著者 : 松村栄子
すっかり成長した遊馬坊っちゃんと共に季節の移ろいを感じ、 目の前に一服のお茶が差し出されたかのような気分になり、 思わずキッチンでお茶を点て、庭の木陰で味わいました。 ーー中谷美紀(俳優) 青空の下、一服のお茶をいただいたような、さわやかな読み心地でした。あー、満足! あの子なりに、この子なりに、それぞれの道をいく姿がすがすがしくて愛らしい。 彼らの傍らには、お茶がある。これこそ、彼らの心棒なのだ。 ーー大島真寿美(作家) 物語自体の持つ「はんなりさ」(京都編ではもちろんだけれど、東京編でも!)や、 遊馬に限らず、一癖も二癖もある登場人物たちのが、 みな生き生きと描かれていること、等々、シリーズの美点をあげていくときりがないほど。 なにより、軽やかなユーモアに満ち満ちているのがたまらない。 本書には、それに加えて、さらりと「今どき」を生きる私たちに大事なことも 教えてくれていて(中略)そこもまた、ぐっとくる。 なんというか、あらゆることどもに、作者の細やかな目配りがあるのだ。 ーー吉田伸子(書評家) 「web asta*」2024年9月9日より抜粋 東京・本所で、弓道、剣道、茶道を伝える〈坂東巴流〉。 貧乏流派を継ぐのを厭い京都に出奔した過去を持つ 嫡男・友衛遊馬を取り巻く人々も、 さまざまな想いを抱えながら、ままならない毎日を送っていてーー。 佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、 翠と哲哉のじれったい恋模様、 カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、 三十路を迎えた遊馬の日々。 豊かな日本文化に育まれた人間関係の妙と粋に 心が温かく満たされる、珠玉の人情譚七編。 大人気シリーズ、堂々完結!
私の血の中には様々な作家の物語が流れているが、 骨はこの「僕はかぐや姫」ただ一篇によって形成されているに等しい。 ーー宮木あや子(作家) 進学校の女子高で、自らを「僕」と称する文芸部員たち。17歳の魂のゆらぎを鮮烈に描き出した著者のデビュー作「僕はかぐや姫」。無機質な新構想大学の寮で出会った少女たちの孤独な魂の邂逅を掬い上げた芥川賞受賞作「至高聖所」。少女たちの心を撃ちぬいた傑作二編が、待望の復刊!
「茶の湯だけでも奥深いのに、 弓と剣まで納めなくてはいけないとは。 友衛家に生まれなくてよかったとしみじみ思いました。 しかし他人事にも思えない本書です。(笑)」 --武者小路千家若宗匠 千宗屋氏 「“粗茶”シリーズの世界に遊ぶことは、 小説を読む悦楽に浸ること。 夏、涼しく、冬、暖か。 いつまでもいつまでも読みつづけていたい。」 --作家 大島真寿美氏 異色の青春お仕事小説の傑作! 弓、剣、茶の「三道」を伝える〈坂東巴流〉の嫡男・友衛遊馬、二十歳。 家出先の京都から帰還するも、 家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、 働き口を探してこいと言われてしまう。 建造が始まったスカイツリーの警備員に収まるが、 周囲からは「あそこの跡継ぎはダメだ」と後ろ指を指され、 ガールフレンドとの仲も“行き止まり”。 冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、 遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。 明日が見えないあなたに贈る笑えて泣けて元気になれる物語。
「これからは自分らしく生きることにしたんだ。黒々とした髪七三に分けて、あんこ喰っててもしょうがないだろ」武家茶道家元後嗣・友衛遊馬18歳。彼はそう言って家を出た-。酔狂な茶人たち、ほんのり甘い恋心、そして消えた茶杓…。京の都で繰り広げられる茶ごころたっぷりの傑作エンターテインメント。
自らの罪で詩人を死に至らしめたことを悔い、「真実の恋」を諦めたまま、詩と音楽に慰められて大人になってゆくシェプシ。神の言葉が解明され、禁囲区域であった紫の砂漠は解放されて、世界は混沌をきわめてゆく。天変地異、政変、急激な変化の中で、優秀な書記としてのぞまれながらも、詩人になることを選んだシェプシの運命は…。名作『紫の砂漠』の待望の続篇、書き下ろしにて登場。
外の世界では、誰もがおとなになる、恋をする、仕事をする。結婚し、親になる。ただ、変わらないものを透明なカプセルに閉じこめておきたかった…。共に過ごした4人の仲間の物語。
彼女の悲しみを、分かちあうことはできない。私の悲しみも理解されないだろう。でも、寄り添わずにはいられないー。無機質な新構想大学のキャンパスで出会ったエキセントリックなルームメイト。互いの孤独に気付くとき、何かが変わる予感がした。第106回芥川賞受賞の表題作ほか、「星の指定席」併録。
「性」以前の澄明な精神を求めて、自らを〈僕〉と称する女子高生徒。17歳のうつろいやすい魂とジェンダーのうっとうしさを描いて、時代の皮膚を垂直に刺す第9回「海燕」新人文学賞受賞作。