著者 : 小林久三
古くから娯楽の中心として発展してきた映画は推理小説と相性が抜群で、『第三の男』『オリエント急行殺人事件』『薔薇の名前』『犬神家の一族』『砂の器』など、ミステリー小説が原作の名画は枚挙にいとまがない。そんな映画の世界を題材に描かれた短編を集めたミステリー・アンソロジー。十二人の名手たちによる映像を超える傑作ドラマが開幕!
織田信長暗殺の報を、毛利攻めの陣中で聞いた秀吉は、明智光秀を討つべく急遽反転。宿敵徳川家康は伊賀越えで難は逃れたが、天は秀吉に味方して…彼の数奇な運命をささえ、天下人にまで出世させた陰の勢力・日影一族との共栄を、斬新な視点から描く太閤記。
三カ月前に交通事故で死んだはずの不倫相手によく似た男を、街で見掛けたOL。そんなはずは…。彼女の背後にはドス黒い陰謀が密かに迫っていた-日常と隣り合わせの犯罪の魔手、突然降り懸る不可解な出来事、身に覚えのない事件に巻き込まれる男と女…現代社会の裏面を鋭く抉り出す、本格傑作ミステリー。
長・谷内の娘が失踪。公園の記念碑の台座の裏で死体となって発見された。四人目の犠牲者だった。疑惑の眼差しが谷内の部下で不倫相手の陽子にふりかかった。「黄色いカナリヤ…キイワードは黄色いカナリヤ」陽子の部屋にかかった謎の電話とベっドの上に置かれたカナリヤの死骸。何を意味するのか…。追いつめられた陽子に、カナリヤの謎を解く一通の手紙が舞い込んだ。恐怖の罠。ドンデン返しの妙。愛と哀しみと憎悪を描く、長編サスペンス推理の力作。
刑務所から出所したばかりの男が、東京郊外に住む俳句の師匠・原花狼を刺し殺した。二人の接点は。事件の背後を追う雑誌記者・磯田の前に、四百年間も謎に包まれて眠り続ける“太閤遺金”四億五千万両の埋蔵金伝説が…。限りない夢とロマンの黄金探し推理長編。
不倫の清算として医者と看護婦が心中した事件に不審を抱いた美人研修医が、事件の背景を調べ始めたのだが…。次々と自殺者を出す“崇りの部室”を借りてしまったOLの身に起こり出した奇妙な出来事…。ふとしのび寄る『悪魔の囁き』に弄ばれる現代社会のただれた一面と、その暗部に躍る「悪魔」を抉ぐり出す本格傑作ミステリー集。
平安末期、奥州の地に、都に劣らぬ平泉文化を築いた藤原氏が、なぜ義経をかくまったのか。そしてまた、衣川の高館に義経を襲い、その首を40日以上もかけて鎌倉へ届けたのはなぜか?特捜検事・室井と義経の謎に挑む女子大生・速水直子の到達した結論とは…。斬新な視点から日本史の謎に迫る歴史ミステリー。
それは、旅行中の女子大生の失踪事件から始まった。いまだに消えぬ太平洋戦争の深い傷あと。東南アジアと日本を結ぶ麻薬機関の陰謀。日本の政界をゆるがす恐るべき犯罪の真相をさぐるため、私立探偵の中井が現地へ飛ぶ。そこで彼が見たものは-。書き下ろし社会派サスペンス。
後世、義経として語り継がれている人物は、実はふたりいたのではないか?ひとりは源九郎義経であり、もうひとりは伊賀の国司・山本義経。ふたりは同じ源頼朝の家人として同時期に実在している。後世の史家はこのふたりの義経を混同しているのではないか?-その研究成果をめぐる嫉妬と確執が連続殺人事件の発端となる表題作ほか、五篇を収録した傑作推理集。
天下に威名をはせた武将織田信長が、腹心明智光秀に焼き討ちにされた戦国時代最大の謀叛・本能寺の変-。しかし、炎の跡にその遺体はなかった。月刊誌「歴史日本」に執筆する高校教師・岩井康彦は、担当編集者の戸木田いずみに奇妙な謎を投げかけた。“信長は本能寺を脱け出て、ある場所に生きのびたのだ”山のスパイ・伊賀の忍者や伊集院の虚無僧の密命、海の逃避行ルート、鉄砲伝来の秘史、徳川家康と島津藩の不可解な関係-。散り散りの史実の断片を綴り合わせる二人の前に現われた、四百年前の意外な「真実」とは。“周知の事実”のほころびを見逃さぬ著者が、眼光鋭く歴史の裏の裏を焙り出した、長編歴史推理小説力筆。
銀座で般若の面を付けた男の絞殺死体が発見された。被害者は能登の町役場の嘱託で、町おこしのために「鬼の棲む里」キャンペーンを促進していた民俗研究家。ちょうど、その町に取材に出かけていた旅行ライター・江本は、町の観光化をめぐる、町長派と反対派の暗闘をかいま見る。「鬼女伝説」に隠された秘密とは?書下ろしミステリー力作。
話題の洋画大作のロードショー公開を控えた映画館に、脅迫電話がかかった。公開を中止しないと爆弾を仕掛けるという。一方、脅迫とは別に配給会社の社員が殺された。そして、また1人。映画館側は警察と連携し厳戒体制をしいたが、公開の日時は刻々と迫る。映画界出身の著者が業界の裏事情を抉る、戦慄のサスペンス。
名門、東洋デパートの広報課長下村は驚くべき電話を受けた。次期社長を確実視されている専務の竹下登志成が、自宅で暴漢に襲われ無理遣り女との絡み写真を撮られたうえ、ネガと引換えに1億円要求されたというのだ。秘密命令で事件解明に乗出した下村の眼に、デパート内での熾烈の権力争いが浮びあがったが、真の狙いは別にあることに気付く…。
有楽町で、白昼堂々、三億円強奪事件発生!犯人は外人グループか?フリーライター・滝恭介は、女優の不倫の張り込み中、怪しい外人を目撃し、事件にくらいついた。背後には、国際犯罪コネクションの巨大な影が?一路、パリへ飛んだ滝の身にも魔手が迫る!サスペンスの雄が、現実の事件を素材に描く、書下ろし渾身作。
新宿発小田急線経堂行き最終電車が、ライフルを持った男にジャックされた。警察は直ちに犯人との交渉を開発した。だが、男は警官に発砲、その後は不気味な沈黙を守るだけだった。一方、唯ひとり人質にされたOL杏子は、恐怖に震えながらも、凶悪犯とは思えぬ男の優しさに、何か割り切れぬものを感じていた…(「朝の柩」)。都会の闇に、ポッカリと口を開けた落し穴に嵌った人間たちのあがきを活写する、異色作品集。