著者 : 清水裕貴
海は地下室に眠る海は地下室に眠る
ドレスを翻し踊る妖しい女ー稲毛の洋館で発見された絵画は、当地で流行った怪談を思い出させた。絵の調査が進まずにいたとき、学芸員のひかりは千葉の旧花街・蓮池にまつわるインタビュー資料を入手する。そこには、ひかりの祖母と“流転の王妃”嵯峨浩の、戦時下ながらも瑞々しい青春の記録があった。絵画の出所、祖母の記憶、“見てはいけない”絵の怪談。
花盛りの椅子花盛りの椅子
傷ついた古家具には、無数の命が仕舞われている。 緑生い茂る山の中、ぽつんと佇む「森野古家具店」。 そこには、過去の沁みこんだ被災家具たちが、各々の物語をたずさえ集まってくるのだったーー。 職人見習いの「鴻池さん」が、家具に秘められた当時の記憶に触れる、感性ゆたかな連作短編集。 一.「花盛りの椅子」--東日本大震災 二.「巣籠り箪笥」--伊勢湾台風 三.「万祝い襖」--関東大震災 四.「焼土鏡」--阪神淡路大震災 五.「私たちの寝床」--再び、東日本大震災 【著者略歴】 清水裕貴(しみず・ゆき) 1984年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学映像学科卒業。2016年三木淳賞受賞。2018年「手さぐりの呼吸」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞し、翌年に受賞作を改題した連作短編集『ここは夜の水のほとり』(新潮社)を刊行。写真家、グラフィックデザイナーとしての表現も精力的におこなっている。
ここは夜の水のほとりここは夜の水のほとり
生に無頓着なのに、死と隣り合わせだったあの頃。あなたと優しい幽霊、古い一軒家、アトリエ、そして玉川上水のほとりの並木道…。あまりにも完璧な、けれどもどこか曖昧な環境での、歪でつかみどころのないストレスに塗れた記憶がよみがえる連作短篇集。
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