著者 : 打海文三
編集者の田中聡とライターのさとうゆうは幼なじみで、いまは東京に住んでいる。聡がファンだった小説家・小川満里花と仕事をきっかけに交流が生まれ、三人と満里花の飼い犬・イエケとの、ささやかな幸せに満ちた日々が続く。そんななか、イエケがゆうを咬んで大怪我をさせた。後日、満里花はイエケを殺した、とふたりに告げるー。一年ほど後、東京でSARSが大流行、都内は混沌とする。SARS禍の陰には一頭の犬の存在が見え隠れして…。背徳、官能、危機、恋ーすべてを内に秘めて物語は進む。作家・打海文三が遺した傑作。
福井県西端の新興港湾都市・海市。大陸の動乱を逃れて大量の難民が押し寄せ、海市は中・韓・露のマフィアが覇を競う無法地帯と化した。相次ぐ現場警官の殉職に業を煮やした市警の一部が地下組織を作り、警官殺しに報復するテロ組織が誕生した。警官の警官による警官のための自警団。彼らは「P」と呼ばれたー。第5回大薮春彦賞を受賞した、著者渾身の最高傑作。
19歳の姫子が恋した美しい青年・翼。翼を追うアーバン・リサーチの探偵・佐竹。翼の痕跡に、連続猟奇殺人事件が絡む。耳が削がれた死体は、何を語るのか?姫子を守ろうとするアーバン・リサーチの面々。翼の心の闇に踏み込む姫子…。
姫子は十三歳。登校拒否の中学二年生。首吊り自殺のために入った山奥で偶然出会った男・阪本が殺人容疑者と知ったことから、事件に巻き込まれる。というより、彼に惚れてしまったのだ。ライバルは多い。公園に全裸死体で放置された女デザイナー、六十歳で元結婚詐欺師の探偵・ウネ子、とくにお婆は好敵手。恋も事件もねじれ、もつれ、姫子にも魔手が…。絶品の語り口調。ミステリーの枠を超えた傑作。
桜の花散る春、ひどく消耗なやりとりをへて離婚したばかりの26歳の服部正幸の前に、ふたりの女姓、17歳年上の叔母茜をふくめると3人の魅力的な女性が次々にあらわれる。はしゃぎすぎてはだめよ。女性がその気になったら、あなたなんかイチコロなんだから。茜の言葉は奇しくも不吉な予言となった。正幸のベランダからの転落死。それが、連綿と続く殺人事件の、ある“春の修羅”のはじまりだった-。全編にきわだつエロティシズム、サスペンスフルでシュールな味わい。打海ミステリの新境地。
ミステリ通たちを驚喜させた傑作書下し長篇。探偵小説を超えた探偵小説。初恋の相手は殺人容疑者。死体の脇で発芽したアブラナ科の子葉は無実の鍵なのか。13歳の姫子は追う。絡むウネ子60歳。男は逃げる。恋は切ない。愛はもつれ残酷だ。