著者 : 徳永真一郎
豊臣家の安寧のため、己の胸に秘めたる想いのためー。秀吉から“絶大な信頼”を寄せられ、若年より豊臣政権で辣腕をふるった石田三成。大恩ある秀吉の死後、あらゆる権謀術数を尽くして天下を奪わんとする家康の野望を打ち砕けるのは、もはやこの男しかいなかった。天下分け目の決戦をしかけ、西軍を率いて運命の関ヶ原へと突き進んだ義将の魅力とその生涯を描いた“決定版的”長編小説。
未通女に魔性、女郎に真心、妬心剥ぐれば夜叉が出る。愛しさ憎さは背と腹で、邪恋のはての無理心中。汗か涙か鳴咽にむせび、躍る白磁の脛の影。色の外道も胸かきむしり、貞女の胸裡に不貞あり。銭でつるんだ男と女、銭に裂かれた男と女。淫情殺せば妄執生まれ、男も女も愛欲地獄、仏の慈悲なぞ、ありがた迷惑。淵に立たなきゃ底さえ見えぬ、溺れ溺れて闇のなか…江戸の春情を鮮かに描く。
織田信長の時代、国家の政権は四人の手に握られていた。柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、そして滝川一益である。なかでも一益はひときわ武勇にすぐれ、関東の人々は滝川という名を聞いただけで恐れおののいたという。得意の鉄砲で武田軍を壊滅させ、勢いに乗る一益、しかし本能寺の変が彼の人生を狂わせ始めた…。晩年は出家の道に入り、越前で波乱の生涯を閉じた悲運の猛将の全貌。
骨肉相食む戦国の世、島津家は親子兄弟が堅固な団結力をもって、薩摩・大隅・日向、やがては九州全土の征服を目指した。20歳の初陣で大勝した義弘は、輝かしい武名を残すが、関ケ原の合戦に敗れ、家康陣の前を敵中突破、“島津の早駈け”で名を挙げた。兄義久と協力して、薩摩藩の繁栄の礎を築く。南国の猛将の生涯を通して、島津一族の絆を描いた長編力作。
1583年、豊臣秀吉は、柴田勝家との天下分け目の賎ケ岳合戦で遂に勝利をおさめた。この合戦に功績のあった福島正則、加藤清正、脇坂安治ら七人の武将は、秀吉から等しく一番槍の感状と三千石の加増を与えられた。世に言う「賎ケ岳七本槍」である。-本書では、戦国時代の終息期のエリート武将である彼ら七勇士たちが、賎ケ岳合戦以後どんな生き方を選んだのかを、種々のエピソードを交え多面的に描く。異色の歴史小説、待望の文庫化。
色白で目が大きく、「姫若子」と渾名されていた長宗我部家の若殿、元親は、初陣の日に意外にも勇敢な荒武者ぶりを発揮。やがて縦横の機略をめぐらし、周到な駆け引きによって、四国全土を掌握した。しかし、豊臣秀吉の台頭により、せっかく手に入れた三国を奪われ、もとの土佐一国にもどされる…。全国統一を夢みた男の野望に満ちた生涯を描く力作。
明治維新前後の混乱期。官軍となった薩摩・長州藩士の中には、心驕って汚職や不正を働く輩も。このため、一般民衆の生活はあまり向上せず、かえって負担が重くなり、苦しくなった。新政府の不正を暴き、理想の世を築くために、欲も野心もなく、純粋な情熱を傾けて戦った男たち。反逆者の汚名をうけ、空しく命を失った彼らの波乱に満ちた生涯を描く傑作歴史小説。
天皇親政の実現と鎌倉幕府打倒こそ、天の命ずる使命だとかたく覚悟されている後醍醐天皇は、日野資朝・日野俊基らと倒幕を密議されたが、正中元年、六波羅の知るところとなって事は破れた。豪宕にして英邁無比の帝は、危難に屈せず元弘元年、笠置山に挙兵されたが、雄図むなしく隠岐配流の身となられたのだった。人皇、九十六代、古今無類の英傑、苦難の生涯を描く書下し大作。
強大な大内、尼子、二氏の間に挟まれた弱小な毛利家当主となった二十七歳の元就。冷酷な策謀を弄して容赦なく敵を屠り、『三本の矢』のごとく三人の子らも協力して、中国地方の大半を制覇。長州藩の基礎を築く。
下剋上の世の中に、人目をも憚らず、思いのままの奢侈にふけり、数寄風流に命を賭けた京極道誉。後醍醐帝と足利尊氏の宿命的な対決を背景に、荒々しく血なまぐさい南北朝時代を描いた歴史小説の傑作。
戦国末期の激動の時代を、己の天賦の才能を駆使しながらしたたかに生き抜いた藤堂高虎。浅井長政の下で初陣を飾った後、阿閉淡路守、羽柴秀長、豊臣秀吉と次々と主君を替え、関ヶ原の戦では家康に属し、ついに伊勢・伊賀22万石の主となった。その後も豊臣恩顧の外様大名でありながら、家康から親藩以上の厚遇を受け、10万石を加増されるに至る。乱世にあって、何を信じて生きるのか?自己の生を忠実にまっとうする以外ない。“ゴマスリ大名”藤堂高虎像を真っ向から打ち破った野心作。
享保の改革を主導し、名君の誉れ高い徳川吉宗。-貨幣経済の発展に伴う幕府財政難の危機に、その辣腕を発揮し、幕藩体制の安定強化に貢献した功績は大きい。だが、一方には、時流に抗う彼の改革政治に対する批判があるのも事実である。いったい吉宗とはどのような人物だったのか?将軍の「器」とはいかなるものなのか?吉宗の生涯を克明に辿り、その素顔を描いた著者渾身の作。
父にまさる大器として家臣の信望厚く、江北の地に毅然と立つ長政は、天下人を目ざす織田信長の妹・お市を娶り、同盟を果たすが…。亮政ー久政ー長政と三代つづいた浅井家の興亡を描いた長編歴史傑作小説。
勤王か佐幕か、攘夷か開国かー。沸き返る世論と、目まぐるしく変化する時勢の流れに、敢然と立ち向かい、新しい時代を模索しながら、志なかばに斃れていった人々の激しい生きざまを描く。
秀吉、家康にも一目おかれるほどの稀代の軍師・黒田官兵衛(如水)、そして武功輝くその子長政。豊家ゆかりの大名に対する幕府の圧力をみごとにかわし、黒田藩五十二万石の礎を固めた、父子二代の活躍。
水と火のごとく相反する性格を持ちながら、固い友情に結ばれた大久保と西郷。倒幕運動を推進し、維新の大業を成すが、「征韓論」をめぐって激しく対立。歴史を大きく動かした大久保利通の足跡を描く長編傑作。