著者 : 幹遙子
悪しき記憶を切除する技術をもつ異星の訪問者により、人類は生まれ変わった。表題作ほか、アジアの工場で過酷な労働に従事する少女の不思議な体験を描いた「ランニング・シューズ」など20篇を収録、現代SFのトップランナーによる日本オリジナル短篇集第3弾
近未来英国、フリーカメラマンのティボー・タラントは、トルコのアナトリアで反政府主義者の襲撃により最愛の妻メラニーを失ってしまう。住まいであるロンドンに帰るため、海外救援局に護送されるタラントだったが、道中悪夢のごとき不確実な事象が頻発する。彼の現実は次第に歪みはじめ、さまざまな時代を生きる違う男の人生に侵食されていく。第一次世界大戦中、秘密任務を負うことになった手品師、女性パイロットに恋するイギリス空軍の整備兵、夢幻諸島で名をあげんとする奇術師…。語り/騙りの名手プリーストがこれまでの自作のモチーフを美しいパッチワークのごとくつなぎあわせ、めくるめく世界を生み出した集大成的作品。
不治の病を宣告された母が愛する娘のために選び取った行動をつづる表題作、明治時代の満州にやってきた熊狩り探検隊一行の思いがけない運命を描いた「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」など、あたたかな幻想と鋭い知性の交錯を透徹した眼差しで描いた16篇を収録した、待望の第二短篇集。 〈収録作品〉烏蘇里羆/草を結びて環を銜えん/重荷は常に汝とともに/母の記憶に/存在/シミュラクラ/レギュラー/ループのなかで/状態変化/パーフェクト・マッチ/カサンドラ/残されし者/上級読者のための比較認知科学絵本/訴訟師と猿の王/万味調和/
作家だった父が亡くなった。遺品整理のため訪れた部屋では、掛け時計や茶漉し、冷蔵庫の扉など、あらゆるものにメモが貼られていた。そして膨大な蔵書の数々にも、教訓めいた警句や皮肉、回想などが書きこまれている。いったい父は何を意図したのか、そして彼が遺したものはなんなのか?時間の不可逆性について考えさせるネビュラ賞受賞の表題作はじめ、会社での成功のため昆虫の遺伝子を組み込んだビジネスウーマンを描く「中間管理職への出世戦略」、現実とネットワークが半同一化した社会を女の子が冒険する「コンピュータ・フレンドリー」(いずれもヒューゴー賞ノミネート)など、SFにとどまらずファンタジイ、ホラー、政治小説など多彩なジャンルの12の物語を収録し、著者ならではの奇妙でどこか優しく、周縁的な視点を示した短篇集。
巨大都市の片隅にひっそりとたたずむ街ーデッドタウン。昼は浮浪者や麻薬常習者がたむろする汚れた街にすぎないが、その名前の本当の由来は別にあった。夜になるとそこは、怖るべき吸血鬼の支配する文字どおり「死の街」と化すのだ。だがこの街に一人のよそ者がやってきたとき、すべてが変わった…吸血鬼にとっては最悪のものに。美貌の吸血鬼ハンターが、強大な闇の勢力に対し敢然と闘いを挑む傑作痛快冒険ホラー。
超能力を科学的に検証し、“ペガサスを乗りこなす”ように上手に操ろうという理念のもと、超心理学センターが設立された。人類の宇宙進出とあいまって超能力はますます重要になり、所長リューサは超能力者の人権保護に忙殺されている。そんな彼女の睡眠中に心に“侵入”してくるものがいた。強力なテレパスである彼女の心のシールドを破るとは、どんな能力者なのか…。超能力者の活躍を描く『ペガサスに乗る』姉妹篇。
特殊な能力をもつゆえに、ともすれば恐れられ敬遠される超能力者たち。でも“ペガサスを乗りこなす”ようにその能力を使いこなせば、みんなの役にたてるはず。超能力者の活動を組織化し、存在価値を社会に認めてもらおうと、自らも予知能力をもつヘンリー・ダロウは愛妻モリーと力を合わせ超心理学センターを設立するが…悩みながらも成長していく超能力者たちの姿を、人気性同作家マキャフリイがはつらつと描く力作。
原因不明の疫病がはやり、療法師ノ長の命により、パーン全土に検疫体制が敷かれた。フォート城砦ノ太守の娘ネリルカは、ルアサの市に行った母と妹たちを、この疫病で失ってしまった。すぐに後妻を娶った彼女の父トロカンプ太守は、病人を収容所に押しこめ、ろくな援助も与えない。ネリルカはそんな父親に反発し、看護の腕をいかして自分の人生を切り開いていこうと考えるのだった…。『竜の貴婦人』のサイド・ストーリイ。
空に糸胞があるかぎり、竜騎士は飛んで、糸胞を殱滅しなければならないー。しかし、惑星パーンの安寧をあずかる竜騎士のあいだにすら疫病は蔓延してしまった。療法師ノ長キャピアムが苦心のすえ開発したワクチンも、パーンのあらゆる地点へ瞬時にして運び、人びとに集団接種しなければ効果がない。フォート大巖洞の洞母にして女王竜オルリスの騎士モレタはこのワクチン配付のため、危険きわまる時ノ跳躍に挑むのだった。