著者 : 永井義男
吉原の裏長屋で診療所をいとなむ医師・沢村伊織。表には出せぬ遊女の診察や金持ちの精力剤作りなど、なんともいかがわしい商売ではあるが、この伊織、幕府御典医の名家に生まれ、シーボルトの弟子となって西洋医術を会得した、凄腕の医者でもあった。そんな伊織のもとに、ある日、若い同心が訪ねてくる。名前を聞いたところでいっこうに覚えはないものの、男の顔を見たとたん、長崎留学時代の鮮烈な思い出がよみがえってきた。同心は、いまは粂之丞と名を変えた、かつての同輩・中島栄次郎であったのだ。ひさしぶりの再会に友誼を深めあうふたりであったが、中島は伊織に、ある挑戦的な提案をする…。大好評・医術時代の第四弾!
強請りたかりはお手のもの。誰が呼んだか、蛇蠍の忌み名。そんなワルの俺より悪党がいるー。長屋の井戸端に埋められていた藁人形。ささいな事件が招いた因縁。男気を出したばかりに無実の罪を背負わされて島流しにされた男。ご赦免花が咲き、ようよう帰ってきたというのに虫けらのように斬り殺された。手加減いっさいなしの悪党退治、“あぶない”岡っ引きが活躍するシリーズ第二弾。
草履でどすどすと、剥き出しの尻を踏みつけたー腕っこきだが、下手人を挙げる荒っぽさから“蛇蠍”と忌み嫌われる岡っ引きの捨蔵。強請りたかりもお手の物。信じるものはこの十手のみ。そんな悪党より悪党の俺でも許せねえ奴がいる。先代を殺った野郎に、落とし前はきちっとつけさせてやる。先代の形見、一尺九寸の仕掛十手が、江戸の闇に唸りを上げる。悪漢ヒーローが活躍する新シリーズ第一弾。
十八年ぶりに江戸の土を踏んだ浪人・生田嵐峯。かつて気鋭の漢詩人として活躍しながら、姦通の濡れ衣を着せられ出奔し、流浪の旅を続けていたのだ。詩を捨て、剣の道を選んだ嵐峯は、過去の真相を探り始める。その矢先、謎の刺客が来襲、背後に秋田藩の御家騒動をめぐる陰謀が浮上してきた…。ナポレオン騎兵の洋剣を打刀拵した直刀をたばさむ異端の剣士、見参。
倭寇伝来の剣法を操るよろず請負い人・阿郷十四郎のもとに、奇妙な依頼が舞い込んだ。市谷の古道具屋から盗まれた宝剣を、内藤新宿の女郎屋から奪還してきてほしいという。だが、その剣にはある秘密があった。幕府の中枢を脅かす辻斬り事件がその剣で行なわれていたというのだ…。宝剣の湮滅をめぐり忍び寄る危機。影流に端を発する十四郎の剛剣が唸る。