著者 : 小林泰三
漂流中の宇宙船内。2人の男が見つけたのは、孤立したコロニーだった。このままの速度では、着陸時に衝突する危険があるが、これを逃すと何千年も掛かってしまう。2人はイチかバチかの賭けに出る(「草食の楽園」)。長年、日常の雑務をこなしていたが、ついに壊れてしまい、廃棄処分されることになったロボット。若い娘は、何とかそのロボットを残そうとするが…(「さよならの儀式」)。他、9編を収録。
街いちばんの名探偵の元には、奇妙な依頼人ばかりがやって来る。熱狂的ファンの中年男に、執拗に真似をされる恐怖を語る人気アイドル。(「アイドルストーカー」)何者かに太る薬を盛られていると訴えるダイエットマニアの女。(「ダイエット」)事務所から一歩も出ないものぐさな探偵の推理とは?全編に仕掛けられた巧妙な罠と黒い笑い。奇才が放つ連作ミステリー。
本篇の再解釈に挑む山本弘、正義の化身となった女子高生の苦悩を描く小林泰三の短篇ほか、北野勇作、三津田信三、田中啓文、酉島伝法、藤崎慎吾が日本SFの象徴的イコンをリスペクトする計七作
「あなた、百舌鳥魔先生は本当に凄いのよ!」妻が始めた習い事は、前例のない芸術らしい。言葉では説明できないので、とにかく見てほしいという。翌日、家に帰ると、妻がペットの熱帯魚を刺身にしてしまっていた。だが、魚は身を削がれたまま水槽の中を泳ぎ続けていたのだ!妻が崇める異様な“芸術”は、さらに過激になり…(表題作)。他に初期の名作と名高い「兆」も収録。生と死の境界をグロテスクに描き出す極彩色の7編!
傍若無人な探偵・四里川陣に命じられて、助手の四ッ谷礼子は雪山に建つホテルへ殺人事件の調査に赴く。彼女を待ち受けていたのは、密室から消えた死体の謎だった。カードキーでロックされ、しかも衆人環視下に置かれた密室状況は、なぜつくられたのか?遊び心あふれる論理の背後に、周到に張り巡らされた伏線の数々。『大きな森の小さな密室』の著者が贈る、会心の本格ミステリ。
“不思議の国”の住人たちが、殺されていく。どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない。10万部突破『大きな森の小さな密室』の鬼才が放つ現実と悪夢を往還する“アリス”の奇怪な冒険譚。
核シェルターにひとり篭った男の胴体が捻り切られていた怪事、柩の中で数十カ所刺されて発見された男…。あまりにも完璧すぎる密室殺人は、本当に実行可能か!?「不可能犯罪など存在しない」と豪語する“超限探偵Σ”の華麗なる活躍を描く「見晴らしのいい密室」ほか、電子仕掛けの謎を秘めた本格ミステリ「探偵助手」などこれまで誰も見たことも聞いたこともない、精緻で巧妙な論理遊戯が導き出す唖然呆然の結末7篇。
謎の組織MESSIAHのもと生み出された超人クローンたちとの死闘を続けるヴォルフ。闘いに巻き込まれてしまった女子大生、ひとみと共に死線をかいくぐり、ついに組織の研究所へと潜入する。だが、そこには新たな実験計画で作り出された強敵の姿が…!明されるヴォルフの過去、そして因縁の“あの男”との対決。ヴォルフは遺伝子の呪縛を乗り越え、真の英雄となれるのか!?未曾有のダーク・オペラシリーズ、堂々完結。
歴史上の偉人たちの遺伝子から生み出された、究極の“超人”たち。彼らは少年少女の姿に恐るべき力と残虐性を秘め、謎の組織MESSIAHのもと暗躍を続けていた。偶然彼らの秘密を知った女子大生ひとみは、友人のジーンと共に彼らに狙われることに。一方“人類の敵”と呼ばれる男のクローンでありながら、敢然と組織に敵対する青年ヴォルフは、ひとみを守ろうと血みどろの死闘を繰り広げるが…!?未曾有のダーク・オペラ、第2弾。
科学とは無縁の世界で育った青年はある日、月世界を目指して天空へと伸びる「天橋立」に向かう。そこで待っていたものは、とびきり可愛い謎の少女だったー無垢な青年が抱く、宇宙への憧れとみずみずしい初恋を描いた表題作のほか、ロボット三原則の盲点が引き起こす悲劇を描いた「灰色の車輪」、宇宙論とクトゥルフ神話が驚愕の融合を果たす「時空争奪」など、ヴァラエティに富んだ全8篇収録の傑作ハードSF短篇集。
女子大生のひとみは、留学生のジーンと共に古都の寺院を訪れていた。そこに西洋風の同じ顔を持つ者たちが突如出現し、建造物を破壊し始め、ひとみ達にも襲いかかる。二人の窮地に現れたのはヴォルフという謎の男。ヴォルフは単騎、その集団に戦いを挑むが…。寺院を破壊する謎の集団の目的は?そして“一桁”と呼ばれるヴォルフの正体とは!?人類の存亡を賭けた未曾有のダーク・オペラシリーズ、ここに開幕。
彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物語を持っているという。彷徨い人はこの怪しげな「臓物の物語」をきこうとするが…。グロテスクな序章を幕開けに、ホラー短編の名手が、恐怖と混沌の髄を、あらゆる部位から描いた、9つの暗黒物語。
犯罪抑止のために開発された「人工脳髄」。健全な脳内環境を整えられることが証明され、いつしかそれは一般市民にも普及していった。両親、友達、周囲が「人工脳髄」を装着していく中で自由意志にこだわり、装着を拒んできた少年に待ち受ける運命とは?人間に潜む深層を鋭く抉った表題作他、日常から宇宙までを舞台に、ホラー短編の名手が紡ぐ怪異と論理の競演。
「あの年の夏祭りの夜、浜から来た少年カムロミと恋に落ちたわたしは、1年後の再会という儚い約束を交わしました。なぜなら浜の1年は、こちらの100年にあたるのですから」-場所によって時間の進行が異なる世界での哀しくも奇妙な恋を描いた表題作、円筒形世界における少年の成長物語「時計の中のレンズ」など、冷徹な論理と奔放な想像力が生みだす驚愕の異世界七景。日本ホラー小説大賞受賞作家による初のSF短篇集。