著者 : 和香ちか子
ロンドンで多忙な日々を送る看護師メアリー・ジェーンは、余命幾ばくもない祖父の看病をするため帰郷した。すると、彼女の唯一の肉親である祖父は、オランダから呼び寄せた外科医ファビアンを紹介して言った。「私が死んだら、ファビアンがおまえの後見人を務めてくれる」もう22歳なのになぜ後見人が必要なの?メアリー・ジェーンは思った。かなり年上のファビアンは、見た目は満点の男性だけれど、ひどく傲慢で、まるでばかにしたように私を見てくる。だがほどなくして祖父が亡くなると、彼女はファビアンに連れられてオランダへ行くことになるのだった…。
「幸せへの航海」忙しい日々を送る看護師のラヴデイは、親友に頼み事をされた。恋人との結婚を後見人のアダムに認めてもらえるよう協力してほしいと。翌日偶然アダムと顔を合わせると、彼は自己紹介のあとで突然ラヴデイにキスをしたかと思うと、続けて彼女のことを“お節介な出しゃばり”と非難したのだ。ラヴデイは激しく動揺して…。「愛と情熱の日々」ローレンは親に捨てられ、児童養護施設で孤独な子供時代を過ごした。難読症を抱え、過酷な現実にひとり立ち向かってきた彼女にとって、おとぎ話のようなロマンスは縁のないものだった。ある日、運命のいたずらにより、豪華なパーティーで、まるで別世界に住むギリシアの大富豪、アレクサンドロスと出会うまでは。「いきなり結婚?」ひとりで娘を産み育ててきたメリー。年頃になった娘の友人のおじだという長身で澄んだ青い瞳の会社社長ザックが訪ねてきて、二人が結婚するつもりだと聞かされ仰天する。しかしそれは勘違いだった。ザックはお詫びにとメリーを食事に誘う。断れず応じたメリーだったが、ザックに突然結婚したいと言われ、呆然とする!
継母に虐げられ続けて、耐えられず家を飛び出した孤児ベッキー。雨の中で途方にくれていると、ロールスロイスに乗った優雅な身のこなしの、見知らぬオランダ紳士が声をかけてきた。医師でもある男爵ティーレー彼は濡れそぼったベッキーを連れ帰り、足の悪い母親の付き添いとして屋敷での滞在を許した。生まれて初めて優しくされてどうしようもなく彼に惹かれていくベッキー…。だが、ある日、ティーレが自分のことを、「やせぎすのねずみみたいな娘に僕は魅力を感じない」と話しているのをもれ聞いて、思わず涙ぐんでしまう。
看護師のチャリティはオランダを旅行中、急病患者を助けた。そこにたまたま居合わせた医師はどこか惹かれる男性で、チャリティはのちのちまで彼のことを忘れられなかった。とはいえ、名前も知らないその人とまた会えるはずもないけれど。心にめばえた淡い恋をあきらめていたチャリティだったが、仕事で訪れたオランダの病院で、思いがけずその男性ーエフェラルド・ファン・テイレンと再会を果たす。けれど、彼の態度はひどく無愛想で、そっけない。また会いたいと夢にみるほど願っていたのは、私だけだったんだわ。チャリティの心は曇った。それが、つらい片思いの始まりだった…。
婚約者にほかに女性がいると知って、サファーは病院を辞め、専属看護師として、ある老男爵夫人の屋敷に勤めることにした。ところが男爵家の嫡子、ロルフ・ファン・ドイレンの存在が、すべてを忘れたい、傷ついたサファーの心を波立たせる。冷たい態度で接する一方で、サファーを見つめる目が熱い。真意がつかめないサファーは、その奇妙な誘惑に戸惑いつつも、秀麗な貴公子ぶりの美貌の彼から、磁石のように目が離せない。ある日、ロルフに思わせぶりな言葉を囁かれ、動揺した。「僕には好きな人がいるが、その人には恋人がいる」とー。
セバスチャン・フィオルキスと結婚しろですって?アリージアは冷酷な祖父の言葉に耳を疑った。私の愛する父を死に追いやったギリシア人実業家!その名を耳にすることさえつらいのに。祖父はショックを受けているアリージアを無視して、ある計画についてとうとうと語りだした。政敵への復讐の駒として働きさえすれば、報酬はたんまり支払ってやろうと言うのだ。祖父は知っているの?私が早急に大金を必要としていると。