著者 : 小川一水
神鳳鉱産に所属する鯛島俊機と見河原こなみは、試錐艇デビルソードで新資源メタンハイドレートを探索する業務にあたっている。そんな二人に、ある日海上保安庁から沈没した自動車運搬船の調査依頼が舞い込んだ。世界各地で同様の事故が多発しており、運搬船の乗組員は最後の通信で「硬い化け物を見た」と言い残したらしい。俊機とこなみがよく知るはずの海で、何が起きているのか…。群青世界の神秘に迫る海洋冒険SF。
世界が重素の海に沈んだ災厄「大洪雲」後ー人間はわずかに残った島々で、空中を漂う浮獣を生活資源に暮らしていた。トリンピア島で怠惰に生きる少年リオは、年上の女性ジェンカから浮獣を狩るハンター「翔窩」に勧誘される。両親を見返すため渋々仕事を始めたリオだが、シップに乗り、浮獣を狩る楽しさに徐々に目覚めていく。だが古の浮獣グリースに話しかけられてから、リオは世界の成り立ちに疑問を抱きはじめるのだった。
名門中等院に通うテオは文明国エイヴァリーの粋を集めた国際寝台列車“千マイル急行”で向学の旅に出た。都市鉄道の社長を務める父親と「本物の友達を作る」という約束を交わしてーだが出発して間もなく、列車は強国ルテニアとレーヌスの連合軍に襲撃されてしまう。豪華な寝台列車とその乗客たちに為す術などないと思われたとき、密かに連結されていた装甲列車メイドン・カースルとエイヴァリー都市軍が反撃を開始した。
危機を脱したテオたちにもたらされたのは、祖国占領の報だった。エイヴァリー政府は事態を予測し、千マイル急行を脱出させたのだ。一夜にして難民となったテオは、ローライン、キッツ、アルバートらの少年少女とともに援軍を求めて東半陸の采陽を目指す決意をする。帰る国すら失った寝台列車が立ち寄る町々で嫌悪を向けられ、他国軍から執拗に狙われる理由を何も知らないまま…小川一水の描く「陸」の名作、待望の復刊。
メニー・メニー・シープという人類の箱舟を舞台にした、“救世群”たちとアウレーリア一統の末裔、そして機械じかけの子息たちの物語は、ここに大団円を迎える。羊と猿と百掬の銀河の彼方より伝わる因縁、人類史上最悪の宿怨を乗り越え、かろうじて新世界ハーブCより再興した地で、絶望的なジャイアント・アークの下、ヒトであるヒトとないヒトとともに私たちは願う、青葉よ、豊かなれと。天冥の標10巻・17冊、ついに完結。
全宇宙を覆いつつあるオムニフロラを食い止めるべく、カルミアンの総女王オンネキッツは、人工的な超新星爆発を起こそうとしていた。それに対抗する超銀河団諸族の巨大艦隊の真っ只中へと到達したセレスだったが、その内部ではMMS、“救世群”、2PAの連合軍が、状況を打開する鍵となるドロテアへの進攻を開始していた。それは、姉であるイサリの指揮の下、太陽系を滅ぼした仇敵ミヒルを討ち取ることを意味していた。
女王ミヒルを駆逐したメニー・メニー・シープは、ついに“救世群”との和平を成し遂げる。太陽系から合流した二惑星天体連合軍(2PA)とともにカルミアンの母星に到達したセレスだったが、そこには超銀河団諸族の巨大艦隊が待ち受けていた。果たして彼らの狙いとは?カドム、イサリ、アクリラらは、メニー・メニー・シープの未来を求めて苦闘するがー今世紀最大最高のSFシリーズ万感の完結篇、ついに刊行開始。
弱小なディメ王国の醜悪な第六王子アリスマは、その類まれなる計算能力によって頭角を現していくがー森羅万象を計算し尽くす夢に取り憑かれた王を描き、星雲賞を受賞した表題作、英語版アンソロジー初出の宇宙SF「ゴールデンブレッド」、なぜか自律運転車に乗せられる人型ロボット、アサカさんを通して、AIの権利を考察する書き下ろし「リグ・ライトー機械が愛する権利について」ほか全5篇を収録の最新作品集。
「まんじゃしろ」に祭られている美森さま。過疎が進む山村、美森町の守り神だ。去年越してきたなんでも屋・岩室猛志と、地元出身の大学生・貫行詐織は、町で起こる事件を解決すべく探偵ユニット“竿竹室士”を結成した。事件の数々は、美森さまのお使いが起こしていると言うが、それって本当…?不思議な存在と民俗学、SFが交錯する、新感覚のミステリー!
東北復興と科学振興のため、北上山地の地下への誘致をめざす国際リニアコライダー(ILC)。ILCとは、全長約30kmのトンネル内で電子と陽電子を衝突させてビッグバン状態を再現、宇宙の誕生や素粒子の起源について研究するための巨大加速器である。このILCが建設された近未来を舞台に、小川一水、柴田勝家、野尻抱介の3人のSF作家が、岩手と日本、物理学の新たなビジョンを紡ぐ書き下ろしアンソロジー。
セレス地表で世界の真実を知ったカドムら一行は、再会したアクリラとともにメニー・メニー・シープへの帰還を果たした。そこでは新政府大統領のエランカが、“救世群”との死闘を繰り広げつつ議会を解散、新たな統治の道を探ろうとしていた。いっぽうカドムらと別れ、“救世群”のハニカムで宥和の道を探るイサリにも意外な出会いがー。あまりに儚い方舟のなか、数多のヒトたちの運命が交錯する、シリーズ第9巻完結篇。
カドム、イサリらは、ラゴスの記憶を取り戻すべく、セレスの地表に横たわるというシェパード号をめざしていた。それは、メニー・メニー・シープ世界成立の歴史をたどる旅でもあった。しかし、かつてのセレス・シティの廃墟に到達した彼らを、倫理兵器たる人型機械の群れが襲う。いっぽう、新民主政府大統領のエランカは、スキットルら“恋人たち”の協力も得て、“救世群”への反転攻勢に転ずるがーシリーズ第9巻前篇。
時は近未来2050年。赤道直下の宇宙産業都市リンガには、ひたむきに働く女の子たちがいた。宇宙服のデザインに挑む京野歩、月と地球を結ぶ軌道エレベーターに乗務する犬井麦穂…。窮地に立たされても夢とスキルとプライドで乗り切る彼女たちのお仕事オムニバスストーリー。
西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、邪悪なる“咀嚼者”の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遙かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、メニー・メニー・シープ再興に向けた苛酷な道へと踏み出していく。そして瀕死の重傷を負ったアクリラは、予想もせぬカヨとの再会を果たすがーふたたび物語が動き始めるシリーズ第8巻後篇。
森のペンションに集った十人の男女。恐喝を受けた相手を全員で協力し殺害するが、裏切り者がいることが判明する。殺人に手を下さなかった一人は誰だ?(表題作)。その他、閉鎖された宇宙訓練施設で起こる毒ガス殺人事件(「星風よ、淀みに吹け」)、父の遺言の不審点を調べるうちに、壮大な謎に遭遇する少女の物語(「くばり神の紀」)など、絶妙なトリックの三編を集めた傑作集。
東京でエリート公務員の仲間入りと意気込む八橋鳳一が配属されたのは、特殊郵便だけを配達する部署だった。班長・桜田美鳥の下、どんな物でもあらゆる手段で届けるのが仕事。ある時はトレーラーで一軒家を運び、高層マンションへ速達を配達するのは特殊はしご車で、終電後には深紅の新幹線を走らせる。そして、ダービー馬を出走時間に間に合わせるには!?-特殊任務遂行、お仕事小説。
「和菓子」をモチーフに、短編を一作書いていただけませんか?読書家としても知られる『和菓子のアン』の著者・坂木司が、今いちばん読みたい人気作家たちに執筆を依頼。日常の謎を描くミステリーから、壮大な世界観を展開するSF、心温まる優しい怪談まで、さまざまな読み味の作品が揃いました。疲れたときに読みたくなる、宝箱のような一冊。
西暦2231年、木星前方トロヤ群の小惑星アキレス。戦争に敗れたトロヤ人たちは、ヴェスタ人の支配下で屈辱的な生活を送っていた。そんなある日、終戦広場に放算された宇宙戦艦に忍び込んだ少年リュセージとワランキは信じられないものを目にする。いっぽう2014年、北アルプス・コロロギ岳の山頂観測所。太陽観測に従事する天文学者、岳樺百葉のもとを訪れたのは…。21世紀と23世紀を“つないで”描く異色の時間SF長篇。
西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した“酸素いらず”の国だった。海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカに暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたという彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが…。シリーズ第3巻。