小説むすび | 著者 : 最所篤子

著者 : 最所篤子

ジェリコの製本職人ジェリコの製本職人

吉田恵里香氏推薦!豪州発あの傑作の姉妹篇 「社会や環境、時に家族や出生時の性別が、ペギーの壁となり牙をむく。 弱き者にこそ味方となるべきものが敵となる社会で、どうしようもなく知識や学問に惹かれてしまうのは、これらが決して自分を裏切らないから。 それが、この物語が今の時代に必要である理由だと思う。」 ーー脚本家・吉田恵里香氏(連続テレビ小説『虎に翼』、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』) 第一次世界大戦下の英国。オックスフォード大学出版局製本所で双子の妹とともに働く女工ペギーは、夜になると工場から密かに持ち帰った不良(ヤレ)本をむさぼるように読み、大学で学ぶことを夢見ていた。だが、労働階級の彼女にとって学問は決して手の届かない高嶺の花だ。 戦争は日に日に激化し、街にベルギー難民が押し寄せ、疫病が流行し、社会は変わっていく。ペギーは、障害のある妹への責任やベルギー負傷兵との恋に悩みながら、大学を目指すーー。 世界が恋した豪州発の傑作歴史小説『小さなことばたちの辞書』の姉妹篇が登場。前作同様オックスフォード大学出版局を舞台に、若く貧しい女工の挑戦、戦争と銃後のリアル、そして当時の製本工場を活写した紙の本への愛あふれる珠玉の物語。 【編集担当からのおすすめ情報】 本作はオーストラリア発のベストセラー小説『小さなことばたちの辞書』の姉妹篇です。前作では大辞典からこぼれ落ちた名も無き女性たちのことばを集めることに生涯を捧げた女性エズメが描かれましたが、本作では同じ時代のオックスフォード大学出版局を舞台に、製本所で働く女工ペギーの青春が描かれます。 幼い頃から父の勤める辞書編纂室に出入りしていたエズメとは異なり、両親はなく、運河に係留されたボートハウスに暮らし、製本所でも作業をしながらつい本を読んでしまい「あんたの仕事は製本することで、読むことじゃない」と叱られる労働階級のペギーは、そもそも学問へのアプローチすら許されない境遇にあります。 前作のキャラクターや同じエピソードも登場しますが、視点人物が異なることでこうも見え方が変わるのかと気づかされることもあります。そういう意味では、本作は『小さなことばたちの辞書』のサイドBの形を取りながら、「持たざる者」側を描いた作品とも言えます。他方でフェミニズム、シスターフッド、戦争といったテーマは前作からも引き継がれ、同様の感動を味わえる傑作小説となっています。 そして本作のもうひとつの大きな魅力は、何と言っても100年以上前の、ほぼすべてが手作業で行われていた製本工場の描写です。紙を折る、重ねる、縫い合わせるーー当時の製本工程が、著者の入念な取材によってリアルに再現され、製本に関わる全ての人々へのリスペクトと、紙の本への愛があふれています。 様々な魅力を持つ小説です。前作と合わせてぜひお楽しみください。

イスタンブル、イスタンブルイスタンブル、イスタンブル

美しき街への痛切な愛を謳う傑作トルコ文学 イスタンブルの地下牢獄の一室に、学生のデミルタイ、温厚なドクター、気難しい床屋のカモが閉じ込められていた。苛烈な拷問を待つあいだ、彼らは互いに物語をして時を過ごす。そこに激しい拷問を受けたばかりの老人キュヘイランが加わる。彼は幼い頃から父が影絵で物語ってくれたイスタンブルに憧れていた。彼らはまるで疫病を避けて家に閉じこもり物語をし合った『デカメロン』のように物語り合い、空想の世界でお茶を飲み、煙草を味わう。やがて彼らの過去が少しずつ明らかになり、と同時にそれぞれがまた拷問へと連れだされていく…。 2018年EBRD(欧州復興開発銀行)文学賞受賞。東西が溶け合う美しい街と、その地下で彼らを襲う残酷な現実ーークルド系トルコ人の作家がイスタンブルへの痛切な愛を謳う傑作トルコ文学。 【編集担当からのおすすめ情報】 ノーベル文学賞受賞作家オルハン・パムクをはじめ、『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』のラティフェ・テキン、『レイラの最後の10分38秒』のエリフ・シャファクなど、世界的に評価され活躍する現代トルコ文学の作家たち。本作『イスタンブル、イスタンブル』の著者ブルハン・ソンメズは日本初紹介となりますが、本国トルコをはじめヨーロッパでも高く評価されている作家です。 クルド系トルコ人のソンメズ氏は、1980年の軍事クーデターの混乱のなかイスタンブルで法律を学び、人権弁護士として活動していましたが、その活動中に警察に襲撃されて瀕死の重傷を負い、その後英国へ亡命しています。現在はトルコと英国を行き来しながら作家活動をしていますが、その半生を経て生まれたイスタンブルの街への痛切な思いが、この小説に込められています。 一言たりとも読み逃したくないほど濃密な文章、苛烈な拷問のなかで囚人たちによって語られる物語の美しさと哀しさ。きっと特別な読書体験になることと思います。ぜひ、現代トルコ文学の底力をその目で確かめてください。

小さなことばたちの辞書小さなことばたちの辞書

ことばに生涯を捧げた女性を描く珠玉の一篇 「生きるということは、ことばを集めることだーーべつに辞書編纂者でなくても。エズメがそれを教えてくれる」--国語辞典編纂者・飯間浩明 19世紀末の英国。母を亡くした幼いエズメは、『オックスフォード英語大辞典』編纂者の父とともに、編集主幹・マレー博士の自宅敷地内に建てられた写字室に通っている。ことばに魅せられ、編纂者たちが落とした「見出しカード」をこっそりポケットに入れてしまうエズメ。ある日見つけた「ボンドメイド(奴隷娘)」ということばに、マレー家のメイド・リジーを重ね、ほのかな違和感を覚える。この世には辞典に入れてもらえないことばがあるーーエズメは、リジーに協力してもらい、〈迷子のことば辞典〉と名付けたトランクにカードを集めはじめる。 大英語辞典草創期の19世紀末から女性参政権運動と第一次世界大戦に揺れる20世紀初頭の英国を舞台に、学問の権威に黙殺された庶民の女性たちの言葉を愚直に掬い上げ続けた一人の女性の生涯を描く歴史大河小説。 2021年豪州ベストセラー1位(フィクション部門)、NYタイムズベストセラーリスト入り。「ことば」を愛するすべての人に贈る珠玉の感動作。 【編集担当からのおすすめ情報】 皆さんは、被選挙権を含む女性の参政権が世界で初めて実現したのは、オーストラリア(南オーストラリア州)だったとご存じでしょうか。 本作は、そんなオーストラリアで昨年、ベストセラー1位(フィクション部門)となった小説です。翻訳者の最所篤子さんから本作をご紹介頂いたとき、「そんな国だからこその1位だろう」と納得しました。その思いは、原稿を読み終えた後、このような小説が一番読まれているオーストラリアを、心の底から羨ましいと思う気持ちに変わりました。ジェンダーギャップ指数が世界156か国中120位(2021年)という日本でこそ、男女を問わず広く読まれてほしい小説です。 女性の権利を求め闘った先人たちの努力をつぶさに知ることが出来る一方で、「小さなことばたち」を掬い上げ続けることで、女性参政権運動にすら加われない弱い立場の女性たちにそっと寄り添った一人の女性の生涯に胸打たれる作品です。日頃何気なく使っている「ことば」についても、改めて深く考えさせられます。そしてエズメと彼女を取りまく人々との友情、家族愛、仕事仲間との絆、恋愛、数々の別れに何度も泣きます。 ぜひ、お愉しみ頂ければ幸いです。

ワン・プラス・ワンワン・プラス・ワン

本当の家族って?メガヒット作家最新作! イギリス南部の海岸沿いの町に暮らすジェスは、清掃業とパブ勤めをかけもちしながら、10歳の娘タンジーと、別居中の夫の連れ子で16歳の息子ニッキーを育てる27歳のシングルマザー。生活は極貧、子供たちは時々いじめに遭っているけれど、持ち前のタフさとポジティブさで何とか日々を凌いでいた。ある日ジェスは、タンジーの学校の教師から、数学競技会の出場を薦められる。タンジーにはずば抜けた数学の才能があり、競技会の成績次第で奨学金が認められれば、一流校での教育が受けられるというのだ。期待に胸膨らませながらも、会場のスコットランドへの交通費すら捻出できず悩むジェス。一方その頃、ジェスが清掃サービスをする海辺の高級コテージでは、インサイダー取引容疑で逮捕の危機にさらされたIT長者のエドが人目を避け引きこもっていた。ひょんなことからジェスとエドが出会い、エドはこの凸凹家族と老犬一匹を連れ、車で英国縦断の旅をすることに……。 本当の家族って?本当に大切なものって?世界800万部のメガヒット『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』の著者が描く、ちょっぴり塩っぱくてハートフルなロードノベル!

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