著者 : 岩室忍
天下布武を目指す織田信長は、積年の宿敵石山本願寺を制圧するため、兵糧攻めを続けていた。陸からの物資は押さえたものの、海路が止められない。業を煮やした信長は、本願寺を支援する毛利の補給船を全滅させるよう、伊勢志摩の九鬼水軍に厳命する。ところが天正四年(一五七六)、木津川沖で九鬼水軍は、毛利軍擁する村上海賊に惨敗。陶器に火薬を詰めた焙烙玉によって焼き尽くされたのだ。この大敗から信長は、船が木造だから燃えると思い至る。ならばと、九鬼嘉隆と滝川一益に鉄甲船の建造を命じ、捲土重来の時を待つー。織田信長と九鬼水軍の仰天の知恵と活躍を描く、未曾有の歴史時代小説。
名門土岐源氏の血を引継ぎ、明智家の養嗣子となった十兵衛光秀。神童の誉れ高い少年は、美濃の碩学・快川紹喜に見出され、師弟となる。快川は織田信長の師である沢彦宗恩とともに、臨済宗妙心寺派の最高位をつとめ、兄弟弟子でもあった。光秀は乱世の有力武将に兵法治世を学ぶため、諸国遊行に励む。しかし、その心の裡には奸雄をも喰らう狼が棲んでいた。
武家の頂点に立った織田信長と、朝廷との確執は深まるばかりだった。双方から信頼の厚い明智光秀は懊悩の日々を過ごす。甲州征伐の折、信長は快川紹喜を焼き殺すという暴挙に出た。これは、武田信玄が臨済宗の碩学・希菴玄密を殺した行為と重なり、信長の終焉が噂され始めた。そんな中、信長は本能寺に向かう。快川を奪われた光秀は、心の裡に狼の覚醒を感じー。
武田信玄、上杉謙信など有力武将の相次ぐ死去により、信長の天下統一を妨げる武将はいなくなる。しかし、正親町天皇は、官位官職は与えても決して征夷大将軍は与えなかった。師沢彦宗恩は、信長と朝廷との底なしの溝に絶望する。そんな折、信長は甲州征伐を断行、あろうことか残党を匿った快川紹喜を寺もろとも焼き殺してしまう。新たな遺恨は…。衝撃の書、完結!
今川義元を破った織田信長の名は、瞬く間に全国に知れ渡った。一方、師沢彦宗恩は天下統一の妨げとなる戦国大名を見極めるため、武田信玄、上杉謙信など諸国の有力武将の許を訪ね続ける。そんな折、足利義昭の将軍擁立の大義名分を得た信長に、遂に上洛の機会が訪れる。朝廷、義昭との微妙な均衡の上に支配力を強めたい信長だが、朝廷の真意は籔の中で…。
十三歳になった吉法師は元服した。師沢彦宗恩は長寿で天下を手にするという意味を込め、織田三郎信長と名付ける。さらに、美濃の蝮斎藤利政の娘帰蝶を信長の正室に迎え、着々と尾張統一の足場を固めていく。一方、信長は初めて手にした鉄砲に夢中になり、一万人を擁する鉄砲隊設立の準備を極秘裡に始める。そんな中、今川義元の軍師、太原崇孚雪斎死去の噂が…。驚愕の歴史大河第二弾。
美濃の僧沢彦宗恩は那古野城の平手政秀の招きで尾張を訪ねた。政秀は織田弾正忠家三代に仕える家老で、当主信秀の子吉法師の傅役でもある。吉法師は神童との声もあったが癇癖が強すぎたため、沢彦に師を懇願したのだ。彼の聡明さに触れた沢彦は依頼を受ける。だが、沢彦は臨済宗妙心寺派の最高位をつとめた美濃の宝である。乱世の最中、様々な嫌疑をかけられ…。