著者 : 岸恵子
風が見ていた(上巻)風が見ていた(上巻)
「あたし、怖いことが好きですわ」。そう微笑んで衣子はパリに旅立った。『美女と野獣』のラストシーンを瞼の裏に。機上から見る空のバラ色こそが明日の色だ、と信じるほどに無邪気なままー。文明開化の頃、横浜から単身渡仏した祖父・辰吉。家族の沸き立つ血脈が、彼女を人生の輪舞に駆り立てる。やがて訪れる激しい恋と、自らを翻弄する宿命の存在を、19歳の衣子はまだ知らない。
風が見ていた(下巻)風が見ていた(下巻)
「Quelle beaut´e(何たる美だ)」。ロイックは妻の神秘と官能について思う。衣子は、夫の人生に影を落とす民族の歴史を知りたいと思う。差別や戦争の不条理を描こうと、彼女はドキュメンタリー映画の制作の道を選ぶ。パリ五月革命、プラハの春ー市民と国家体制が火花を散らす1968年の暮、衣子を待っていたのは生涯癒されない喪失だった。そして、15年が過ぎ…。著者渾身の自伝的小説。
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