著者 : 松本テマリ
精霊王オルフェンに創造されたこの世界で、唯一精霊の加護を授からなかったディアン。落ちこぼれと呼ばれる彼とは対照的に、妹は精霊に嫁ぐ名誉を賜った乙女。だが、我が侭ばかりで周囲に甘やかされる妹に不安を募らせていたある日、ディアンは自分の成績が父によって改ざんされていた事を知る。「全てはディアンのためだった」とは納得できずに家を飛び出し、魔物に襲われた彼を助けたのは…不審点しかない男と一匹の狼だった。これは、他者の欲望に振り回され続けた青年と、彼と旅を続けることになったおっさんが結ばれるまでの物語である。
名古屋市南区、細い坂を上ったところにある平屋の建物に『あなたの街の便利屋さんこっこ屋ホームサービス』の看板はある。社員に対する態度はすこぶる悪いが、依頼人には低姿勢で擦り寄るーという金に汚い残念美形の黒木玄社長のもと、白石倭香は唯一の人間として、人外社員に紛れて働いているのだった。実はこの黒木の正体は、とある取り壊された稲荷神社の眷属で、ご神体を守り人として生きる道を選んだ黒狐だ。神社再建を夢見て便利屋稼業で資金を貯める日々なのだが、舞い込む依頼はオカルト案件ばかりで、新入社員の倭香は頭を抱えるしかなく…。
大学は卒業したものの就活に失敗して、只今絶賛無職中の白石倭香は23歳。実家住まいで少々肩身の狭い毎日だ。ある日、大好きな祖父の遺品整理のため、便利屋の「こっこ屋」社長・黒木が倭香の自宅にやってきた。ずいぶん可愛い社名だが、由来は別に可愛くもなんともなく、同じ名古屋市内の狐坂に事務所を構えていることから“黒狐”-つまり“こっこ”ということらしい。この黒木の秘密を偶然知ってしまった倭香は、口止めがわりに「こっこ屋」への就職を果たすが…。人外だらけの事務所に、たったひとり人間の身で入ってしまった倭香の勤務状況は!?