著者 : 庵原高子
「姉の二の舞いを演じるな!」早生まれで体の弱かった姉と同じ轍を踏まないように、と案じた母のひと言で幼稚園を留年した主人公・須江子。すべてがそこから始まった。やがて訪れた戦争、疎開、そして別れ……全てが大局と地続きになっていた、小さな子供の心と体の動きを、克明にユーモラスに描いた秀作。
あのとき吹いた青あらしは、海台風のように激しかった! 昭和、平成、令和の時代を市井で生き抜いた作家が自らの生涯を振り返り、失ったもの、得たものを凝視しながら、海の香り漂う豊かな作品世界に昇華させた、著者最後の長編小説!
家父長制のもと戦争の波に流され、戦後を生き抜いてきた“女ともだち(シスターフッド)”の人生の終焉(自殺)を、ヴァージニア・ウルフに重ねて描いた表題作ほか、長年連れ添った夫婦のかたちを静謐な筆致で描いた短篇群に、随筆を加えるーー円熟味の増した著者が達した新境地!
明治生まれの元祖ラガーマン・倉山伊左男は、家業である日本橋の麻袋問屋を継いで、やり手のビジネスマンとして中国東北部などに出張を繰り返していた。 時は大東亜戦争の最中。現地で日本軍・731部隊を知った伊佐男は、そのあまりに非人道的な存在にショックを受け、脳溢血で倒れてしまう。 駆けつけた妻や部下に助けられて帰国、そこから倉山家にとっての真の戦後が始まった……著者の親族の実体験に材をとり、戦争の悲惨と真のスポーツマンシップの有りよう、また戦後を生き抜いた「ある家族の肖像」を描いた自伝的長編大河小説 第一章 隅田川のほとりから 第二章 皇太子誕生、さらに誕生 第三章 好景気とともに 第四章 大連山縣通り 第五章 大東亞戰争 第六章 惜別 第七章 新社長として 第八章 スンガリーのほとり 第九章 ああ 我が社のマータイ 第十章 鴨緑江を越えて 第十一章 最後の連絡船 第十二章 鎌倉長谷の家 第十三章 敗戦 その八月 第十四章 冬の別れ 第十五章 和田塚の家 第十六章 芸術のため、とは 第十七章 日暮しの声遠く 第十八章 東京オリンピック 家系図と登場人物 あとがき 参考文献
若き日に日露戦争に出征して命からがら生還した五吉は、東京麹町に羅紗問屋を開く。そして関東大震災と太平洋戦争を生き抜き、戦後の繁栄を築くーー自らの父親をモデルにひとりの商人の生涯を描いた著者畢生の長編大河小説。 序 章 日露戦争 第一章 美ナラズト雖モ醜ナラズ 第二章 関東大震災発生 第三章 ミシン命 第四章 その年末 妻の手術 第五章 普通選拳運動 第六章 竈の下の灰までも 第七章 新しい家、昭和の時代 第八章 投票所、教会 第九章 シェレル神父 第十章 虫が這うように 第十一章 さらに大きな虫 第十二章 五・一五事件 第十三章 二・二六事件 第十四章 切支丹屋敷跡 第十五章 国民服令 第十六章 商人五吉 水のない池を見る 第十七章 大東亞戰爭 第十八章 銃後の家族たち 第十九章 村立国民学校 第二十章 敗戰 第二十一章 戦後その一 第二十二章 戦後その二 第二十三章 市川市の家 第二十四章 漢詩を詠む 終 章 鎌倉カーニバル あとがき 参考文献
昭和34年、「降誕祭の手紙」で芥川賞候補になったとき、同期候補には吉村昭氏や金達寿氏、そして山川方夫氏がいた。その山川氏に師事し、三田文学に「地上の草」を連載していた日々……その頃から半世紀以上、戦後の激動期を家庭人として過ごしながらも、ふつふつと漲る文学への思いを絶やさずに生き続けた人生ーー代表作二作を全面的に改稿し、なおかつ近作の短編からよりすぐった4篇と、山川方夫氏の思い出を綴った1篇を収める、著者畢生の自選作品集 【目次】 第一部 降誕祭の手紙 眼鏡 地上の草 第二部 源平小菊 海抜五・五メートル 夏の星 かきつばた 日々の光ーー山川方夫 自筆年譜 あとがき