著者 : 正岡桂子
白い結婚が幕を閉じてから、 初めて本当の愛を知ったのに……。 ダイアナは17歳のとき、両親に借金の形として老公爵へ差し出され、 以来白い結婚を続けてきたが、夫亡き今は社交界で噂の的だ。 “跡取りを産まなかった”“むこうみず”と後ろ指を指されても、 彼女は臆することなく社交を楽しんだーー 嘆くな、これからは自由に生きろ、という老公爵の遺言に従って。 貴族もそうでない者も男は皆、この若き貴婦人のあとを追いかけたが、 彼女が惹かれたのはただ一人、准男爵ネヴィルだけだった。 まじめで堅物との評判に反して、そつない会話と華麗なダンスで ダイアナを魅了したネヴィルはしかし、彼女の前評判に眉をひそめていた。 鼻の下を伸ばした求愛者リストなんぞに、我が名を連ねてたまるか! 道楽三昧で身を滅ぼした父と同じ轍は踏むまいと心に誓って生きるネヴィル。そんな彼らしく、噂の貴婦人ダイアナと出会い、美しいだけではない魅力にほだされそうな自分を戒めます。その忍耐も、いつまでもつことやら……。珠玉のリージェンシー・ロマンス!
薄幸な家庭教師は、男爵と知らずに彼を好きになってしまう。 日に日に気持ちは深まり、切なさは増すばかりで…。 住み込み家庭教師ジョアナは、好色な貴族の主人に手込めにされかけたところ を夫人に見とがめられ、屋敷を追い出される。無一文で馬にも乗れず、兄が管 理人として働いている地所まで歩いて訪ねるが、既に兄は解雇されたあとーー 代わりに現れたのが、端麗な容貌をした紳士ネッドだった。行き場のないジョ アナに、住み込みの仕事を与えてくれるという。上流階級の男性とは二度と関 わりたくないと思っていたのに、ジョアナは彼の誠実さに胸の高鳴りを覚えて しまう。だから気持ちを封じようとした。ネッドの優しさに搦めとられる前に。
カルは髭を剃りながら、妻と愛し合った甘い余韻に浸っていた。 ダイアナとの暮らしは幸せに満ちている。子供に恵まれないことを除けば。 突然鳴り出した電話が、彼を現実に引き戻した。病院の緊急治療室からだ。 ダイアナが通りで転倒して頭を打ち、運び込まれたという。 おまけに、赤ん坊も一緒だと。いったい何があったんだ? ダイアナはほんの30分前に家を出たばかりだ。 それに、なぜ赤ん坊が一緒なのだろう。 病院に駆けつけたカルを、妻はおびえた目で迎えた。 愛する妻は、夫のぼくが誰だかわからないのか……。 そればかりか、自分の助けた赤ん坊を我が子と思い込んでいたのだ。 ベスト・ブック・オブ2000と題して、この年に最も話題を呼んだ傑作をお贈りします。今も絶大なる人気を誇り活躍中の大御所作家、レベッカ・ウインターズ。悲しみを忘れた記憶喪失の妻と彼女を守る夫、捨てられた赤ちゃんの3人の絆を描く感動作です。