出版社 : 二見書房
悲痛でありながらも希望に満ちた物語。悲劇的なあやまちのために5年間服役したカナは、4歳の娘との再会を願って、すべてがうまくいかなかった町に戻ってきた。しかしすぐに、過去を修復することがいかに困難であることがわかってくる。娘の人生に関わる誰もが、カナがどんなに努力しても、彼女を締めだそうとしてくるのだ。唯一、カナを完全に拒絶しないのは、地元のバーのオーナーで、カナの娘がなつくレジャーだけだ。ところが、レジャーとカナがお互いの気持ちを確かめあい、親しくなることは、どちらも大切な人たちからの信頼を失う危険があった。二人が未来を築くためには、過去のあやまちの許しを得る方法を見つけなければならなかった。
目立つことが苦手で社交下手な無名作家、ローウェン。介護していた母を亡くし、身も心もすり減らしていた彼女に、ある日不可解な仕事のオファーが舞い込む。交通事故にあい、寝たきりとなった女性作家ヴェリティの共著者として、ベストセラー作品の続きを執筆してほしいというのだ。なぜ自分が選ばれたのか疑念をもちながらも了承し、資料を整理するためヴェリティの屋敷に滞在することを決める。そこでローウェンは、『運命のままに』という題名の自叙伝らしき原稿を仕事部屋で見つける。そこに描かれていたのは、思わず目を背けたくなるほど生々しく恐ろしい、夫との性愛と双子の娘への冷酷な心情だった。嫌悪を感じながらも、ローウェンは、ヴェリティが抱えていた暗闇をのぞき込むことをやめられなくなる。
ボストンの街角で偶然再会したふたりは、過去から未来へ歩みだす。異次元のベストセラー作家が贈る話題沸騰のラブストーリー。『イット・エンズ・ウィズ・アス』待望の続篇。
正体不明の巨大生物「怪獣」の度重なる出現に対抗すべく、日本は専門の省「怪獣省」を設置、発見・予報・殲滅の撃退プロセスを確立させた。怪獣の進行方向や攻撃方法を分析する予報官の岩戸正美は任務中、奇妙な事件に遭遇する。風力発電所の停止命令が届かなかった町で見つかった死体。音響統制が敷かれた静寂の中で鳴り響いた一発の銃声。怪獣が生息していると噂される湖で失踪した調査官ーそして、怪獣が絡んだ事件には必ず、くたびれたコートをなびかせた一人の中年男が現れる。警察庁特別捜査室の船村と名乗った男の噂を、正実は耳にしていた。「怪獣捜査官」と綽名される船村と、正美は事件に立ち向かうことになっていく…。
自殺を演じるのが趣味という十九歳の青年ハロルド。規則に縛られることを嫌い、ひたすら自由に生きる七十九歳の女性モード。六十歳の年齢差がある二人を結びつけたのは、縁もゆかりもない他人の葬式だった。しだいにハロルドは天衣無縫に行動するモードに惹かれていくー特異なユーモア感覚で哀しい現実を描き、高く評価される映画の小説化。
過去のトラウマに囚われ、殻にとじ籠もっていた大学生・直希。直希の目がとらえる世界は不思議にあふれ、彼を悩ませてきた。彼の目の秘密を知る若き大学教授・氷住灯子のもとで、不思議な事象を解き明かしていく。はたしてY研究所とは?氷住教授とは?-珠玉の短編連作集。
学校で苛烈な虐めをうける宇打ひじり。死をも考え始めてしまうような状態の中、美しいクラスメイトの夕美から一緒に復讐しようと誘われる。夕実も校内で悍ましい仕打ちをうけていたのだ。夕実に誘われるまま、毒を使って仕返しを考えるようになったひじりは、彼女から毒の知識を得ていくが、美しい彼女へ憧れや恋に似た依存を強めていく。そんな中、ひじりが絶望に打ちひしがれる事態が起こり、思わぬ事件に発展してしまう。その悲劇の裏にひそむ悪意にひじりは動揺しながらも、クラスメイトとともに事件を探るようになるが、ついには学園中を巻き込んだ大きな惨劇が発生してしまう。-その裏には驚きの事実が待ち受けていた。
昔気質の犯罪者、通称『銀狐』。「殺さず・弱者からは奪わず」を貫いて仕事をしていたが、防犯技術の発展に対応できず、最後に大仕事をして引退すると決意。馴染みの情報屋から、あるヤクザが巨額の現金を移送するという情報を仕入れ、強襲の策を練る。作戦は成功したものの、輸送車の中は空だった。後日、銀狐によって警備員たちが殺害されて現金が奪われたと噂が流れ、情報屋も殺害されてしまっていた。現金を狙う複数の追っ手が迫るなか、無国籍少女の“野良”となりゆきでコンビを組み、自分を嵌めた者たちを探し出し、復讐を果たすことを誓う。
この島、何かがおかしいー。子供を神と崇める土着信仰が根付く児宝島。息子の瑠偉を養子に迎えて一年の記念にこの島を訪れることにした辻村京子、正樹、そして瑠偉の三人は、前夜に墜落した隕石の影響で立ち往生していた鶴見夫妻とともに島へ渡る。天候にも恵まれ、楽しい家族旅行になるはずだった。しかし…。なぜか島には大人がいない。そして携帯電話や無線が使えず、島のそこかしこが荒らされている。まるで、無垢な子供が自由気ままにいたずらをしたかのよう。さらにいくつかの視線を感じ始めた。この島で何が起こっているのか。大人はどこにいるのか。誰に見られているのか。辻村夫妻は島を調べるのだが、その隙に瑠偉が攫われてしまう。攫ったのは、この島でもっとも神様らしい存在だったー。
横溝正史ミステリ大賞・優勝賞作家、渾身のリーガルミステリ!ごく普通の一般人である二宮智樹はある殺人事件の裁判員として裁判に参加することになる。その裁判では、美容師の男が若い姉妹を殺害した事件が裁かれることになっていた。智樹ら裁判員の多くが美容師の有罪へと意見が傾くなか、八木麻衣子と名乗る若い女性だけは美容師の無実の可能性を訴える。だが評決になって、麻衣子は一転して有罪へと意見を変え、美容師には死刑判決が下る。裁判から数か月後、智樹は麻衣子とつきあうようになり結婚を申しこむが、なぜか麻衣子はそれを拒む。折しも美容師の事件の控訴審が開かれ、麻衣子は再び美容師の冤罪の可能性に言及していた。その矢先、麻衣子は忽然と姿を消す。彼女はなぜ姿をくらましたのかー。
本土よりはるか南方の“東硫黄島”。この小さな無人島は四方を海に囲まれ独自の生態系を形づくっていた。学芸員の蜂須賀をはじめとする調査団が組織され、島の生菜系と生き物たちを調査することになった。外来生物の持ち込みを防ぐために厳重な準備と防護のもと、島に上陸を果たす。しかし、到着後まもなく調査団のひとりが殺されてしまう。口の中に外来植物の種子を詰め込まれたおぞましい遺体に、疑心暗鬼になっていく調査団メンバー。調査船とも連絡が取れなくなり、ボートも使用不能に。島から脱出できない中、第二の殺人が起こってしまうー楽園の島に閉じこめられた調査団を襲う惨劇。
かつては黄金の治世と呼ばれながらも、今は侵略と動乱に揺れる大陸。「彗星王」として名を馳せていた義賊の王義英と相棒の黒猫・夜風は、裕福な者たちの屋敷に忍び込んでは財産を盗みだし、暮らしに苦しむ民たちに配っていた。しかし、ある日、企てに嵌まってしまい逃れるために船に乗りこむことになった。その船には赤髪・碧眼の女性アナスタシアも乗っていた。彼女が暴漢に襲われたところを救った義英。聞けば、アナスタシアは島国である天神島の領主になりにいくという。しかし島は、領主不在の間に権力者二人によって島内を二分する争いが起きかねない状態だった。島の無辜の民たちのため、アナスタシアの補佐を買って出る義英だったが、次々に島内で起こる事件の数々に巻き込まれていくー。義賊と領主、二人が織りなす、清朝中国を舞台にした、歴史ファンタジー!
パリ・オペラ座新作公演の主役に抜擢された天羽七音美。原作者レジーヌ・ブラパンがこだわる「黒髪のジャンヌ・ダルク」像にぴったりなのだという。演出家ジャック・ロランの依頼で七音美は宣伝のためカンヌへ渡る。その頃、パリでは娼婦が丸刈りにされ殺される事件が起こっていた。被害者はカンヌのホテルの部屋番号と「オルレアンの魔女」という謎の言葉が記されたメモを握っていた。捜査にあたる刑事エミールもカンヌへ飛び、そして舞台は忌わしき伝説の残る「監獄島」へ。果たして「オルレアンの魔女」とは…。映画の都、監獄島、そして魔女の街へと駆け巡る探偵行!
京都の底辺高校と呼ばれる女子校に通うオタク女子三人、校内でもスクールカースト底辺の扱いを受けてきた。そんなある日、東京から息を呑むほど美しい少女・蛍が転校してきた。生物部とは名ばかりのオタク部に三人は集まり、それぞれの趣味に没頭していると、蛍が入部希望と現れ「私もね、オタクなの」と告白する。次第に友人として絆を深める四人だったが、ある日、蛍が線路に飛び込んで死んでしまう。真相がわからぬまま、やがて年月が経ち、蛍がのこした悲劇の歪みに絡みとられていくー。少女の心を繊細に描く名手による初のミステリ作品。
青年が滞在することになった、美しき母娘が棲む館。そこは、肉体の内部まで精巧に作られたアンティーク・ドールたちであふれ、その中には母娘そっくりのものまであった。人形に惹かれ、母娘だけでなく、人形とも一つになろうとする彼。しかし、そこには大きな秘密があった。“「魂入れ」によって動くからくり人形”とは何なのか…夢と現をさまよう彼に衝撃の事実が告げられる。
ある特殊能力のせいで、他人に関わらないように生きてきた久守一は、偶然、その力で美大生の佐伯が巷を騒がせる連続殺人犯だと知ってしまう。社交的で人当たりもよく、とても殺人犯には見えない佐伯は、捜査線上に浮かんですらいない。柄でもないと思いながらも、自分や後輩の身を守るため、犯行の証拠を探す久守。しかし、友達のふりをしているうち、佐伯に対して本当の友情を感じ始めてしまうー。
高校時代にスポーツクライミング部で名を馳せた主人公・岳。訳あって大学では競技を続けないと心に決めていた。しかし、恋人と噂される登山部部長の梓川穂高につかまり、幾度か一緒に山を登ったある日、岳のスマホに高校時代のコーチ宝田謙介からの着信があったのだがー。登山の最中に受けた、恩人からの無言電話。その後、知らされた恩人の滑落死。額賀澪がおくる山岳ミステリ。
元最上位の遊女・お染。寄る年波には勝てず、馴染みの客たちも離れてしまい、いまや衣を新調するための金にも困るようなありさま。元来の勝ち気な性格もあって、ひと思いに死んでしまおうかと思うが、金に困ってひとり死んだと言われることはあまりにも悔しく、ならば、心中をしようと考える。独り身で大食らい、ぬけている金蔵を相手に選び、手練手管で、ついに心中の約束を取りつけるのだがー