著者 : 宮沢賢治
とりて来し 白ききのこを見てあれば なみだながるる 寄宿のゆうべ “日本を代表するきのこ文学者”宮沢賢治の短歌・詩・小説・童話を集成! 『泉鏡花きのこ文学集成』に続く、「きのこ文学」シリーズ第二弾! その魅力を説く「編者解説 きのこ文学者としての宮沢賢治」付! 楢夫(ならお)は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。其(そ)の幹の、丁度(ちょうど)楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。 楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。 「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、ずいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張(いば)ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ」 そしたら、きのこの上に、ひょっこり三疋(さんびき)の小猿があらわれて腰掛けました。(「さるのこしかけ」より) 【内容目次】 短歌四首 詩:何をやっても間に合わない/休息/おい けとばすな/スタンレー探検隊に対する二人のコンゴー土人の演説/秘境/林と思想 小説・童話 さるのこしかけ/三人兄弟の医者と北守将軍/あけがた/車/ビジテリアン大祭/税務署長の冒険(抄録)/谷/二人の役人/どんぐりと山猫/狼森と笊森、盗森/鹿踊りのはじまり/土神ときつね/朝に就ての童話的構図 編者解説 きのこ文学者としての宮沢賢治 飯沢耕太郎
幻妖メルヘン集ーー宮沢賢治、小川未明、牧野信一、坂口安吾を収録。ノスタルジーと夢魔を宿す遥かなるメルヘン群全59編。ある日一郎君のところに届いたふしぎな手紙「どんぐりと山猫」。金色の輪の少年が導く死の世界「金の輪」。不条理なリンチの慣わしがある奇妙奇天烈な村の物語「鬼涙村」。憎むべき論敵・蛸博士への復讐がたくらまれるナンセンス・ストーリー「風博士」他。 宮沢賢治 別役実編 どんぐりと山猫 セロ弾きのゴーシュ 双子の星 オツベルと象 よだかの星 なめとこ山の熊 やまなし 月夜のでんしんばしら タネリはたしかにいちにち噛んでゐたやうだった インドラの網 毒蛾 雪渡り 鹿踊りのはじまり ざしき童子のはなし 銀河鉄道の夜 解説 賢治宇宙への旅 小川未明 池内紀編 黒い旗物語 眠い町 薬売り 赤いろうそくと人魚 金の輪 港に着いた黒んぼ 野ばら 子供の時分の話 牛女 殿さまの茶わん 大きなかに 酔っぱらい星 火を点ず 月夜と眼鏡 ある夜の星たちの話 三つのかぎ 海と太陽 あかい雲 闇 月とあざらし びんの中の世界 白い門のある家 はまねこ 初夏の空で笑う女 戦争 薔薇と巫女 解説 ことばは沈黙に、光は闇に 牧野信一 種村季弘編 繰舟で往く家 風媒結婚 夜の奇蹟 痴酔記 吊籠と月光と 淡雪 月あかり 鬼涙村 風流旅行 バラルダ物語 解説 ピュグマリオンふたたび 坂口安吾 富士川義之編 風博士 桜の森の満開の下 風と光と二十の私と 木枯の酒倉から 狂人遺書 私は海をだきしめていたい 紫大納言 夜長姫と耳男 解説 「ふるさと」幻想