著者 : 最所篤子
母を亡くし辞典編纂者の父が勤める写字室を遊び場にして育ったエズメは、ある日、床に落ちてきたカードを見つける。そこに書かれていたのは「ボンドメイド」(はしため)という単語。そこから、「捨てられたことば」を掬い上げるエズメの人生の旅が始まった。女性参政権運動と第一次大戦に揺れる激動の時代ー草創期の英国『オックスフォード英語大辞典』編纂室を舞台に「捨てられたことば」の蒐集に生涯を捧げた女性を描く感動作。
イギリス南部に暮らすジェスは、十歳の娘タンジーと、別居中の夫の連れ子ニッキーを育てる二十七歳の極貧シングルマザー。ずば抜けた数学の才能を持つタンジーは学校から数学競技会出場を薦められるが、会場への旅費さえままならない。一方、ジェスが清掃の仕事をしている高級コテージでは、逮捕の危機にさらされたIT長者のエドが引きこもっていた。最悪の出会い方をするジェスとエド。なのに彼がこの凸凹家族と老犬一匹を連れ、車でスコットランドの競技会会場を目指し英国縦断の旅をすることに…。メガヒット作家が新しい形の家族を描く愛と希望の物語!
かのウィリアム・シェイクスピアは果たして本物かー気弱な古書商ピーターが手にした本は、世界を揺るがす大論争に決着をつける奇書『パンドスト』初版本だった。癖のある書き込み、亡き妻そっくりの謎の肖像画と共通する“B・B”のサイン。やはり偽書なのだろうか?本物であることを願うピーターは真贋と“B・B”の調査に乗り出すが…。冒険あり、歴史あり、愛と涙あり。エンタメ・ビブリオミステリの傑作!
6ヶ月限定の介護職についたルーが出会ったのは、事故で四肢麻痺になった、かつての実業家ウィル。はじめは冷たい態度をとるウィルだったが、ルーの実直な態度に徐々に心を開き、またルーもウィルのおかげで自身をもてるようになる。だがある日、彼女は知ってしまう。ウィルがスイスの尊厳死施設に予約を入れていたことを…。いのちと生き方について考える、世界で大反響を呼んだベストセラー・ラブストーリー。
大晦日、ロンドンの飛び降り自殺の名所、トッパーズ・ハウスの屋上で、人生に別れを告げようとして上った失意の男女4人が鉢合わせをする。互いの身の上を語り合ううちに、期間を決めて、もう少し生きてみようかという話になり…。全く違うタイプの男女4人が次第に奇妙な友情をはぐくみ、もう一度人生と向き合おうとする姿を、個性豊かな各々の独白でユーモアたっぷりに描く。
冷たい雨の降る一月のある午後、夫に死に別れたパルフリー夫人は、余生を過ごすため、クレアモントホテルに投宿した。そこにはすでに同様の長期滞在客がいた。すぐ物忘れする人、エキセントリックな人、ホテルの定食メニューに異常な関心を示す人たち。愛し、愛されることから遠くなり、退屈な日々を過ごしている。そんなある日、夫人は、若く貧しい、ハンサムな青年に出会い、恋をする。