著者 : 小椋真理子
フォーレラは英国侯爵の父ピーターとハンガリー貴族の令嬢を母に、親子で世界各地を旅していた。しかし、近年相ついで両親を亡くす。後見人の伯父、クレイドン伯爵は姪をイギリスに呼び戻す手はずを整えた。が、ロンドンでは冷たい態度の夫人がフォーレラを厄介払いしたがっていた。その指示に従って、仕方なく社交界デビューの準備を続けるしかない。まもなく、社交界屈指の接待会でハンガリー王子の所有する城へ叔父夫婦と共にフォーレラも出席することになったが…。
社交界の人気者、ウォーレン・ウッドはマグノリアと出会い、秘かに婚約する。だが、金持ちとの結婚を狙う彼女はウッドの甥に鞍がえをしてしまう。絶望に駆られた彼を見かねた友人は過酷なアフリカ旅行へ連れだした。一年後、身心とも逞しくなったウッドがパリに戻ると、落馬事故で死んだ甥に代わり、爵位継承者になっていた。その夜、セーヌ河畔を散策中自殺願望をもつナディアという娘を救う。まもなくバックウッド侯爵となった彼に再びマグノリアが標的を定める。執拗な彼女から逃れるため、ウッドはナディアを婚約者にしたてたが…。
公爵のビクター・ブルック卿はビクトリア女王を教母と仰ぎ、側近として、その寵愛も深かった。だが、宮廷の女官との戯れの恋が発覚し、女王を怒らせてしまう。そして懲らしめのためか、社交シーズン中に、ある使命が下された。政略結婚によって、小国ザラリスに嫁ぐシデラ女王の付き添い役である。英国軍艦に乗り込んだビクター卿は王女に対面し、その美貌と聡明さに驚いた。船旅は、予想外に楽しい日々となり、一路、ザラリスに向かっていくが…。
サビーニュ公爵は青春時代に受けた心の傷がもとで人間不信に陥り、今はパリで放蕩生活を送っている。母の公爵未亡人は独り息子の行末と公爵家の存亡を心配し、従兄のロシュシャン枢機卿に相談する。二人は公爵を結婚させようと企て枢機卿は花嫁探しに近接の城を訪ね回った。
25年前-。ソーマック公爵と婚約していたカニーダの母は、イギリスの伯爵家の次男ジェラルドと出会い、結婚式の前夜に駈け落ちをした。以来、二人はソーマック公爵から様々ないやがらせを受けながらも、イギリスで暮らし、不遇のうちに死んだ。公爵に憎しみを抱いて育ったカニーダは、先代の公爵に代わって息子の現公爵に復讐するためロワール河畔へと向かう。サーカス芸人になりすまし、愛馬にまたがって華々しく公爵の前に登場した。
フェリーサ・ダールがまだ13歳のとき、ダーリントン公爵は、虐待されている彼女を残酷な父親から救った。公爵は、彼女を連れ帰り、フランスの修道院へ預けた。それから5年-。70万ポンドの遺産を相続したフェリーサのもとに、財産めあての不審な男たちが、頻繁に訪れているという。公爵は、彼女をイギリスにつれ戻すために、パリに向かった。5年ぶりに会うフェリーサは、美しい女性に成長していた。しかし、子供時代に受けた心の傷は、今も癒えていない。-美しいフェリーサは男が怖いのだ。だが、どうすれば彼女の心を開くことができるのだろう?公爵は、茫然とした目で、フェリーサを見つめた。
両親をトルコ大地震で亡くしたアスターラは父の親友であり、大富豪でもあるロードリック卿のもとに身を寄せた。この上なく美しく成人したある日、アスターラはヨーハン・ファン・アーヘンの描いた『パリスの審判』という絵を買った。その絵を見て、ロードリック卿は名案を思いつく。アスターラに3人の甥から夫を選ばせ彼の莫大な財産を譲ろうというのだ。しかし、ヘラやアテナがパリスに誘いかけたように、2人の甥は心をそそるようなえさを持ち出し彼女をつろうとするのだが、3番目の甥は黄金のリンゴをほしがろうともしないのだ…。