著者 : 望月諒子
列島中が豪雨災害に見舞われた夏、二つのニュースが小さく報じられた。次々と見つかった血塗れの旧五千円札と、一人のジャーナリストの死。フリーランスのライター・木部美智子はふとしたきっかけで取材を始めるが、複雑に絡み合った事件の根を追ううち、愛媛の村で起こった戦中戦後の悲劇を知ることとなるー。
イタリアの美術館から盗まれたクリムトの絵画「婦人の肖像」が発見される。その絵を入手したのは評判の悪い美術商・吉崎為一郎だ。資金洗浄で生き延びてきた吉崎のバックには美術集団「朱鷺の会」がいる。有名実業家・清水谷貴実社長が、そのクリムトを30億で買うらしいと業界が騒いでいる。そんな中、明治初期に日本美術を精力的に集めたフェノロサのコレクションが密かに買い戻されていて、そこには一級品の北斎の肉筆画が存在しているという。どうやら件の朱鷺の会がその隠し財産を継承しているのではと噂されるが…。突然日本に現れた「クリムト」。美術愛好家たちを奮い立たせる幻のコレクション「北斎」。『大絵画展』『フェルメールの憂鬱』に続く、絵画ミステリー第3弾!!
二人の女が中野区内の別の場所で、それぞれ銃で撃たれ死亡しているのが発見された。どちらも身体を売り、育児を半ば放棄した、シングルマザーだった。マスコミが被害者への同情と美談を殊更に言い立てる中、フリーの記者・木部美智子は、蒲田の工場で起きた地味なクレーム事件を追い続けていたが…。現代社会の光の当たらない部分を淡々とした筆致で深く描き出した、骨太なノワール犯罪小説。
ベルギーの小さな村の教会から、壁に掛けられていた絵がなくなった。この絵が実はブリューゲルの作品だと聞いていた牧師は、取り戻さなければならないと、知り合いに助けを求める。一方、スイスにある屋敷の屋根裏から、フェルメールの作品が見つかった。メトロポリタン美術館からは、フェルメールの絵が強奪された。名画は一体どこへ?騙し合いが始まった!
日本ミステリー文学大賞新人賞が誕生してから二〇年。幅広く活躍を続ける受賞作家から、大石直紀、岡田秀文、新井政彦、望月諒子、嶺里俊介の五名が「街」をテーマに競作。普段、ぼんやりと見えている風景、行き交う人たちの何気ない行動…その中に数々の謎が潜んでいる。五つの味わい深い短編を収録した、珠玉のアンソロジー第一弾!
立志館大学を囲むように出現した「呪」と「殺」の落書き。それは次第に増殖し、ついには女子学生が正門前で刺殺体に。被害者が、桜子のゼミに出入りする平泉講師の恋人だったという噂が流れ、おまけに彼の研究が「呪いと密教」なものだから、疑いの目は一気に集中。ところが桜子を慕う勤勉実直な講師・鱈目小雪が恋する相手が平泉だったため、事態はとんでもないことに!?大学内ミステリー第2弾。
神戸の住宅街に住む古畑夫妻と娘の香が、生きたまま焼かれるという猟奇的殺人事件が起こった。香の夫で勤務医の雅貴にはアリバイがあり、香の不倫相手の水嶋周平が参考人として調べられる。自らの無実を明かすため真相を探り始めた周平は、やがて古畑が阪神淡路大震災前に地上げに加担していたという秘密の過去にたどり着く。残忍な事件に隠された驚愕の真相とは!?
マンションも買った。車も買った。足らないものは男だけ。桃沢桜子42歳。立志館大学准教授。出世争いには巻き込まないで的な、食事は売れ残り弁当でOK的な合理主義な女。ある朝、田崎教授が大学の玄関ロビーで死んでいた。前日に教授と言い争っていたのを目撃された桜子は警察に事情を聞かれる。一癖も二癖もある教授たちと大人になりきれない学生たち。魑魅魍魎が跋扈する大学内ミステリー。
笹本弥生という資産家の老女が、高級老人ホームで殺害されているのが見つかった。いつもお金をせびっている孫の犯行なのか?そこに生き別れたもう一人の孫という男が名乗りでる。詐欺事件や弁護士の謎の事故死が、複雑に絡まりはじめー。関東大震災、東京大空襲を生き延び、焦土の中、女ひとりでヤミ市でのし上がり、冷徹な金貸しとなった弥生の人生の結末とは。骨太ミステリーの傑作長編。
ロンドンのオークションでゴッホ作「医師ガシェの肖像」を日本人が競り落とした。落札価格は約百八十億円。時は流れ、日本のバブルが弾け、借金で追いつめられた男女にある依頼が持ちかけられる。それは倉庫に眠る「ガシェの肖像」を盗んで欲しいというものだった…。第14回日本ミステリー文学大賞新人賞に輝く、痛快にしてスリリングなコンゲーム小説の傑作。
患者・秋山和雄を診察したのは7月の終わりだった。CTスキャンの結果、脳底部に腫瘍影が認められた。脳外科医の俺は秋山を自分の大学病院に入院させた。それが事件の発端だった。手術の前日、執刀医が俺であることを確認した秋山は突然言った。「眼鏡を、かけられたほうがいいかと、思うのです」…何を言っているのかわからないままに、手術当日になった。頭部切開の最中、ふとしたはずみで秋山の髄液が目に飛び込んできた。俺の脳裏におかしな映像が映るようになったのはそれからだった。脳外科医の身に何が起きたのか?衝撃の問題作。
大阪のホテルで、連続して二人の男が猟奇的な方法で殺害された。フリージャーナリスト・木部美智子のもとに、取材依頼が舞い込む。その結果、ひとりの容疑者が浮かぶが、逮捕直前、美智子の目の前で自殺を遂げる。しかし、意外な事実が明らかになり、新たな殺人が…。『神の手』で注目を浴びた大型新人が「小説の面白さ」を追求した渾身のデビュー第二作。