著者 : 松村和紀子
ジェイコブズビルの大企業で役員秘書の仕事を得たレスリー。人に言えない悲劇的な過去から逃れたくて、心機一転この町へ来たのに、大富豪社長マット・コールドウェルが彼女の前に立ちはだかる。前評判によると、気さくで感じがいいと言われていたマットはしかし、初対面から傲慢で、レスリーにつらく当たってばかり。ああ、彼は私の過去を知っているのかもしれない…。彼女は内心怯えるが、あるパーティでマットからダンスに誘われる。不思議なことにふたりの息はぴったりで、男性恐怖症にもかかわらずレスリーは彼と楽しく踊ることができたー過去の悲劇のせいで後遺症がある脚が、痛みに耐えられなくなるまでは。
サンディが15歳の頃から、10歳年上のジョブがお目付け役だった。彼女に悪い虫がつこうものなら、彼は容赦なく対応した。かたや彼は次々デート相手を替えて恋を楽しんでいた。そんなジョブにサンディはずっと片想い。会えば喧嘩してしまい、時には密かに涙さえ流す彼女だったが、あるパーティでジョブから熱くキスされて…。(「ジョブ・ドッド」) 仕事先の会社社長アレックスに一目惚れしたシー・ジェイ。だが臆病な彼女は募る想いを伝えられない。悩み抜いた末、慈善イベントの独身男性オークションに“出品”された彼を、いちばん人気だったにもかかわらず競り落とすことに成功した。これで1週間、彼を思うままにできるーわたしなしでは生きられないと言わせてみせる!(「競り落とされた想い人」) 「手切れ金は払う。父と別れろ」社長の息子ライルに、社長の愛人と誤解されたアシスタントのケルサ。ハンサムだが冷酷な彼に戸惑うなか、社長が心臓発作で急死し、遺書によりライルとケルサが共同で遺産を継ぐことが判明した。憤るライルの口から、驚愕の言葉が飛び出す!「なぜ黙っていた?君が僕の妹だということを」(「もう一人のケルサ」)
『ドルー・モーリス』ドクター・ドルー・モーリスの医院の受付係に採用された天涯孤独のキティ。喘息持ちながら一生懸命働くが、妻を失ってから仕事一筋の気難しいドルーを怒らせてばかり。ところがある日、ドルーが悲しみに耐えかねて慰めを求めるようにキスを迫ってきて…。『御曹子の嘘』ヘイリーは学生時代、運命の人リックと一夜を共にしたが、その晩彼は忽然と姿を消した。4年後、勤め先が大企業に買収され、彼女は新経営者を見て息をのんだーなんと、あの“リック”だったのだ!ああ、どうしよう!彼がまだ知らない、息子の存在を…。『誘惑のローマ』“情熱のないお堅い女”と元夫に嘲られたベサニーは、傷心旅行でローマ一人旅を敢行。現地でハンサムな銀行理事長アンドレと出逢い、急速に惹かれる。だが情熱を分かち合った直後、何も告げずに彼は姿を消した。そのあとで、ベサニーは妊娠に気づくのだったー。『秘密のキス』地味で眼鏡のジェーンは新聞に載った匿名のラブレターと、突然届いた花束に胸が騒いだ。もしやマット?彼は高校時代、彼女への悪戯で退学になったものの今は同僚。意識するジェーンだったが、一方のマットもラブレターの書き手を彼女だと思っていて…。
『トム・ウォーカー』NYの広告代理店に勤める秘書イリージアは憧れの上司トムと一夜を過ごし、純潔を捧げた。だが翌日には打って変わって目も合わせようとしない彼の態度に傷つき、彼女は退職して故郷に帰ったーおなかに小さな命がめばえていたけれど。数年後、密かに娘を産み育てていたイリージアの前に、思いがけず、トムが突然姿を現す!『恋人たちの長い一日』幼い頃に父に捨てられた看護師レイチェルは、異性に対して慎重だった。いつかすてきな男性が現れるまでは空想で充分と、独り身のまま人工授精で子を授かる。ある日、ついに理想の男性、会社CEOのブライスと出逢い、夢の一夜を過ごした。だが、彼が名門一族の跡取りで夜ごと違う美女を連れていると知り、身を引くことに…。『永遠の居場所』ストーカーから逃げる途中、コナーという男性と知り合ったアンナ。瞬く間に惹かれ合って電撃結婚するが、ハネムーン最後の夜、牧場主のはずの彼が行方不明者捜索の専門会社社長と偶然知ってしまう。まさか、ストーカーに雇われた探偵?アンナは怖くなって逃げ出したーコナーの子を宿したとわかったのは、その後のことだった。-密かに産んだ娘、独りで授かった子、思わぬ妊娠。人生を変える恋を綴ったベビー・アンソロジー!
心優しいけれどとても引っ込み思案なルーシーは、華やかで充実した生活を送る姉と妹に挟まれ、目立たぬ存在の娘だ。児童養護施設での仕事に生きがいを感じてはいるものの、母には、この子は結婚できないかもしれないと悲観されていた。そんなある日、ルーシーは児童を連れていった病院で、笑顔のすてきなドクター・サーロウに一目で恋におちてしまう。背が高く、女性なら誰もが振り返らずにはいられないほど整った顔立ち。いつもは控えめなルーシーも、このときばかりは一大決心をしたーどんなことをしても、私は彼と結婚したい!けれども、恋に慣れないルーシーのがんばりは空回りするばかりで…。
昼はフラワーショップの店員、夜はウェイトレスをしながら、4歳の息子を育てる未婚の母ゾウイ。そんな彼女の家に、新聞社に勤める独身貴族のクープが間借り人として引っ越してくる。明るく楽しいクープと触れ合ううち、息子が彼になつくようになり、しだいにゾウイも惹かれていくが、男性に傷つけられた過去があって…(『すてきな同居人』)。敵対する両家の跡取りであるフルールとマットは愛し合い、密かに結婚式を挙げた。だがその夜、フルールの母とマットの父が駆け落ち。この地を出ようと言うマットに、フルールは家族のために残ると告げるほかなかった。以来、音信不通になり、妊娠に気づいた彼女は世間の冷たい視線に耐え、彼の子を産み育ててきた。6年後ー(『秘密のウエディング』)。幼い娘の子育てを優先して昇進の話を断ったナタリーは、閑職に追いやられた。准男爵家出身のエリート社長ラファエルが気分を害して、こんな仕打ちをしたに違いない。同僚と残業中、ナタリーが社長のことを“冷血な暴君”と呼んで憎まれ口をたたいていたところ、彼女の背後に、ラファエル本人が美しい顔を歪ませて立っていた!(『甘美な嘘』)。
大女優のジュリア・ハーベイが忽然と銀幕から姿を消して10年。クインはとだえていた消息を、ついにつかんだー18歳になる頃、恋い焦がれていた母親の親友ジュリア。年齢の差を超えて深い関係になったのに、彼女は何も告げず、突然いなくなってしまったのだった。だが今日、ジュリアに会うのはあくまで仕事のため。そのとき、目の前に彼女が現れた。息子だという少年と一緒に。彼女が輝かしいキャリアを捨てて姿をくらましたのは、ほかの男と結婚するからだったのか。クインは打ちのめされた。
夫の亡骸とともに、リリーは茫然とデインの到着を待っていた。もうすぐ彼がここに来る。私を軽蔑している彼が…。デインの兄と極秘の取り決めを交わし、偽装結婚してから、そうとは知らないデインにリリーは罵声を浴びせられてきた。家名を汚す雌狐!清楚な仮面に隠れて浮気を楽しむ悪女!いわれなき汚名に耐えつづけた結婚生活は、今、幕を閉じた。夫を亡くして、もうデインの憎悪に対処するすべもない。やがて顔をこわばらせたデインが、リリーの前に現れた。彼は知らない。私の体が無垢なことも、この胸に秘めた思いも。
苦労してキーリーを育ててくれた母が再婚することになった。相手は、母がハウスキーパーをしていた屋敷の主。キーリーは最愛の家族の幸せを心から喜んだが、母は浮かぬ顔だ。聞けば、義理の息子となる実業家のタラントが“財産めあて”と責め、小切手を持たせて母を追い払おうとしたというのだ!なんてひどい人なの、そのタラントという息子はー。たまらず彼の会社を訪れたキーリーは、長身の魅力的な男に迎えられた。「母親が言うとおりの美人じゃないか」タラントがそう漏らし、無遠慮に彼女を眺め回したあと吐き捨てた言葉に、彼女は耳を疑った。「まさかハゲタカが2羽もいるとは思わなかった」
愛する父親が亡くなり、意地悪な継母と二人きりになったニーナ。だが悲しみに浸るまもなく、残酷な現実がニーナに襲いかかる。継母の浪費のせいで、父は多額の負債を抱えており、生まれ育った大好きな屋敷を売るほか道はないというのだ。呆然とする彼女の前に現れたのは、ハンサムな富豪スティード。忘れもしない5年前、ニーナの誕生日パーティで、唇を無理やり奪ったあげく、子供扱いしてからかった無礼な人。スティードは、屋敷を売らずにすむ方法があるーそう切りだすと、ニーナに言い放った。「僕と結婚すればいい」
ケイラは嵐の中、事故を起こして大破した高級車に遭遇した。運転していた男性はアランといい、ひどい怪我をしている。彼を自宅に連れ帰るものの、天候は悪化し、電話も道路も不通。世間から断絶され、二人で語り合う時間は、不思議と穏やかで…気づけばケイラの心には、ほのかな恋心が芽生えていた。そして3日目の夜、流されるままにベッドをともにした。でも、都会から来た大富豪アランにとって、それは一夜限りの関係。田舎で犬と暮らし、ボランティアに身を捧げる孤独なケイラとは、まるで住む世界の違う人ーだからケイラは嵐が去った翌朝、まだ眠る彼に一度だけそっとキスをして、彼を送り出すのだった。
17歳で両親をなくしたあと、ルーシーは自活の道を探ろうと秘書養成所に通い、語学力を磨いて、必死で生きてきた。しかし従姉の死後に相続した、崩れかけのコテージに居座る老人からコテージの修理を要求され、途方にくれていた。唯一の財産のフラットを売却する以外、お金は工面できそうもないのだ。そんなとき、先日パーティで出会った富裕な実業家ナイアルとでくわす。一目で彼に惹かれた私の心を見透かしたように、横暴にも唇を奪った男。だが噂でルーシーの窮状を知る彼に、コテージを買い取ると言われた。しかも食事に誘われるとは…。いったいなぜ?彼には一緒に住んでいる美しい恋人がいるというのに。
17歳のカレンは、プレイボーイの御曹司アレクシスに片恋をした。その恋は、人生を危うく狂わせるところで、何年もの間、彼への関心が亡霊のようにつきまとい、カレンを苦しめていた。だが、いまのカレンは仕事に打ち込み、優しい婚約者もいる。恋愛感情こそないが、このままいけば彼と結婚するだろう…。だがある雪の夜、カレンの安寧は突如として終わりを告げる。倦怠の暮らしから、スキー場へ逃れてきたアレクシスに、カレンはめぐり逢ってしまったのだ。瞬く間に過去の痛みが蘇り、これっぽっちも覚えてくれていないのに、彼から目が離せない。
ギリシアの実業家で、大富豪のミコノスはマーサの愛する夫だが、二人はしばらく別居している。娘が生まれたとき、夫は、マーサが不貞を働いたと罵った。マーサの知人男性を名指しして、あの男の子どもだろう、と。あまりの言いがかりに、マーサは赤ん坊と家を飛び出した。夫が誤解を悔いて迎えに来てくれるのを待ったが、5年もの月日が流れ、ついに夫が現れたとき、マーサの期待は残酷にも打ち砕かれた。夫は娘を自分の子だと認めた一方で、ベビーシッターを雇い、娘をマーサから引き離そうとしたのだ。いや、それとも、マーサを娘から引き離し、妻を再び自分だけのものにするためか…。
見習い看護師のアグネスは夜勤明けに講義に出席したとき、最前列のまんなかだというのに思わず居眠りをしてしまい、オランダ人外科医フラーム・デル・リンセンに叱責された。長身で肩幅の広い彼がぱりっとした服を着た姿はいかにも魅力的で、壇上の彼を見上げる周囲の女性たちは恍惚のため息をついている。アグネスはデル・リンセン医師の冷たく光る碧眼に射られ、赤面した。「君は尊敬心に欠けている。それに厚かましい」ああ、もしも姉みたいに美人だったら、こうは言われなかったのかしら?自分への自信のなさと淡い想いとに心乱れるアグネスだったが、それからまもなく、ひどく惨めな姿を再び彼に目撃されてしまう!
ジョージーナが秘書として勤める会社が世界的大企業に買収された。ハンサムな社長のタリスにじきじきに呼び出されたジョージーナは、いきなり友人の男性と別れるよう申し渡され、驚いた。さっぱりわけがわからないジョージーナに、タリスが告げる。新しい重役が君をくびにしろと息巻いている、君がつき合っている男は彼の娘の夫だそうじゃないか、と。とんでもない誤解だわ。私はただの友達よ、愛人なんかじゃない!だが、タリスは彼女の説明に耳も貸さず、厳しい声で命じた。「君には、しばらくのあいだ僕の目が届くところで仕事をしてもらう」私がこんな傲慢な人の秘書に?だが、やがて彼の優しさに惹かれて…。
母と姉が男性に裏切られて不幸の一途をたどったため、ベス・ヘイリーは男を毛嫌いしていた。とはいえ、子供だけはどうしても欲しいー思い悩んだベスは、あるパーティに紛れて誰かを誘惑するという大胆な計画を立て、大人の雰囲気を漂わせたアレックスなる人物に近づく。妊娠するためだけの一夜は意外なまでに燃えあがるが、ベスは素性を隠したまま、寝ている彼を残して姿を消した。まさかアレックスが、ギリシアに名を馳せる財閥の跡取りで、その権力を使って自分の行方を捜し回るとは夢にも思わずに。
「手切れ金は払う。だから父とは別れてくれ」社長の御曹司ライルから蔑むような目で見られ、そう一方的に告げられて、ケルサは思わず彼の頬を叩いていた。私を社長の愛人だと決めつけるなんて、酷いわ!だがじつはケルサ自身、なぜ入社早々に気に入られ、社長秘書に抜擢されたのか不可解に思ってもいたのだ。ほどなくして社長が亡くなり、遺産の半分をケルサに遺したことがわかると、ライルの疑念はますます深まったようだった。今度は私を金目当ての女だと罵倒するのかしら?意外にも彼は切なげな表情で、驚くべき真相を口にした。
会社が倒産寸前に追いこまれ、ニーナの父は心労で倒れた。父の会社を乗っ取ろうとしているのは、富裕なギリシア人投資家、男っぽい色香が漂う甘いマスクのアントン・ラキトスだ。ある夜、ニーナは買収を考え直してもらおうと寝室に忍びこむが、酔っ払っていた彼に、無理やりベッドに引きずりこまれてしまう。暗闇でもつれ合ううちにニーナの体は痺れ、奥底に熱を感じ、望んでもいないのに甘い感覚を呼び覚まされるのだった。しかも、ニーナが誰だかわかると、怯える彼女の混乱をよそに、アントンは救済を盾にして、執拗に契約結婚を強要してきたのだ。