著者 : 岩城けい
あなたを知ることは、あなたという人を選んだわたしを知ること。 多民族国家の生きた声を掬う在豪作家が贈る、力強くみずみずしい《越境青春小説》。 父の転勤にともない12歳でオーストラリアに移住し、現地の大学生となった安藤真人。憧れていたはずの演劇の道ではなく就職を選ぼうとしていたところ、デザイン科でマリオネットを制作しているアビーと出会い、人形劇の世界に誘われる。日本人としてのアイデンティティの問題に苦しんできた真人のように、「同じアルメニア人と結婚を」と刷り込まれてきたアビーもまた、出自について葛藤を抱えていた。互いを知りたい、相手に触れたい。しかし、境遇が似通うからこそ、抱える背景の微妙な差が、猛烈な「分かりあえなさ」を生み……。 話題の既刊『Masato』『Matt』につらなる、「アンドウマサト三部作」最終章! 【著者略歴】 岩城けい(いわき・けい) 1971年大阪府生まれ。大学卒業後、オーストラリアに渡り就職。2013年に『さようなら、オレンジ』で太宰治賞を受賞しデビュー。14年に同作で大江健三郎賞、17年に『Masato』で坪田譲治文学賞を受賞。他の著書に『ジャパン・トリップ』『Matt』『サンクチュアリ』『サウンド・ポスト』がある。
日本から移住してはや5年。父と二人、オーストラリアに暮らす安藤真人は、現地の名門校、ワトソン・カレッジの10年生(16歳)になった。 Matt(マット・A)として学校に馴染み、演劇に打ち込み、言語の壁も異文化での混乱も、乗り越えられるように思えた。そこに、同じMattを名乗る転校生、マシュー・ウッドフォード(マット・W)がやってくる。 転校生のマット・Wは、ことあるごとに真人を挑発し、憎しみをぶつけてくる。 「人殺し! おれのじいさん、ジャップに人生台無しにされたんだ! 」。 第二次世界大戦、日本とオーストラリアの、負の歴史。 目をそむけてはならない事実に、真人ーーマット・A--は、自らの“アイデンティティ"と向き合う。 【著者略歴】 岩城けい(いわき・けい) 大阪府生まれ。2013年『さようなら、オレンジ』で第29回太宰治賞を受賞しデビュー。14年、同作で第8回大江健三郎賞を受賞。15年に刊行した『Masato』で17年、第32回坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『ジャパン・トリップ』がある。
親の都合でオーストラリアに渡った小学生の真人。異文化の中でのいじめや衝突に苦しみながらも、やがて自分の居場所を見つけ出していく……。少年と家族の物語。坪田譲治文学賞受賞。(解説/金原瑞人)
オーストラリアから日本でのホームステイに参加したショーン。ステイ先の家族はとっても親切で幸せをかみしめていたショーンだけど、心に秘めた日本来訪の“本当の目的”を達成するために大事件を起こしてしまう!
オーストラリアに流れてきたアフリカ難民サリマは、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。人間としての尊厳と“言葉”を取り戻し異郷で逞しく生きる主人公の姿を描いて、大きな感動をよんだ話題作。第8回大江健三郎賞、第29回太宰治賞受賞。
親の都合でオーストラリアに引越し、現地の小学校に通うことになった真人。言語の壁を乗り越え逞しく成長するが──。『さようなら、オレンジ』から2年。注目を集める新人作家の、新作長編!