著者 : 桜井りりか
まさかセバスチャンが、重要な取引先の社長だったなんて…。デザイナーの卵のジェシカはセビリアにある会社を訪れ、服作りに最高の素材と出合うが、社長が誰かを知って愕然とした。豪壮な館に住むスペイン伯爵のセバスチャンとは、従妹の恋の不始末を巡って激しい言葉の応酬を繰り広げたばかりだった。彼は、話をするため伯爵邸を訪れたジェシカを従妹だと思い込み、金目当ての性悪女と、一方的に罵ったのだ。商談の席でも侮辱を続ける相手の頬を、ジェシカが思わず平手で打つと、セバスチャンは気高い顔に軽蔑と怒りの色を浮かべ、言い放った。「我が一族に手をあげた者は、必ず報いを受けるぞ!」
リーアにとって人生は完璧だった…あの事故に遭うまでは。酷い傷を負ったリーアは女としての自信を喪失していた。どんな男性にも心そそられるつもりはなかった。それなのに、新しく就任したやり手の社長ジェイソンの目に留まってしまう。誰もがその美貌に目を奪われ、足を止め、振り返るほどの、美しい彼が近づいてくるだけで、目眩がし、胸が高鳴る。しかし彼には、愛人にしかできないと言われているのだ。もし私の体に残る傷跡を見たら幻滅するに違いないと思うとーリーアの胸はねじれるように痛んだ。
シャネイは3歳の娘と一緒に、カーニバルの喧騒を楽しんでいた。そこで思わぬ相手とでくわしてしまうー夫の弟夫婦と。スペインの名家の一員で、億万長者のマルチェロと結婚し、上流社会に溶けこもうと努力したシャネイだったが、嫌がらせを受けたうえに、夫に愛人までいるとわかり、逃げるようにして、故国オーストラリアに帰ったのだ。その後に妊娠が発覚し、娘を産んだことを隠してきたのに、このままではマルチェロにすべてを知られてしまう。案の定、夫は自家用飛行機ですぐさま現れた。娘を奪うために。
レインは幼い頃から、10歳上の兄の親友ダニエルに恋していた。兄が亡くなったあとも彼は親身にレインを気遣ってくれ、ある日唐突にプロポーズされたときは、天にも昇る心地だった。だがふたりの初夜、彼が亡き兄への義務感から求婚したと知り、打ちのめされたレインは、花婿に婚姻無効を訴えた。それから2年。無垢なままのレインの前に、ダニエルが現れる。今や実業界の大立者で、美女たちとの噂も絶えない彼は、清掃員として働くレインにとって、もはや別世界の人だった。そんな彼が、私の小さなアパートメントになんの用かしら…。実はダニエルには、レインが想像もしない、ある計画があった。