を続けていた。ある日、メンバーの一人が急死して…。第22回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。文庫書き下ろし「屋根裏」も併録。
東京で美大生をしている風哩は、八年前に「お山」で従兄が惨殺された事件の記憶がない。セクハラ教授とのトラブルで訪れた変なスクールカウンセラーと話すうち、夢に見る「マガイ」のことをつい喋ってしまう。高校生の弟・怜治がまだ住んでいる地元では、「お山」の磨崖仏を調べているという謎の研究者・砂原が暗躍しはじめていて…。姉弟愛がしみる異形モダンホラー。
東京郊外で両親と暮らす朋子は、三十歳過ぎの兄が何年も二階の自室にひきこもっていることに悩んでいた。そのころ、元警察官と六人の男女たちは、考古学者の予言を元に、人々を邪悪な存在“悪果”に変え世界に破滅をもたらす“悪因”の探索を続けていた。“悪果”を嗅ぎ分ける男・掛井は、職場で接点がある朋子への想いを募らせている。ある日、仲間の一人が急死し、身近に怪しい気配が迫り始めて…。