著者 : 岩松了
五番寺の滝五番寺の滝
私は、何故あの男を殺さねばならなかったのか?そのことをいくら自問してみても何か核心にたどりつかない疲労が私をとらえる。「殺人の原因は自分の中にある」その言葉が、正当という旗をかざしながら、私を追ってくる…私はなんとかしてそこから逃げなければならない。断じて私の中には原因はない。たんに携帯電話の声が大きすぎたから、あの男は殺されたのだ。ここで描かれる殺人事件は、私たちが置かれている現実世界の悪夢そのものだ。
恋のためらい恋のためらい
菊地昭夫は、自分の軽はずみな発言が招いた不本意な人事を機にある日突然会社をやめた。とくに考えがあったわけではない。するとそこに、お見合いをして断られたはずの女性から、自分の店を手伝ってほしいとの話がもちあがり、昭夫はアンティークショップの店員となる。その上、大恋愛の末に自分を捨てて他の男と結婚したはずの女性がマンションの隣に引っ越してきた。さらには携帯電話を拾ったことがきっかけとなり新しい恋がめばえそうな予感も…。人は人であるかぎり、いくつになっても恋をする…恋をすれば、傷つけられたり、傷ついたりすことも…それでもやっぱり人は誰かを好きにならずにはいられない-。不器用でユーモラス、ちょっぴり切ない究極の大人のラブストーリー。
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