著者 : 天沢退二郎
ぼくは踏みにじられたぼろ屑だった。不幸を自分の身に引きよせ、死にかかっていた…。スペイン戦争前夜。まっ黒な予兆をはらんだ青空の下で、破滅に瀕したひとりの男。彼をうちのめした苦悶とはなんだったのか。嫌悪と倦怠と恍惚とー。「黒いイロニー」をもとめつづける孤独な魂の彷徨を、息づまるばかりの切実さで描く。著者自身によって発表まで20年間遺棄されていた、思想的作家バタイユの危険と魅惑にみちた傑作。
円卓の騎士たちの至高の冒険と幻夢の数々。全編にみなぎる血とエロスと聖性のドラマ ≪聖杯≫とは、イエス・キリストが最後の晩餐に用いた食器で、それがさらに磔刑のキリストのしたたる血を受けた容器に結びついて象徴化されたものである。この神聖侵すべからざる聖杯の探求を主題とする物語は、ケルト伝説に源をもつアーサー王物語群の一つとして12世紀のフランスで生み出され、十字軍の影響の下、全ヨーロッパに広がった。本書は、詩人でありフランス中世文学の研究者としても知られる天沢退二郎による中世仏語原典からの本邦初訳。 (本書は1994年に人文書院より刊行した) ○目次 第1章 聖霊降臨節 第2章 さまざまの冒険 第3章 ソロモンの舟 第4章 生命の樹 第5章 三人の騎士とペスヴァルの妹 第6章 コルブニック城のランス路 第7章 コルブニックからサラスへ 第1章 聖霊降臨節 第2章 さまざまの冒険 第3章 ソロモンの舟 第4章 生命の樹 第5章 三人の騎士とペスヴァルの妹 第6章 コルブニック城のランス路 第7章 コルブニックからサラスへ 訳注 解説 ビブリオグラフィー 図版一覧
天涯の孤児となったバルーディエルは、マルセイユの骨董店で、南仏の小さな街で、不思議な人物たちに出会う。自らの名の秘密、魔法の指輪の謎、庭園の美少女への恋…。孤独な魂の冒険が、今始まる。