著者 : 大下英治
邪魔者は配下の「社員」を使って消す…海千山千の実業家・黒河は、例えば、保育園園長から高級外車を購入した際、その妻の美貌に狂い、自分の愛人を夫と関係させて、交換に女を手に入れ、とどのつまりは夫を殺害。一事が万事、相手の命と引き換え。不倫がばれれば夫を殺し、事業の競争者は次々に抹殺。だが「逆らうと殺される」との噂も立ち、破滅の日は意外に早く…。衝撃の異色犯罪ノベル。
五光百貨店のプリンスとまでいわれた榊原聡明常務は、社内政治に長けた奥谷猛専務に追い詰められていた。一度は、奥谷の社長就任を許した榊原であったが、百貨店の経営については自分の方が一枚も二枚も上手だという自負もある。そこに持ち上ったのが北山流通グループ総帥の北鋭司からの誘いだった。榊原は北山百貨店の副社長として迎えられ、敵陣より五光の奥谷の経営に挑戦する。長篇企業内幕小説。
「海部俊樹は総理という名の閣僚だよ。いつでも首のすげ替えはできる」ポスト海部のシナリオは、各派閥の思惑入り乱れ、着々と進む。安倍晋太郎は竹下登との“約束”に望みをつなぐ。渡辺美智雄は宿願の渡辺派旗揚げで一歩前進。宮沢喜一も、首領金丸信にすり寄る。しかし、金丸の秘蔵っ子・小沢一郎をはじめ、人気の高い橋本龍太郎、「理念」を旗印とする石原慎太郎も虎視眈々と下剋上を狙う。が、粘る海部…。自民党知将たちの覇権の攻防を描く待望の政界野望長編小説。
甘い蜜に群がった女たちの「愛」と「野望」。男から8千万円をせしめたレストランの女経営者。元首相のために真言密教の祈りを捧げる女金庫番。父親の会長から5百万円をおどしとった水商売の女。男の浮気に憤る妻と娘。鬼才が初めて描く恐るべき真相。
「なぜ海部なのか?」派閥論理に破れた若手議員は、海部総理誕生の瞬間、無力感に打ちひしがれた。かたや橋本龍太郎を、かたや羽田孜を担ぎ奔走したものの、結局は老獪な長老たちに利用されただけだったのだ。「大臣なんかやる気はない。でも。総理大臣は別だ」と河野洋平は言う。一方、安倍晋太郎を脅かす渡辺美智雄は着々と足場を固めている…。はたして海部以後の権力者は誰か?次を狙う永田町の野心家たちを描くドキュメンタリー・ノベル。
平和相互銀行の帝王・鬼里山秀蔵は己の事業と地位をより強固にするべく、もと地検で“カミソリ”の異名を取った菊坂重光を顧問弁護士に迎え入れる。が、野望空しく鬼里山は急死。代りに菊坂が第2の帝王たらんと、鬼里山一族はじめライバル潰しを画策する。その内紛を政財界は座視するはずがなかった。平相銀呑み込み作戦が密かに開始されたのだ。
美智子はネクタイを持つ手に、もう一度、力を入れた。首を締めつけた。真二の口から、細かい泡が出た。が、その泡も出なくなった。美智子は突然、思いついた。〈このひとをわたしのものにするんだ!このひとの大切なものを切り取ってやる!〉(「五十一人目の阿部定」より)-事件の陰にひそむ哀しい人間の業を抉る迫真のドキュメント・ノベル。