小説むすび | 著者 : 桃里留加

著者 : 桃里留加

ひそやかな賭ひそやかな賭

運河の町で恋をした。 思っていたのとまったく違う人に。 派遣看護師のコンスタンシアは仕事先のオランダで、 イエルン・ファン・デル・ヒーセンという医師と出会った。 年上のドクターは優しく穏やかで、笑顔がすてきな男性だ。 一緒にいると心が安らぎ、いつしか彼女は恋に落ちていた。 人づてに聞いた話では、彼は決して裕福ではないようだけれど、 コンスタンシアはむしろそのほうがいいと思っていた。 これまでに会ったお金持ちは皆、心が貧しく不幸な人ばかりだった。 お金なんてなくていい。ささやかな幸せのほうが大切なのだから、と。 しかし、コンスタンシアはまだ知らなかった。 まさかドクターが本当は、お金持ちの男爵だったとは……。 オランダの雇い主にくびにされたコンスタンシアが荷物を持って街を歩いていると、気づかない間にパスポートや所持金の入ったバッグを盗まれてしまいます。途方に暮れているところへ現れたのは、彼女が密かに心を寄せるドクター・ファン・デル・ヒーセンで……。

さまよう恋心さまよう恋心

彼の瞳も、唇も、私を嫌っている。 そう思っていたけれど……。 小児病棟の看護師長で働き者のアニスは、心機一転したくて、 ノルウェーの北の果ての島に暮らす弟の誘いに応じることにした。 そこで働いていた料理人兼看護師の代わりを務めてほしいというのだ。 弟の仕事仲間たちはアニスを大歓迎してくれたが、 一緒に働く医師ヤーケ・ファン・ヘルメルトだけは、 無愛想でそっけなく、アニスとはろくに言葉を交わそうともしない。 初対面のときから彼の瞳は冷たく、声には嘲りのような響きがあった。 こめかみに白いものがまざってはいても、整った顔だちはすてきなのに。 しかたがないわ。無関心を装うアニスはまだ気づいていなかったーー ヤーケこそが、彼女が心から夢中になれる男性だということに。 白夜の国ノルウェーを舞台に、唯一無二の作家ベティ・ニールズが揺れ動く恋心を描いた名作をお贈りします。北欧の厳しい自然にも似た、大柄でがっしりしたヤーケの黒い瞳は氷のようで、口元も険しい……。そんな彼の心情を想像しながら読む楽しさは格別です。

教授はそばかすがお好き教授はそばかすがお好き

「僕はそばかすが好きだよ」 落ちこむ彼女に、教授は言った。 私は子供たちを守ろうとしただけなのに、“猛女”ですって? 子守りのデボラは、突然現れた雇主の兄ギデオンに立腹した。 ハンサムで優雅な身なりの彼は教授らしいが、態度が尊大なのだ。 魅力的な笑顔にほだされちゃだめ。こんな失礼な人、もう会いたくない。 ところがある日、デボラが雇主一家の休暇先に同行すると、 なんとそこには、またしてもギデオンの姿が……。 驚き、とまどうデボラだったが、一緒に過ごすうち、 赤ん坊や子供に優しい彼の意外な一面を知り、急速に惹かれていった。 デボラの淡い恋心はしかし、ギデオンの不意の言葉に振り回される! 「僕と結婚してくれないか? ああ、ロマンスや愛は問題ではないが」 唯一無二の作家の名作集《ベティ・ニールズ・コレクション》をお贈りします。本心では何を考えているのかわからないヒーローですが、雇主にそばかすを指摘されて赤面する年頃のヒロインに対し、彼が後日、ドライブ中にさりげなくかけてあげる言葉が印象的です。

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