著者 : 岡田葉子
メリーランド州の田舎町で、宅地開発中に新石器時代の人骨と集落の跡が見つかった。この貴重な発見の発掘プロジェクト・リーダーとして、考古学者のコーリーが呼び寄せられる。彼女は張り切って仕事に取りかかるものの、共同リーダーとして人類学者のジェイクも参加すると聞いて眉をひそめた。彼は元夫で、気まずく別れたばかりだ。一方、発掘のニュースをテレビで観て仰天する女性がいた。画面に映るコーリーこそ、赤ん坊のときに誘拐された自分の娘に違いない。それは揺るぎない母親の確信だった。
見知らぬ女性から、あなたは誘拐されたわたしの娘だと言われたコーリーは、自分が実は養子だったことを知る。かつては夫婦であり、いままた男と女として向き合うコーリーとジェイクは、協力してこの件の調査を始めるが、どうやら養子斡旋にからんで子供が闇取引されていた可能性が出てきた。そして時を同じくして、二人の周囲には不穏な事態が相次いで発生、ついには殺人事件すら起こる。発掘への嫌がらせなのか、それとも…。ロマンス、サスペンスそして家族の情愛を鮮やかに描いた長編。
鋼の意志と実力で、67歳の現在までハリウッドの女王の座に君臨してきた女優、イヴ。デビューから50年の時を経て、彼女は自らの半生を綴る自伝の出版を決めた。これまで私生活について堅く口を閉ざしてきたイヴのすべてが明かされることもあり、自伝の出版には世界中から大きな期待が寄せられるが、一部の業界人たちは「恥ずべき過去の秘密」が暴露されることをおそれ、怒りと苛立ちをつのらせていた。たび重なる陰湿な脅迫行為をものともせず、イヴはその驚くべき半生を語りつづけるが…。
ハリウッドの伝説的女優、イヴ・ベネディクトの公式版自伝の執筆者に選ばれた作家、ジュリア。シングルマザーとして独力で一人息子を育てる彼女は、女優として、女として誇り高く生きてきたイヴに魅せられてゆく。また、日増しにエスカレートする脅迫行為に怯える彼女を支えるイヴの義理の息子、ポールにも惹かれていた。イヴとの友情、ポールとの愛情をはぐくみながら、ジュリアは着実に原稿を書き進めるーまもなくイヴから告げられる衝撃の事実に、激しく動揺することになるとも知らずに。
パトリック・チャンスはロンドンの証券会社に勤める営業マン。新しい屋敷は手に入れたし、美しい妻とのあいだに生まれた娘は可愛くてたまらないし、人生は順風満帆…なのではあるが、ここにちょっぴり頭の痛いことがある。営業成績があと一歩で目標額に達しないのだ。この目標さえ達成すれば、10万ポンドという超破格の特別手当てが獲得できるというのに-そこでパトリックが強引に計画したのが、週末のテニス・パーティだった。屋敷に友人たちを招いて優雅にテニスを楽しみつつ、手練手管の限りをつくして金融ファンドを売りつけようというわけだ。かくして、社会階級も金銭感覚も人生の目的もまったく違う四組の男女が、ひとつ屋根の下に集まった。思わぬ危機に青ざめている資産家夫婦、貧窮生活に苦しむ学者とその妻、厚顔不遜な実業家とその娘。しかもそこに思わぬ闖入者まで加わって…いかにも英国的な棘のあるイジワルが炸裂する、ブラックな笑いに満ちた悲劇喜劇。