著者 : 大沢晶
手術室専属看護師長のアミリアは27歳。やりがいのある仕事と良い仲間に恵まれ、充実した毎日を送ってはいるものの、唯一、婚約者のことで気を揉んでいた。昇進と倹約には熱心だが、結婚はおろか、そもそもアミリア本人に無関心すぎるのだ。釣り好きの父に誘われた北欧への3人旅も、結局彼は父娘を残し、仕事を理由に先に帰国してしまった。もう諦めるしかないの?そんなとき旅先で出会ったのが、ハンサムな医師ギデオンだった。父と同じ釣り好きで話は弾み、気遣いのできる穏やかな彼に、アミリアは急速に惹かれていく。でも…私には婚約者がいるわ。お見通しだと言わんばかりに彼が呟いた。「僕と結婚すればいい」
レイシーが12歳のとき、最愛の父が再婚した。金目当ての継母にとって彼女は邪魔者でしかなかったらしく、ほどなくしてレイシーは修道院の音楽学校へ預けられた。だが卒業目前になって事態が一変する。父が病に倒れると同時に事業の経営も悪化。継母から助けてほしいと泣きつかれたのだ。海運王トロイを満足させ、資金を引き出せれば父は助かるのね?レイシーにしかできないという継母の口車に乗せられ、妖艶なドレスで飾り立てられた彼女はトロイに身を投げだすが、荒々しく唇を奪った彼から思いがけない言葉をかけられる。一夜だけの相手は必要ない。結婚してほしい、と。
教師のジェマは校長に退職を迫られ、落ち込んでいた。財政難ゆえのリストラで、実家が裕福な彼女に白羽の矢が立ったのだ。教師の仕事はジェマにとって生きがいだったし、古い価値観の両親とは折り合いが悪く、実家に頼りたくなかった。そんななか兄の結婚式で帰郷したジェマは、思わぬ人物と再会する。ルーク・オウローク。十代半ばで出逢い、心の友となった年上の男性。若気の至りで「キスのしかたを教えて」と彼にお願いし、些細なことから口論になって、疎遠になってしまったけれど…。あれから10年。美しく成長したジェマと、冷酷無比な大物実業家ルーク。痛いほど胸を高鳴らせるジェマに、ルークから思わぬ申し出がーこれから2カ月間、僕のアシスタントとして働かないか、と。
パーティの間じゅう、ナターシャは部屋の隅で微笑んでいた。今日、突然フィアンセから婚約解消を言い渡された彼女には、悲しみにくれる心の置き場がわからないのだ。そんなナターシャを、熱を孕む瞳で見つめるひとりの男がいた。敏腕経営者でプレイボーイと名高い、ジョー・ファラルだ。わけもわからずナターシャが、震えて吐息をのむと、ジョーは彼女の手を優しく取り、そっと外に連れだしーいますぐ消えてなくなりたいナターシャは身をゆだねたのだ。一夜の夢に。その代償に、妊娠してしまうとは思いもせずに。
サマーは凍りついた。あれはチェイス・ロリマーではないか。二人の出会いは、5年前の夏の日までさかのぼる。恋人の浮気現場を目撃し、心が傷つけられたサマーに、チェイスは大人の魅力を漂わせ、近づいてきたのだ。若く未熟なサマーはわけもわからず、彼の掌中で弄ばれーひどい男性不信に陥った彼女は、そのせいで未だ純潔だった。望まぬ再会を果たしたサマーを見つめ、彼は冷笑して告げた。「僕と結婚するんだ。さもなければ例の写真を…」なぜいまごろになって?思い出したくもない古傷がまた疼く。
レイシーが12歳のとき、最愛の父が再婚した。ファッション雑誌から抜けだしたような美女ミシェルが、莫大な富と地位を目当てに父の後妻に収まったことは明白で、彼女はレイシーを厄介払いとばかりに修道院へ送り込んだ。卒業を目前にしたある日、思いがけずミシェルが迎えに来る。父の容態とともに事業の経営が悪化し、破産を免れるには、レイシーに有力者のもてなしをさせて出資を募るしかないという。だがギリシアの石油王といわれるトロイ・アンドレアキスは、妖艶なドレスで飾り立てられた、まだ少女のようなレイシーを見て、一夜の接待などではなく、妻になることを要求したのだった。
ブルックリンのユダヤ人コミュニティに秘蔵されてきた一つの財宝が紛失した。「見者の石」と呼ばれる72カラットの巨大なダイヤモンド。元NY市警刑事のドヴ・テイラーはその石の探索を心ならずも引き受ける羽目になった。アルコール依存症と苦闘しながら調査を進めるうち、ドヴは19世紀初頭の東欧に端を発する凄惨な抗争の陰謀の渦に巻き込まれていく。