著者 : 枇谷玲子
Karen Blixenカレン・ブリクセン/Isak Dinesenイサク・ディネセンという主に二つの作家名で知られ、デンマーク語と英語の二言語で書いた女性作家についてのブック・ガイド。 『アフリカの日々』や『冬の物語』、『七つのゴシック物語』をはじめとする作品には何が描かれていたのか? ヘミングウェイに、自分よりもノーベル文学賞を受賞するのにふさわしいと言わしめたデンマークが誇るストーリーテラーは、どんな人生を送ったのか? 男性のようにズボンを穿き、自動車を運転し、ライオン狩りに行き、離婚し、自立し、外国で初めて真に成功したデンマーク人女性作家として強い女性のロールモデルとされながら、実は『バベットの晩餐会』の世界観に見られる敬虔なキリスト教家庭で培われた古い北欧的な人生観の持ち主だった彼女は、女性運動やフェミニズムに対し、どんな立ち位置にあったのか? 元ブリクセン博物館ガイドで、現在デンマークを代表する出版社で編集長を務める著者による、文学への情熱ほとばしる熱い解説で、難解といわれるブリクセン/ディネセン文学がたちまち親しみやすく、身近になる! ギーオウ・ブランデス賞受賞作。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 本文より 「『七つのゴシック物語』を読むのは、万華鏡をのぞくのに少し似ています。万華鏡を回したり、ひっくり返したりするたび、新たな模様が目に飛び込んでくるように、『七つのゴシック物語』を読むたび、様々な要素を持った新たな物語が生まれるのです」 「私はいまだに『七つのゴシック物語』のテキストが実際に何を意味しているのかを説明できる人物に出会ったことが一度もありません。それはこの作品が互いに矛盾する意味同士が連なる万華鏡のようだからです」 「(ブリクセン/ディネセンの作品の)登場人物は、何らかの形で罪を犯すことで初めて完全な人間になれるのです。彼らは人生の光と影の両方を知らなくてはなりません。(中略)愛の二つの側面ーー甘美な面と残忍で猛々しく暴力的な面をも体験しなくては、愛が何であるかを完全に理解することはできません。愛は時に危険で破壊的である一方で、美しく生きる力を与えてくれることもあります。ストーリーテラーは彼の行いに審判を下すことなく、その行動がどこに導かれるかをただ見守るのです」
通りを、アスファルトを、山道を、海岸沿いを、並んで、ひとりで、知覚を冴え渡らせ、無と化し、鳥の声に耳を澄ませ、寡黙に、饒舌に、物悲しく、意気揚々と、自由を求めー歩く。自分の人生を、主体的に歩き続けるとはどういうことだろう?古今東西の作家、音楽家、思想家たちの言葉に触れながら思策を深める渉猟の記録。現代ノルウェー文学の金字塔的作品、ついに邦訳!!
デンマークの僻地に住む一家。ほぼ自給自足の幸せな暮らしは、クリスマスに起きた事件を境に一変する。変わり者の父は偏屈さを増し、物静かな母は次第に動けなくなり、少女リウはゴミ屋敷と化した家で、隔絶された世界しか知らずに育っていく。やがて赤ん坊が生まれることになったが、そのときリウは父の意外な姿を目にし…。一家はなぜこうなってしまったのか?心を打つ切なさで北欧ミステリ界に新風を吹きこみ、北欧最高のミステリ賞「ガラスの鍵」賞およびデンマーク推理作家アカデミー賞の二冠に輝いた傑作長篇。
ハンネ・ヴィルヘルムセン、オスロ市警の腕利き女性犯罪捜査官。クリスマス休暇直前の真夜中近く、緊急の呼び出しを受ける。マンションで四人の他殺死体が発見されたというのだ。被害者は海運会社の社長とその妻、長男、そして身元不明の男。相続がらみの事件?だがハンネは、四人目の被害者のことが気になっていた。伝説の女性捜査官が事件を追う、ノルウェーの人気警察小説。