著者 : 東龍造
ごんぼ色の残照(小学生編)ごんぼ色の残照(小学生編)
えらいこってすなぁ。オリンピックと阪神の優勝。 盆と正月が一緒に来たようでーー 忍者ごっこに銀玉鉄砲、駄菓子屋の氷饅頭、生國魂神社の夏祭り、日生球場のカクテル光線、上町筋の聖火リレー……大阪人の闊達に揉まれ、路地を走りまわった昭和39(1964)年、“ガキ大将”の躍動の日々。 家出した親友、逝きし同級生、初恋と失恋、小説・昭和の大阪。
ごんぼ色の残照(高校生編)ごんぼ色の残照(高校生編)
せや、爆発させたかったんや。 対象はなんでもよかったんや。 屋上でふかしたタバコ、ビートルズ解散、教室で炸裂するロック、今里新地の部屋のシミ、赤目渓谷の飯盒炊爨、御堂筋の10・21国際反戦デー……昭和46(1971)年、“遅れた世代”の逡巡の日々。 仲間のすれ違い、親友との再会、恋の裏切り、小説・昭和の大阪。
おたやんのつぶやきおたやんのつぶやき
せやせや、あんた、若いさかい、 〈おたやん〉言うてもわかりまへんわな。 いまでは死語になってるかもしれまへんけど、 大阪ではお多福人形のことを〈おたやん〉と呼んでましたんや。 「夫婦善哉」を軸に、家族の“時”が結ばれる、こころに沁みる「大阪」物語。 表題作ほか2篇収録。
フェイドアウトフェイドアウト
活動写真の先駆者(パイオニア)たち。 「そや、喪が明けたときにすぐにでも公開できるよう会場を押さえとかなあかん」 このときの判断が後々、日本映画史に確固たる足跡を残すことになった。 明治29年(1896)、大阪。 本邦初の映画が、難波で上映された。 ヴァイタスコープ、シネマトグラフ……映写機初輸入秘話。 ときおり小雪の舞う寒い日だった。和一はしかし、そんな天候とは逆に早朝から体を火照らせ、夜の実験試写をいまかいまかと待ち遠しく思っていた。……これから日本を支える若い世代に、世紀の発明品をしかと目に焼きつけてもらいたかったからだ。(本文より)
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