著者 : 堀川貴司
その歴史と広がり、表現はどのようなものだったのか。五山文学を探求し続ける論考、全20章。 第一部「総論 五山文学の歴史と広がり」では、中国詩総集および五山詩総集、五山文学別集それぞれについて編成の特徴についての論考や、五山の文学や学問が、公家社会と交流していく様子を時代を追って通覧できるようにしたもののほか、生きた唐物である来日僧の語録や墨蹟を取り上げて、五山あるいは広く日本社会における意義を考えた論考、五山における出版活動についての論考、同時代の他ジャンル、あるいは文化全体との関わりでは重要性を増してくる、この時期の五山文学を概観したものなどの論考を収録。 第二部「各論 五山文学の表現」では、作品の生成の場や資料、作品そのものの読解と位置づけなどを論じる。 第三部「資料紹介・書評」では、一休の言説がその門弟らによって変形流布し、近世の一休像とつながっていくことを『自戒集』関連資料によって推測した「一休関係資料紹介ー『自戒集』関連資料と『一休老和尚不審物』-」ほか、重要資料の解題・翻刻を収めた。 全体像を見渡し、細部にも注目する、五山文学研究の最前線。
日本の文学表現に漢文学が果たした役割とは。 「院政期から鎌倉時代にかけて、日本漢詩を特徴づけるのは、句題詩と無題詩という二つの詠法であるーー」という一文ではじまる、日本中世漢文学研究における名著の補訂版。 そのときどきに中国文学の新たな潮流を受け止めた日本の漢文学は、それらを血肉として、より広いジャンルへその栄養を供給していく。その営為こそが、それぞれの時代の日本文学の「全き姿」である。本書は、日本の文学表現の源流を丁寧に掘り起こしていくものである。 本書は2006年に若草書房より刊行された『詩のかたち・詩のこころー中世日本漢文学研究ー』の補訂版です。 【句題詩に代表される平安漢文学の成果が、中世文学の豊かな表現の一源泉となったように、禅林の文学もまた、次代の文学、仮名草子・俳諧に始まる近世文学の中に入り込んでいく。これには、中世にはなかった要素、すなわち商業出版の発達も大きく貢献している(本書第一八章・第一九章参照)。 このようにそのときどきに中国文学の新たな潮流を受け止めた日本の漢文学は、それをよく咀嚼し(初学書を中心とした読解・注釈)、自分たちの血肉として(詩文の創作)、より広いジャンルへとその栄養を供給していった。それらの営為を含めた文学活動の総体こそが、それぞれの時代の日本文学の全き姿なのである(本書第一五章・第一九章参照)。】……「総説」より 総説 中世漢文学概観ーー詩を中心にーー 一 句題詩をめぐって 二 鎌倉時代の漢文学 三 禅林の文学 (一)鎌倉から室町へ (二)日本化の時代 (三)文化の広がり (四)二つの視点からーーその一、『三体詩』をめぐって (五)二つの視点からーーその二、一休という問題 (六)禅林という場 四 漢文学の役割 第一部 院政期・鎌倉時代 第一章 句題詩の詠法と場 第二章 『本朝無題詩』試論ーー句題詩との対比からーー 第三章 『元久詩歌合』についてーー「詩」の側からーー 第四章 新古今時代の漢文学ーー真名序を中心にーー 第五章 『真俗擲金記』小論 第六章 詩懐紙通観 第二部 南北朝・室町時代 第七章 瀟湘八景詩について 第八章 足利直義ーー政治・信仰・文学ーー 第九章 「等持院屏風賛」について 第一〇章 「大慈八景詩歌」について 第一一章 絶海中津小論 第一二章 『狂雲集』小論 第一三章 『自戒集』試論ーー詩と説話のあいだーー 第一四章 『三体詩』注釈の世界 第一五章 『新選集』『新編集』『錦繍段』 第一六章 中世禅林における白居易の受容 第一七章 『倒痾集』試論 第一八章 こぼれ咲きの花々--禅林ゆかりの小作品群ーー 第一九章 中世から近世へーー漢籍・漢詩文をめぐってーー 再刊に際しての補足(初版訂正およびその後の研究状況について) あとがき 補訂版あとがき 初出一覧 索引
倦まず弛まず書物と格闘し新たな文学作品を生み出した、禅僧たちの営みを明らかにする。また、その後の近世文学への接続、同時代の和歌や説話、公家社会の学問との関わりを探り、孤立しているように見えている五山文学を日本文学の中に組み込むべく、その存在を新たに捉える基礎作業を行う書。
中国文学の圧倒的影響下にある 中世禅林の文学は、 日本文学から孤立しているのだろうか。 倦まず弛まず書物と格闘し新たな文学作品を生み出した、禅僧たちの営みを明らかにする。 また、その後の近世文学への接続、同時代の和歌や説話、公家社会の学問との関わりを探り、孤立しているように見えている五山文学を日本文学の中に組み込むべく、その存在を新たに捉える基礎作業を行う書。 【......五山文学の作品は、平安の漢文学とは連続性がほとんどなく、同時代の中国文学からの影響が圧倒的である。しかも日本文学の他ジャンルとの交流は、一部の和歌・連歌・謡曲などで部分的に指摘されているものの、全体的には孤立しているという印象を拭いきれない。資料整備という面では、『五山文学全集』『五山文学新集』という膨大な翻刻校訂の成果があるが、まだまだ未翻刻の作品は多く、周辺的な資料も埋もれたまま、まして注釈となるとごく一部に限られる。 このような現状に鑑み、本書では未紹介・未発見の資料をできるだけ翻刻という形でまるごと紹介するとともに、そこから読み取れる禅僧たちの文学活動(あるいは学芸一般に関わる活動)について考察することを目標とした。また、通時的には近世への接続を、共時的には和歌や説話、あるいは公家社会の学問との関わりについて考えようとした。】--本書より ●口絵カラー 〔古賛抄〕冒頭 新選分類集諸家詩(抄出本)・冒頭 唐絶句・冒頭 〔東坡詩聞書〕・扉/冒頭 覆簣集・冒頭 垂示(江隠宗顕)・冒頭/11丁表 本朝禅林撰述書目・冒頭/森大狂奥書 ーーーー はしがき 第一部 総論・論考 第一章 五山における漢籍受容 --注釈を中心としてーー 第二章 『九淵詩稿』について --室町時代一禅僧の詩集ーー 第三章 三条西家旧蔵『経国集』紙背文書について --公条と月舟寿桂ーー 第四章 瀟湘八景図と和歌 第二部 漢詩集ーー解題と翻刻ーー 第五章 〔古賛抄〕 第六章 新選分類集諸家詩(抄出本) 第七章 唐絶句 第三部 漢詩の注釈ーー解題と翻刻ーー 第八章 中世抄物研究の現在 第九章 瀟湘八景詩の抄物 第一〇章 都立中央図書館加賀文庫蔵『瀟湘八景鈔』 第一一章 臼杵市教育委員会蔵『八景詩』 第一二章 〔三体詩抄〕断簡 第一三章 〔東坡詩聞書〕 第一四章 覆簣集 第四部 その他ーー解題と翻刻ーー 第一五章 垂示(江隠宗顕) 第一六章 森大狂旧蔵 本朝禅林撰述書目 第一七章 書評 今泉淑夫著『日本中世禅籍の研究』 初出一覧 あとがき