著者 : 大下英治
二〇一六年七月三十一日、一人の力士がこの世を去った。小柄ながら躍動する筋肉で大型力士を次から次へと投げ飛ばす、伝説の横綱千代の富士。国民から愛されたスターの裏には、想像を絶する苦労があった。左肩の脱臼癖。幕下落ちの屈辱。生まれたばかりの三女の訃報。飛び交う引退の噂。そして気力、体力の限界ー剥き出しの闘志で我々を虜にした、昭和の名横綱の記憶。
父のすべてを受け継いだ娘の壮絶な闘い!父の怨念を背に、圧倒的な人気、天性の表現力、底知れぬバイタリティーで旧態依然の政界に激震をもたらす真紀子。角栄の総理就任から三十年。天国と地獄を味わった父のそばで息を呑む権力闘争を見てきた娘の原点に迫る。
角栄の再来、“女ブルドーザー”真紀子の逆襲!父から受け継いだ、政治家としての鋭い嗅覚とずば抜けた破壊的なパワーを武器に、政界再編の目となった真紀子。終わりなき闘いは、角栄の娘の宿命か!?彼女に初の女性総理就任の日は来るのか。
「今回の旗揚げに失敗すれば、おれの政治生命も終わりだ。もう引き返せない」-竹下登は敢然とオヤジに反旗を翻した。最後に笑うのは、橋本龍太郎か小沢一郎か、それとも野中広務か?裏切りと恫喝、変節と野合-巨星、墜つ。賽は、投げられた!「角栄」政治を継承する男たちの生き残りを賭けた現代版三国志。
昭和を体現した宰相の伴侶で金庫番、そして「越山会の女王」と呼ばれた佐藤昭子。運命の出会いに始まり、二人三脚で総理にまで登り詰めた男と女の、いまだから明かせる物語。
平成元年、竹下登の後をうけて新総理となった宇野宗佑だが、女性スキャンダル、参院選での自民党惨敗で、あっけなく退陣に追いこまれる。後継総裁をめぐり隠然たる勢力をふるう長老たちの水面下の争いとともに、硬直化した党の改革を目指す若手たちとの世代間戦争もまき起こり、内部の混迷は深まる。橋本龍太郎、海部俊樹、河野洋平、小沢一郎、羽田孜などの名が新総裁候補として浮かび上がっては消えていく。
昭和62年10月、中曽根裁定によって内閣総理大臣となった竹下登だが、政局は消費税導入をめぐる国民、野党の猛烈な反発、さらに税制国会中に明るみに出たリクルート疑感によって混迷を深めていく。内閣官房副長官、小沢一郎とともに舞台裏の根回しに走り、“国対の神様”金丸信を税制特別委員長にかつぎ出し、懸命に野党との駆け引きをくり返す竹下だが、ついに退陣の腹を決める。激動期を描く政治ノベル。
百二十人という勢力を誇る「経世会」を旗揚げした竹下登は数の力をバックに、首相の座を目指して着々と準備をすすめる。一方、昭和六十二年十月八日の自民党総裁戦告示日には、竹下とともに安倍晋太郎、宮沢喜一も満を持して立候補届けを提出した。次期総裁をめぐる水面下の暗闘は、名派閥の思惑を秘めて激しさを加える。任期切れの中で最後まで野心を捨てない中曾根が竹下を指名するまでの熱く長い日々を描く。
日本列島改造論で一大ブームを巻き起こした田中角栄だが、金脈問題やロッキード疑惑でついに政権の座を明け渡す。しかし、後を継いだ三木、福田、大平の各首相時代にも、強力な軍団の闇将軍として隠然たる権力を誇り、中曾根政権を誕生させた。だが、やがて世代交代論が新世代議員から沸き起こり、ついに田中派は本格的に分裂。竹下登を中心とする創政会と田中直系の二階堂派との対立抗争が広がっていく。
歴代総理の中曽根康弘、宮沢喜一。田中角栄を退陣に追い込んだ共産党の松本善明。元社民連の江田五月など、東大法学部に学んだ人物の歩んだ道を辿り、超エリート養成機関の実像を描き出す。日本の政財界の中枢を担う人物たちがどのように東大法学部を目指し、人脈を作り上げていったのか。綿密な取材と豊富なエピソードで読ませる実録ノベル。