著者 : 唯野未歩子
葉太は九歳の小学生。ある日家に帰ると、母がいなくなっていた。代わりに滅多に家にいない録音技師の父が一緒に夏休みを過ごすという。最初は父を拒絶していた葉太。だが、土鍋で炊いたごはん、まっすぐ進む遊び、「雪の音」をつくる手伝いなど、経験したことのない日々に葉太は夢中になっていく。このまま一緒にいたいと思っていたけれど…。父と息子のひと夏の物語。
至純の愛を描く心ふるえる恋愛小説 物語は、十年前の展覧会場から始まる。画家の卵である主人公は、そこで初めて「わたしだけの神様」に出会う。二十歳以上年上の彼は額縁職人だった。すぐに〈わたしたち〉は愛しあう。でも、恋は一年しかつづかなかった。そして十年後の再会。〈わたし〉は高校の美術教師になっている。三十八歳。再会はホテルの一室だった。そこでの優しくて官能的な性描写は、ため息が出るほど美しく、嘆賞に価する。 〈わたし〉が唯一気に入っている自作の絵は「夜の街なみ」を描いた風景画だ。「夜の風景は、いかなる光を浴びせられても夜のままなので安定しているし、すべての色を使うには昼よりも夜のほうが描ききれると、わたしは考えている」。その絵を見た高校生の教え子たちはこう感想を述べるーー「誰も愛しあわなかった夜みたい」「愛しあうって、どういうこと?」「セックスだろう」「誰もセックスしなかった夜みたい」 物語は、〈わたしだけの神様〉の死、感動的な終結に向かって静かに穏やかにながれていく。
さあ、いくよ。月・火・水・木・金と、曜日ごとに違う恋人がいる歯科医大生の衿子。ある日衿子は、恋人ではない「ラーさん」(四十歳・男性)と行き先のわからない旅にでるーふたりの行き着く先はどこ?あたらしいリアルとファンタジーが交錯する、赤羽駅発・傑作ロードノベル。
冬子の身籠った赤ん坊は、十月十日を過ぎても生まれてこない。浮気ばかりしていた夫の徹は、子供の父親を疑い、奔放な妹の緑子と、その恋人で医者の卵である海くんは、協力という名の騒動を巻き起こす…。女優であり、本作の映画化で監督デビューも果たした著者の、静けさと笑いに満ちた処女小説。
冬子29歳、ただいま妊娠9ヵ月。まごうことなき妊婦である。しかし十月十日を過ぎても子どもは産まれてこない。-個性的な女優が映画制作に先がけて初の小説に挑戦、不思議な傑作が誕生した。書き下ろし長篇450枚。