著者 : 早瀬耕
AI研究者の南雲薫は、イラストレータの“リセ”として活躍する元恋人から依頼を受ける。銀行の頭取だった父親が亡くなり、私生児の彼女に遺されたのは、函館にある一軒の家。その家にあるはずの、父が描いた彼女のポートレイトを見つけてほしいのだという。現地に赴くと、そこはアトリエではなく“書庫”だった。南雲は学生の佐伯とともに絵を探し始める。綺麗に終われなかった恋の記憶と幾千の本が織りなす、切なくも驚きに満ちた傑作長編。
東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能工学研究所は、グリフォンの石像が見守る深い森の中にあり、グリフォンズ・ガーデンと呼ばれていた。やがてぼくは、存在を公表されていないバイオ・コンピュータIDA-10の中に、ひとつの世界を構築するのだが…1992年のデビュー作にして、『プラネタリウムの外側』の前日譚、大幅改稿のうえ26年ぶりに文庫化。
北海道大学工学部2年の佐伯衣理奈は、元恋人が友人の川原圭の背中を、いつも追いかけてきた。そんな圭が2カ月前、札幌駅で列車に轢かれて亡くなった。彼は同級生からの中傷に悲観して自死を選択したのか、それともホームから転落した理性を救うためだったのか。衣理奈は、有機素子コンピュータで会話プログラムを開発する南雲助教のもとを訪れ、亡くなる直前の圭との会話を再現するのだが。恋愛と世界についての連作集。
「倫理」「社会」「政治」「信仰」「芸術」5つの異なるアプローチで、人工知能(AI)が普及した未来社会を描く。SF作家の想像力とAI研究者の最新知見が斬り結ぶ、書き下ろしアンソロジー。
IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられるー「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年ー運命と犯罪と恋についての長篇第2作。
東京の大学で修士課程を終え、研究所に招かれて札幌にやってきた青年。彼が勤務する知能工学研究所は深い森のなかにあり、庭に何体ものグリフォンの彫刻があることからグリフォンズ・ガーデンと呼ばれている。そこにはその存在を公表されていないバイオ・コンピュータがあった。彼とともに東京を離れて札幌の大学院に進学した美しい恋人、彼女と暮らす札幌市内の2LDK、古い建物のなかの図書館…。「あなたの世界は完結しているのね」研究所の仲間に言われたひとことがきっかけになって、彼はそのバイオ・コンピュータのなかにひとつの世界を構築することを思いつく。そしてふた組の恋人たちの物語がはじまる…。