著者 : 宮本紀子
夏の空が晴れ渡る七月十六日。日本橋伊勢町の大店、小間物商「丸藤」の総領娘・里久は、藪入りでも里帰りはしないという小僧の長吉につき合って、蔵前の閻魔堂へ参拝に来ていた。どことなく寂しげな長吉を誘い、里久は屋台の天ぷらを堪能するが!?一方、暦は進んで十月。里久の妹で、伊勢町小町と呼ばれる丸藤の看板娘・桃のもとに、縁談が舞い込む。姉より早い妹の縁談に、両親は戸惑い、想い人のいる桃の胸の内は揺れに揺れてー。日本橋の老舗小間物商をもり立てる姉妹の物語、大好評第二作。
江戸の真ん中、日本橋伊勢町の小間物商「丸藤」は、紅やおしろい、櫛やかんざしなど、きらびやかな品揃えが自慢の大店だ。その「丸藤」の娘ふたりのうち、幼いころから病弱で品川で暮らしていた姉の里久が、年頃を迎え、家族のもとに戻ってきた。ところがその里久、漁師町の暮らしにすっかり染まり、まっすぐな物言いと大店の娘らしからぬ立ち居振る舞いで、実の母も妹・桃も戸惑うばかり。だが、里久の底抜けの前向きさが、閑古鳥が鳴き始めていた店を少しずつ変えていってー。おてんばな姉と小町娘の妹、看板姉妹の物語。
吉原の妓楼から依頼を受け、客から借金を取り立てる始末屋「だるま屋」。そこで働く直次郎は、大見世「丁字屋」の花魁・真鶴から名指しで依頼を受ける。真鶴の妹分である花菊の首を絞めて逃げた男を探し出し、百両を取り立ててほしいと言う。直次郎の胸に、吉原で命を落とした妹の最期が浮かびあがるー。逃げた男の正体は!?そして、花魁の秘めたる思いとは!?
女手ひとつで釣り宿を営むおこうの前に、一人の男が現れる。若かりし頃、二人は雨宿りをした寺で、盗賊を殺め、五十両を掠めとったのだ。そして所帯を持ったが…。二度と会うとは思わなかった男との再会に動揺し、おこうは懐に包丁を忍ばせてー。第6回小説宝石新人賞受賞の表題作を含む五つの短編、それぞれの登場人物が、複雑に絡み合う時代小説連作集。
吉原の妓楼から依頼を受け、客から借金を取立てる始末屋「だるま屋」。そこで働く直次郎は、理由のわからぬ苛立ちを抱え、今日もまた容赦のない取立てを繰り返す。「だるま屋」のひとり娘・お蝶は直次郎をたしなめつつも、ほのかな恋心を寄せていた。そんなある日、吉原屈指の大見世「丁字屋」の花魁・真鶴から名指しで依頼を受けた直次郎。真鶴は妹分・花菊の首を絞めて逃げた男を探し出し、百両を取立ててほしいと言う。直次郎の胸に、吉原で命を落とした妹・しのの最期が浮かびあがるー。