著者 : 池本和夫
1944年、連合軍はノルマンディー上陸作戦を敢行した。だが、この名高い作戦の陰で英国女性工作員と空軍司令官が数奇な恋物語を繰り広げたことはほとんど知られていない。女の名はリフカ。男はハリー。独軍の爆撃を受けた列車内で命を助けられたリフカは、いつしかハリーに淡い恋心を抱く。やがて彼女は極秘指令を言い渡される。独軍占領下のフランスで消息を絶った彼を見つけ次第、殺害せよとの命令だった。
ヴェトナム戦争の末期、SISの特務隊員サラ・ルーカスは、450万ポンド相当の金と米ドルを輸送中に強奪された。事件後10年が過ぎ、過去の経歴を隠してサラは、トム・カートライトと幸せな家庭を築いていた。ところがサラの突然の失踪。トムは妻の捜索に香港へ飛ぶが、見えない敵に行手を阻まれる。冷酷非情な人々の陰で蠢くヴェトナム戦争の亡霊に、決然と挑むトム。鬼才イーグルトンの入魂の筆致が冴える。
俺の名はバーク。ニューヨークの私立探偵だ。久しぶりに依頼人がお見えになった。フラッドと名乗るそのご婦人、見かけはムッチリして男心をそそるのだが、実は日本で修行を積んできた武術家。コブラとやらを探せというのがご依頼。そいつは幼児を強姦して殺すのと、アフリカの白人国家の庸兵として正義を行なうのが趣味とかで、これまた黒帯もんの武術家というのだ。こいつはヤバイ事件になりそうだ…。
俺にはダウンタウンの底辺でうごめく強力かつユニークなダチ公がいる。口はからっきしだが腕は無類の音無しマックス。孤独な巷の天才発明家、モグラ。「完全な女」になるのが夢の男娼、ミッシェル…といった面々に総動員をかけ、フラッド嬢の依頼に応えるべく、コブラのいぶりだしにかかったのだが、横合いから南アへの武器密輸の話を持ち込まれて…。まったく、一筋縄じゃいかないぜ、今度のヤマは。