著者 : 守野伊音
自らの横暴によって資源が枯渇し環境が破壊された地球から人類が宇宙へと旅立たざるを得なくなって400年余り、人々が暮らす巨大人工星の数は10を超えた。そのひとつ、第5人工星で暮らすユズリハとアクアはこの世に生を受けて以来の幼馴染であり親友であったが、ユズリハの一家が他星へ移住することに。再会を誓っての別離の間に人工星間で戦争が勃発し音信が途絶えたなか、16歳になったユズリハは故郷の星でアクアと偶然の再会を果たす。いまだに自分のことを男だと勘違いしているアクアにユズリハは恋心と告げられない秘密を胸に抱え込んでいたのだがー。
魔女ーそれは世界に動乱を呼ぶ者。只人には持ちえない力を持ち、それでいて気まぐれで、己たちのルールにのみ従う。魔女に翻弄される人々は、魔女を恐れ、厄災と呼んだ。そんな魔女の中でも特に傍若無人な師匠から独り立ちしたばかりの新米魔女キトリは、依頼を受けてシルフォン国の王城へ赴く。彼女の前に現れたのは、気が強そうな美しい女性。“彼”こそシルフォン国の第一王子にして、厄介な魔女に呪われた不運な青年リアンだった。
セノレーン王国の第一王子でありながら娼婦を母に持つその出自から正妃に疎まれ、常に命の危機に晒され続けてきたオルトスは、王子として持つべき力を何も与えられず、この先の未来さえ見通しが立たない虚無の象徴であった。国軍に所属する魔術師の少女エリーニは、白昼堂々、王城内で暗殺未遂に遭ったオルトスを庇ったことから、二人揃って“欠魂”してしまう。同時に欠魂した弊害で互いが四歩以上離れると意識を失う事態に陥ったエリーニとオルトスは、行動を共にしつつ魂を修復する方法を模索し始めるが、二人にはそれぞれ胸に秘めた思惑と願いがあったー。
犬猿の仲である隣国との国境に一番近い村で、ミシルは医師の父親を手伝いながら穏やかに暮らしていた。ところがある夜、急患の呼び出しを受けた父が出かけ、ひとりで診療所兼自宅を守っていたミシルのもとに鬼気迫る顔をした騎士がやってくる。国境沿いにある砦からやってきたその騎士によって馬で砦へと強制的に連行されてしまうミシル。ひっぱくした事態が起こっていることを悟ったミシルだったが、砦に到着した彼女が目撃したのは脂汗を浮かべ悶え苦しむ騎士たちだったー。
前世からの想いを実らせ、婚約した狼領主・カイドと“お嬢様”・シャーリー。婚約報告のため上がった王城で、二人は“王女”アジェーレアの闇にとらわれる。民から愛される完璧な王女にとり、欲しいものは捧げられて当然。カイドとシャーリーの“綺麗な恋”に憧れたアジェーレアは、カイドを欲してシャーリーを幽閉する。最愛の人を救うべくカイドが奔走する中、歪んだ“王女”が本当に求めたものはー。転生しても続く恋物語。王都で再び二人の絆が試される。
ルーナの記憶は戻らず、ユアンも子供に返ったままだったが、カズキ達はガリザザ行きの船上でそれなりに平穏に過ごしていた。しかし突然の嵐によって船は難破。次に目を覚ましたときには、何故かガリザザのの兵士とともに囚われていた。皇子ディナストは、罠に人間を嵌めて上から見学する遊戯にハマっているとのこと。とんでもなく悪趣味な事態に巻き込まれたものの、アリスとルーナの持ち前の運動神経により、一同は何とか試練をクリアしていく。しかし、同じ闘技場に囚われた仲間だと思っていた男たちに、突如として剣を突きつけられてしまいー。
転生してからの15年間、この生は罰の続きと、自分を戒めていた。けれど、シャーリーとして死を意識し、思い知る。私は、彼が好き。カイドと生きたいとー願ってしまった。“お嬢様”の婚約者の転生者だったティムと、ダリヒ領主・ジョブリンの陰謀で、毒殺されたはずの狼領主・カイドは生きていた。前世の記憶を持ち今世を生きる意味にもがくティムは、カイドの前でシャーリーもろとも濁流に身を投げ…!?前世からの“偽りの恋”。誰もがその真実に向き合う物語。
悪逆領主の娘として処刑された記憶を持ち、前世と同じ場所・ライウス領に転生した少女・シャーリー。現在この地を治めるカイドは、前領主の悪事を暴き断罪した立役者であり、シャーリーの前世の“偽りの恋人”でー仇だった。修道女になるはずのシャーリーが、カイドの館のメイドになった時、運命は再び動き出す。15年前の過ちと嘘、ライウス領を狙う陰謀、そして“ライウスの徒花”の真実…。全てを巻き込み、転生しても続く“偽りの恋”の行方はー。
ゼフェカの企みにより、十年の蟠りが噴出したグラース国とブルドゥス国。軍士の大規模な離反が現実となってしまった中、カズキは偽黒スヤマの侍女としてお茶会に付き添っていた。ゼフェカがそばを離れたこの好機に、少しでもスヤマから情報を得ようと、イヴァルとヒューハと共におしゃべりに花を咲かせてスヤマの動揺を誘う。そんな中、会場内に一人の男が現れ、カズキに同行を願い出る。知らない男に警戒するカズキだが、男の正体を知って一気に警戒を解く。男は問う。「異世界人の目から見て、この国はどう見える」と。カズキは、その質問にこう答えたー。
十年ぶりに降り立った異世界で無事にルーナと再会できたカズキ。だが、黒曜という肩書の為に命を狙われてしまう。身の安全を守る為、アリスローク・アードルゲの家にかくまわれ、彼の女家族達と楽しい時間を過ごすことに。だが、娼館を襲ったものと同じ集団がアードルゲを襲う。戦争によって大切な人を失い続けてきたアードルゲにある、故人を偲ぶ唯一の絵を燃やさせるわけにはいかないと、カズキは自ら囮となって屋敷を飛び出した。捕らわれた先で地下室に閉じ込められたカズキは、謎の青年ゼフェカに出会う。彼はカズキの「いつまでここにいればいいのか?」という質問に「時代が終わるまで」と答えるのだったー。
戦時中のグラース国に転移した須山一樹は、年下の少年、ルーナ・ホーネルトと恋に落ちた。しかし、長かった戦争が終わった夜、気がつくと日本に帰っていた。それから十か月後。何の因果か、カズキは再び異世界にいた。だがそこは、敵対関係にあったブルドゥス国の王都。しかも、自分が消えた夜から十年が経過していた。行き場のないカズキは、偶然出会った少女リリィが経営する娼館で下働きとして過ごすことになる。二度目の異世界生活に慣れてきたある日、カズキはこの十年で名が知れ渡った「黒曜」という存在を知る。それは、終戦の夜に消えた異世界人の自分が、終戦の女神だと担ぎ上げられたものだったー。