著者 : 日下圭介
部屋いっぱいのバラの花に囲まれ、華やかなドレスを身にまとい、ロッキングチェアに横たわる死体。かつて子役スターだった彼女の死の真相をバラたちは知っているのかー!?(表題作)日常生活に溶け込んでいる動物や植物が、ミステリーの謎に結びつき輝きを増す。名手・日下圭介ならではの妙味を堪能できる傑作推理短編を厳選収録。色あせない芳醇な作品世界!!
バラに囲まれたロッキングチェアの上で女優の絞殺死体が見つかった。被害者は往年の名子役だったが…。(『バラの中の死』)。マンションの上の階から赤い傘が落ちてきた。そこには遺書らしきものが留められていて…。(『炎天下の密室』)。切れ味鋭い本格ミステリー10編。
昭和5年正月。経済恐慌のさなか、目前に迫る金解禁に向けて、大阪造幣局から東京日銀へ20円金貨10万枚、5円金貨40万枚、総重量3トン半の金貨の移送が決定された。強奪計画を練るグループと、受けて立つ鉄道省の警護陣。一方で警備担当の子供を誘拐し金貨を狙う一味。様々な思惑が絡み合う中、金貨を満載したC53が東海道をひた走る。金貨の行方は。渾身の長編ミステリー。
名作『野菊の墓』に隠された謎が、殺人事件の鍵を握る。「日比野さんは殺された…」北峰瞳子と名乗る女性から東邦新聞に殺人を告発する電話が入った。社会部記者・瀬沼は事件を追う。一方、同新聞の文芸部勤務の牧田は、一通の投書に興味を持つ。『野菊の墓』には、恐るべき秘密があるというその投書にも、瞳子の名前が…。
夢の酒を造るため、集まった江崎恭平、棚橋藤子ら十四人。いよいよ最初の吟醸酒ができあがった。ところが、その酒「修羅の露」に絡んで、密室状況で二人が殺された。さらに銘酒コンテストの会場でも、衆人環視の中、大胆な殺人が…。マスコミによってスキャンダルが仕立てあげられる中、江崎たちは真相を探る。しかし、容疑者は二転、三転。その間にも、さらに殺人が…真犯人の目的はどこに?日本酒をこよなく愛している著者が、深い造詣を傾けながら情趣豊かに描いた、まさに香り高く味わい深い本格ミステリー、渾身の書下ろしで登場!
ロシア革命-激動の時代歴史の暗部に日本人がいた。広漠たるロシアの雪原を血に染めて絶望への行軍が続く。謀略に運命を踏みにじられた日本の女と男…。莫大な金塊のゆくえは?TOKUMA冒険&推理特別書下し。
漂泊の俳人山頭火を研究していた老作家が殺された。しかも、厳重に保管された遺稿の文字が消されて…。さらに、ただ一人遺稿の内容を知る女性編集者が失踪。遺稿に秘められた山頭火の謎とは何か?事件に疑問を持った女性編集者の同僚は、山頭火の足跡を追って、中国路へ向かう。文学史の謎と推理を融合した傑作。
もしも、あの時、釣りに行くのを中止しなかったら、もしも、あの時、顔見知りに会わなかったら…偶然が重なって、一人の男が死んだ。ごく平凡に見えるこの事件に微かな違和感を抱いた刑事がいた…偶然性を扱った画期的な作品「偶然かしら」の他、一幕サスペンスの「歌で死ぬ」写真トリックを使った「仰角の写真」「印画紙の場面」など、9編収録のオリジナル短編集。
犬が木に登る?何気ない子供の話に、ぼくは興味を覚えた。先日、崖から転落死した少年が飼っていた犬が登ったという楠は、ぼくがかつて思いを寄せていた真知子の家の側にある。ぼくは以前、彼女の兄が犯した殺人事件を目撃し、それ以来彼女とは疎遠になっていたのだ。木に登る犬のことで久しぶりに会った彼女は、何かを隠しているようで…。推理作家協会短篇賞を受賞した表題作ほか9篇を収録。
恋人に捨てられ、傷ついた心に芽ばえる殺意。もう戻って来ない楽しかった日々と訣別するため、女は完全犯罪を計画する。-微妙に揺れ動く女心の翳りを描く表現作「ころす・の・よ」をはじめ、暑く重苦しい夏の殺人事件と蛍を象徴的にからませた「暗い光」、スラリー仕立ての「阿美の女」、日常生活の盲点を突く「盲点のひと」など、本格推理の佳作を七編収録した最新オリジナル短編集。