著者 : 徳岡正肇
海外の怪奇幻想小説から、傑作を選りすぐり、一流の翻訳で、ホラー愛好者に贈るナイトランド叢書。 第5期第1回配本! アメリカン・ホラーの巨匠、マンリー・ウェイド・ウェルマンが贈る幻の連作、遂に邦訳! 魔人、ヴードゥーの精霊、異形の存在〈ショノキン〉…… 得体の知れない魔物に、論理と魔術と肉体の力で挑む ハードボイルド探偵、登場! 人ならざるものの恐怖に向き合う 珠玉の8編! ================= 暗い部屋が泳いだ──文字通りに。 サンストーンの頭の上のどこかから、生あたたかい水しぶきが降ってきた。 透過性のある、蛇の群れを思わせるものが現れた。 身を守るため、サンストーンは本能的に両手を挙げた。 右手にはパイプがあり、パイプはまだ煙をあげていた。 水は火を制す!──しかし、本当の水ではなく、水の感触だけだった。 そこにサンストーンの付け入る隙があった。 〈ショノキン〉の魔術から抜け出す隙だ。 捻じくれ、のたうつ触手が迫る中、サンストーンはパイプを咥え、煙を吹かした。 部屋が祓われた。 何事もなかったかのようになった。 サンストーンはパイプから灰を落とし、煙草を詰めてから、火を点けた。 ================= 「いいや、まだ先がある」ノービエは反論すると、読み進めた。 「ここを見てほしい。第六節が始まるところを。 『ここにひとりの人があって、神からつかわされていた。 その名をヨハネ(John)と言った……』」 ジョン(John)・サンストーンは手を伸ばすと、聖書を閉じた。 「私はずっと、自分の名に恥じぬように努めてきた」 彼の言葉は優しかった。 「いつか、この志を果たせるかもしれない。多少なりとも、ね」 ================= ーーーーーーーーー ◎目次 「ヴードゥーの踊り子イリュリア」 「ジョン・サンストーンが遺贈されたもの」 「死人の手」 「魔人ロウリー・ソーンふたたび」 「〈ショノキン〉ども」 「きわめつけの困難」 「〈ショノキン〉の街」 「ダ・ヴィンチの円盾」 コラム=〈ショノキン〉とジョン・サンストーン/渡辺健一郎 解説=ハードボイルド心霊探偵ジョン・サンストーン、ここに見参!/岡和田晃 ーーーーーーーーー 「ヴードゥーの踊り子イリュリア」 「ジョン・サンストーンが遺贈されたもの」 「死人の手」 「魔人ロウリー・ソーンふたたび」 「〈ショノキン〉ども」 「きわめつけの困難」 「〈ショノキン〉の街」 「ダ・ヴィンチの円盾」 コラム=〈ショノキン〉とジョン・サンストーン/渡辺健一郎 解説=ハードボイルド心霊探偵ジョン・サンストーン、ここに見参!/岡和田晃