著者 : 杉森久英
その男、山下太郎は、満洲で莫大な財産を築くも、敗戦ですべてを喪った。しかし、戦後復興の核となる石油を欧米資本に依存している現実を危惧し、69歳でアラビア石油を創業。世界から“山師”と揶揄されながら、中東で「日の丸油田」を見事打ち立てたー。日本近代興亡の中で成功と没落、再興を成し遂げた、忘れられた破格の豪傑・山下太郎を、『天皇の料理番』著者が描ききる!
小さいときから強情でいたずらっこだった篤蔵は、福井の大庄屋の次男坊。高等小学校の時、ひょんなことから鯖江連隊の田辺軍曹からご馳走になった“カツレツ”の味に仰天。彼の運命が大きく変わることにー。その後、家出同然に東京へ行き、西洋料理の世界に裸一貫で飛び込んでいく。明治生まれの若者が、日露戦争以降の東京で、激動の時代と共に、力強く成長していく立身出世の物語。
好奇心旺盛な篤蔵は、寸暇を惜しみ熱心に修業を続け、華族会館、そして上野の精養軒で働くことになる。フランス語も習得し、ついに西洋料理の本場、パリへ。各国の王室貴族などが集まる一流ホテルで下働きとしてスタートした彼は、人種や言葉の壁、文化の違いを乗り越えて、一人前の料理人として認められていくー。大正と昭和の時代、宮内省主厨長まで登りつめた男の生き様を描く感動長編。
少年時代から自分を天才と信じた島田清次郎が、弱冠20歳で世に問うた長編小説『地上』は記録破りの売行きを示し、彼は天才作家ともてはやされ、いちやく文壇の流行児となった。しかし、身を処する道を誤まり、またたく間に人気を失い、没落した。本書は、島田清次郎の狂気にも似た足跡を克明にたどり、没落のよってきたるところを究めようとした、直木賞受賞の傑作伝記小説。
昭和11年(1936)の二・二六事件、翌年、衆望をにない文麿はついに首相に任命される、僅か45歳の青年宰相であった。しかし意図と努力に反し、軍部はひたすら戦争を拡大して行く。総辞職、大戦の勃発、そして敗戦…文麿は戦犯容疑の収監を拒否して自決する。激動の昭和の悲撃を一身に背負った文人宰相の生涯と人間像をあますところなく描いて毎日出版文化賞に輝やいた渾身の大作。
人の病を直すことより、国家の病を直したい。保和らの薦めにより、医学を修得することになったが、政界への夢断ちがたく、板垣退助、北里柴三郎、岩倉具視らを知り、政官界への足がかりを着実につくっていった。明治・大正を通しての傑出したアイデアマン後藤新平の信念に満ち溢れた生涯を描く大長編。
太平洋戦争前夜の難局のなかで、衆望をにない首相となるが、日米開戦を避けられずに辞職し、戦後、マッカーサーによる戦犯容疑での収監を拒み、その前夜に自決した文人宰相の悲劇の生涯を、公私両面からあますところなく描く。毎日出版文化賞受賞。
純文学から大衆文学に転じ、「文芸春秋」の創刊、映画会社大映の初代社長就任、衆議院・東京市会両選挙出馬など、旧来の反俗的文士像に抗し、あえて「文壇の大御所」となった、最初の市民的作家の生涯。