著者 : 松浦シオリ
元最上位の遊女・お染。寄る年波には勝てず、馴染みの客たちも離れてしまい、いまや衣を新調するための金にも困るようなありさま。元来の勝ち気な性格もあって、ひと思いに死んでしまおうかと思うが、金に困ってひとり死んだと言われることはあまりにも悔しく、ならば、心中をしようと考える。独り身で大食らい、ぬけている金蔵を相手に選び、手練手管で、ついに心中の約束を取りつけるのだがー
人生そのものが博打なんだよ 転がる賽に金は生えぬ 罪深き人 欲求は満たされる事を知らない ーーーー柳亭左龍 『 てめえらは、何度俺から奪えばそれで気が済むんだ。 』 軽井沢の有名旅籠の次男として育った理吉。裕福な環境で恵まれた生活を送っていたものの、なぜか家族との距離を感じ、心はいつも満たされずにいた。 そうした心の飢えを埋めるかのように兄・新吉のものをくすねては、新吉と喧嘩になる毎日。 やがて新吉は侠の世界に飛び出すが、理吉は家業の手伝いをするのみ。 旅籠の下働きの定丸に誘われるままに、博打を覚えたがために家を追われ、西海屋に流れ着く。 番頭の慶蔵のもとで頭角を現すが……業と欲に呑まれ、因縁に絡み取られていくーー 【 因果と侠の中で揺れ、流転と転落の男の物語 シリーズ第4弾! 】 小説 古典落語 第1冊『小説 真景累ヶ淵』(奥山景布子/監修 古今亭菊之丞) 第2冊『小説 牡丹灯籠』(大橋崇行/監修 柳家喬太郎) 第3冊『小説 らくだ』(並木飛暁/監修 桂文治) 第4冊『小説 西海屋騒動』(谷津矢車/監修 柳亭左龍) 第5冊『小説 品川心中』(坂井希久子/監修 柳家喬太郎) ◆ 著者について 谷津矢車(やつ・やぐるま) 一九八六年東京都生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒。二〇一二年『蒲生の記』で第18回歴史群像大賞優秀賞受賞。 二〇一三年『洛中洛外画狂伝ー狩野永徳』でデビュー。 二作目『蔦屋』が評判を呼び、若手歴史時代小説家として注目を集める。 二〇一八年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。 二〇二〇年『廉太郎ノオト』が第66回青少年読書感想文全国コンクール課題作品(高等学校の部)に選出。 解説 大橋崇行(おおはし たかゆき) 新潟県生まれ。東海学園大学人文学部准教授。文学博士。近現代文学研究のほか、作家としても活躍。
大きな体で大酒飲みの荒くれ者で、長屋や近隣の住民たちから嫌われていた通称「らくだ」。ある日、らくだの兄貴分、半次が長屋を訪ねると、らくだが死んでいた。半次はその弔いの金を工面するため、たまたま通りかかったくず屋の久六を呼び止める。らくだの死を知らされ、驚く久六だったが、半次に脅され、長屋の月番や大家に金品要求の言伝てを行うはめに。出し渋るところには、らくだの死骸を運んで「かんかんのう」を踊らせ、ついには香典や物品をせしめる。やがて、久六はらくだの母親のもとに使いに出かけるがー複雑な滑稽咄を人情咄として再構成、シリーズ第3弾!
浪人の萩原新三郎は、旗本飯島平左衛門の娘、お露と知り合って惹かれあうが、会えない日々が続き、ついには、お露は恋焦がれ死に、女中のお米も亡くなってしまった。それから夜ごと、新三郎のもとに通ってくるお米とお露の幽霊。経と如来像、札を授けられた新三郎はお露から身を守れたかのように見えたが、下働きの伴蔵の手引きにより、新三郎はお露に取り殺されてしまう。しかし、そこには複雑な因縁と企てがあったのだー