著者 : 川村ともみ
人気舞台女優として活躍するリリーは、雇い主に頼み込み、火事で焼け落ちた劇場跡に住まわせてもらっていた。ある日、リリーは庭園で庭師のアポロと出逢う。声を失っている彼は、ある事情から名前も身分も隠しながら、かつて自分が手がけた大切な庭園の再建に努めていた。リリーはアポロと筆談で交流を重ねるうちに、彼の庭園に対する真摯な想いや、純粋な瞳とやさしさに惹かれていく。ところが、やがてアポロが声を取り戻したころ、追手から逃れるため彼は突如姿を消してしまった。その一件で、実はアポロが貴族であることを知り、驚くリリー。2週間後、パーティーで偶然に再会したふたりは…。大好評“メイデン通り”シリーズ第7弾!RTブックレビュー“ヒストリカルK.I.S.S.(白馬の王子様)ヒーロー賞”受賞作。
アーティミスは貴族の娘でありながら両親も財産もなくし、親戚で大富豪の伯爵のもとに身を寄せて、従妹のコンパニオンを務めている。ある日、従妹とアーティミスは、ロンドンの貧民街セントジャイルズでならず者に襲われそうになったところを、“セントジャイルズの亡霊”と呼ばれる謎の男に助けられた。去り際に彼が落としていった印賞付きの指輪を、アーティミスはひそかに保管する。男の正体は、ウェークフィールド公爵マキシマス。彼は爵位を守るために、伯爵令嬢との結婚を考えていたが、自分が落とした指輪を令嬢のコンパニオンであるアーティミスが持っていることを知る。そして、アーティミスと言葉を交わすうちに、マキシマスは聡明で凛とした彼女に心惹かれていく。その後、マキシマスが私邸で開いたパーティーで、二人の関係は急接近し…。
侯爵令嬢メグスはロンドンの貧民街セントジャイルズで婚約者を殺され、スキャンダルを避けるためゴドリックと便宜結婚をする。形だけの夫婦となった二人は、顔を合わせることもせず、メグスは夫の田舎の領地でひっそり暮らしていた。あれから二年ーメグスは婚約者の命を奪った“セントジャイルズの亡霊”の正体を暴き、仇を討つために、ロンドンに住むゴドリックの屋敷を訪れた。ゴドリックは、病気がちだった前妻を亡くしてから固く心を閉ざし続けていた。しかし、明るくはつらつとした妻メグスと接するうちに、哀しい過去を乗り越えようとしている自分に気づく。もう二度と誰かを愛することなどないと思っていたのに、彼はメグスを心からいとおしく感じはじめていた。ゴドリックは彼女をまもるために全身全霊を捧げることを誓う。なぜなら彼は…。「メイデン通り」シリーズ第5弾!
街に夜ごと現れる、謎に包まれた“セントジャイルズの亡霊”。ある晩、馬車を走らせていた貴婦人イザベルは、けがを負った“亡霊”を見つけて屋敷に連れ帰る。夜明けを待たずに姿を消した正体不明の男性に、イザベルはどこか不思議な魅力を感じた。その数日後、彼女を含む貴婦人たちが支援する孤児院の経営者で、庶民男性の心優しいウィンターを社交界入りさせるため、イザベルが指南役となる。会話やダンスの手ほどきを重ねるうちに、互いの孤独な心に気づき惹かれていく二人。しかしウィンターは、身分が高く美しいイザベルを前に自分の気持ちを押し殺していた。しかも彼には、誰にも言えない秘密があったー。レッスンの成果を試すため、二人でオペラハウスに出かけた夜、“亡霊”が現れたという噂を聞きつけたイザベルが思わずその姿を追いかけると…。
悪名高き盗賊王ミッキー・オコーナーの豪奢な屋敷を訪ねた、若く美しい未亡人サイレンス。彼女が慈しむ養女メアリーが、孤児院からミッキーによって誘拐されたのだ。養女を取り戻すため、勇気をふりしぼって盗賊王に直談判したところ、メアリーは彼の実の娘であること、そしてその娘の命が何者かに狙われていると打ち明けられた。メアリーが心配なあまり、サイレンスは彼の屋敷が付き添うことに。ミッキーの傲慢で不遜な態度に反発する毎日だったが、ある日、美しい声で娘に子守歌を聴かせる彼の姿があった。盗賊王の優しく繊細な心を知り、一人の男性として次第に惹かれていくサイレンス。彼もまた、悲しい自分の過去に耳を傾け、涙を流してくれる慈愛に満ちたサイレンスに激しい熱情を募らせていた。ある晩二人は華やかなオペラハウスへと出かける。二人きりの席で甘いひとときを過ごすも、屋敷へ帰ることそこには…。