著者 : 村松真理子
まっぷたつの子爵[新訳]まっぷたつの子爵[新訳]
引き裂かれた世界の寓話 トルコとの戦争へ出かけた若き子爵メダルドは敵の砲弾で吹き飛び、体をまっぷたつに引き裂かれるが、奇跡的に一命をとりとめ、右半身だけの体で領地に帰ってきた。しかし、その性格は以前とは一変していた。メダルドの通ったあとには半分に切り裂かれた果実や作物、動物たちがちらばり、彼の開く裁判ではどんなに軽い罪でもすべて絞首刑に処された。お城の年老いた乳母は言った。「帰ってきたメダルドは邪悪なほうの半分らしいね」。人々は半分になった子爵が領内に落とす暗い影に怯えた。ある日そこへもうひとりの子爵、良いほうの半分が帰ってきた……。人間存在の歴史的進化を寓話的に描いた三部作《我々の祖先》の第一作『まっぷたつの子爵』を清新な新訳で贈る。三部作執筆の経緯を作者自ら解説したエッセー「一九六〇年の覚書き」(本邦初訳)を併録。翻訳権取得。
エウラリア鏡の迷宮エウラリア鏡の迷宮
鏡の中に現れる美しい青年に恋をし、やがて悲しいフィナーレをむかえるエウラリアをはじめ、何ものかに魅せられ、囚われの身となり、遥かな迷宮に迷い込んだ者たち。幻や想像の世界に現実以上のものを見てしまった人間の悲劇が、イタリアの若き女性作家の手からダマスク織りのように紡ぎだされる。
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