著者 : 江上冴子
かたくななまでに他人を受け入れようなとしないレンジと、背負った過去の重さゆえに、他人との距離を縮められない吉田。ふたりは、まだ浅い、春の夜に出会った。お互いの存在をそれぞれの心に見いだしつつも、素直になれなくて…。切なさに満ちた恋愛小説。表題作ほか7編を収録。叙情系ファンタスティック作品集。
私立天王寺学院は、中高一貫で厳格な全寮制の名門進学校。その厳粛な雰囲気をブチ壊す、経済ヤクザの組長の息子にして最低最悪最強の不良・加藤雅臣16歳。誰もが見惚れる端整な顔立ちながら、非常識で大胆で女も男も食い放題の野生の獣。その加藤のお気に入りの抱き枕・童顔教師芹沢の誕生日がやってきた。誕生日を恥ずかしがる芹ちゃんに加藤は…。
上京したばかりの大学生・康行は超おぼっちゃま高校生・渚の家庭教師をすることに。ワガママで生意気で…猫のような渚にファーストキスを奪われてしまい、康行はパニックに…!だが、いつしか惹かれあった二人は海辺の洋館で-。江上冴子の新境地、書き下ろしと純愛ロマンスも収録してBBNでご披露します。
わがままで何様でけだものみたいな人でなし…七つも年上の、しかも男の教師である芹沢をオモチャにしている、とんでもない男、加藤…。だが、その指先は驚くほどの繊細さで芹沢の快感を目覚めさせていく…。抵抗むなしく加藤に好き放題されている芹沢だったが…ある日、さらに驚くべき転校生を迎える。日焼けしたワイルドな長身、端正な顔立ちに長めの茶髪がよく似合う、アメリカ帰りのその青年は、なんと理事長の息子で元優等生の氷山三紀彦だった。まさに虎とライオン、二人の不良の狭間で芹沢は…。
白い夏椿が咲きこぼれる大塚の家で、高梨圭介は、夏江恭司郎の訪れを恐れ、あきらめ待つ日々を送っていた。帝大の二年生である圭介は、三十一歳の銀行家恭司郎に全てを奪われ、拘束され、-息もできぬほど愛されていたのである。
白樺林の奥、広大な敷地に建つ由緒ある全寮制の男子校-私立天王寺学院。厳かな雰囲気漂う礼拝堂、すべてをとりしきる軍隊なみの寮会…世俗から隔絶されたようなこの学校に、ある日、とんでもない転校生が現れた。それが加藤雅臣-すらりとした長身、切れ長の鋭い目、そして端正な顔立ちとは裏腹のルーズな服装。非常識で傲慢で傍若無人で、二言めには「うるせえっ犯すぞ」-憐れ、その欲望の対象となった新任教師、芹沢…。
明治のおわり。群馬県前橋市のちいさな織物屋の末っ子として、裕福ではないが暖かい家庭で育った小野沢智和。進学の夢をあきらめきれない彼は、東京本郷にある老舗の茶問屋・南条家で書生をしながら、一高へ通うことになる。智和が仕えるのは、帝大へ進む貴臣という涼しげな切れ長の目が印象的な青年であった。旦那様にも奥様にも似ていないような、怜悧な美貌の-。周囲を拒み憑かれたように勉学する貴臣に、慈愛と尊敬を込めて仕える智和であったが…。