著者 : 滝川幸司
日本文化史、日本政治史に大きな影響を与えた菅原道真。その詩文集である『菅家文草』は、従来その前半の「詩」の部分のみが注釈書として公刊され、儒者の大きな仕事である作文の成果、「文」に関しては纏まった形での注釈書の公刊がなされてこなかった。 そのような状況を受け、最新の日本漢文学・和漢比較文学研究の粋を結集して、『菅家文草』文章の部の全てを注釈する。今後の研究の基盤となる決定版。 第二冊は『菅家文草』巻七に所収される詩序(作文会などで詠作された詩篇に冠せられた散文)を収載。 はじめに 凡 例 序 〈文体解説〉 25 八月十五夜 厳閤尚書授後漢書畢 各詠史 序 26 早春侍内宴 同賦無物不逢春 応製 序 27 仲春釈奠 聴講孝経 同賦資父事君 序 28 九日侍宴 同賦喜晴 応製 序 29 晩冬 過文郎中 翫庭前梅花 序 30 九日侍宴 同賦天錫難老 応製 序 31 早春侍宴 仁寿殿 同賦春暖 応製 序 32 九月尽 同諸弟子白菊叢辺命飲 同勒虚余魚 各加小序 33 早春内宴 侍仁寿殿 同賦春娃無気力 応製序 34 右親衛平亜将率厩局親僕 奉賀大相国五十算宴座右屏風図詩 序 35 閏九月尽日 燈下即事 応製 序 36 三月三日 同賦花時天似酔 応製 序 37 重陽後朝 同賦秋雁櫓声来 応製 序 38 惜残菊 各分一字 応製 序 39 早春観賜宴宮人 同賦催粧 応製 序 40 賦雨夜紗燈 応製 序 41 東宮 秋尽翫菊 応令 序 42 春 惜桜花 応製 序 43 扈従行幸雲林院不勝感歎 聊叙所観 序 44 九日後朝 侍朱雀院 同賦閑居楽秋水 応太上皇製 序 45 三月三日 惜残春 各分一字 応太上皇製 46 未旦求衣賦幷霜菊詩 応製 序 あとがき 注語索引 人名索引
古代から近代まで、日本人は、つねに漢詩や漢文とともにあった。 本書は、最新の知見を踏まえた分析や、様々な言語圏及び国・地域における論考を集め、日本漢文学についての新たな通史的ヴィジョンを提示する。 研究史を概括しつつ、とくに政治や学問、和歌など他ジャンルの文芸などとの関係を明らかにしながら、文化装置としての日本漢詩文の姿をダイナミックに描き出す。 1 古代・中世漢文学研究の射程 平安朝漢文学の基層ー大学寮紀伝道と漢詩人たち 滝川幸司 長安の月、洛陽の花ー日本古典詩歌の題材となった中国の景観 高兵兵 後宇多院の上丁御会をめぐって 仁木夏実 誰のための「五山文学」かー受容者の視点から見た五山禅林文壇の発信力 中本大 2 江戸漢詩における「唐」と「宋」 語法から見る近世詩人たちの個性ー“エクソフォニー”としての漢詩という視点から 福島理子 室鳩巣の和陶詩ー模倣的作詩における宋詩の影響 山本嘉孝 竹枝詞の変容ー詩風変遷と日本化 新稲法子 近世後期の詩人における中唐・晩唐 鷲原知良 3 東アジア漢文交流の現実 通信使使行中の詩文唱和における朝鮮側の立場ー申維翰の自作の再利用をめぐって 康盛国 蘇州における吉嗣拝山 長尾直茂 4 漢詩・和歌が統べる幕末・維新期の社会 幕末志士はなぜ和歌を詠んだのかー漢詩文化の中の和歌 青山英正 漢詩と和歌による挨拶ー森春濤と国島清 日野俊彦 西郷隆盛の漢詩と明治初期の詞華集 合山林太郎 5 近代社会の礎としての漢学ー教育との関わりから 明治日本における学術・教学の形成と漢学 町泉寿郎 懐徳堂と近現代日本の社会 湯浅邦弘 6 新たな波ー世界の漢文学研究と日本漢詩文 英語圏における日本漢文学研究の現状と展望 マシュー・フレーリ 朝鮮後期の漢文学における公安派受容の様相 姜明官(康盛国訳) 越境して伝播し、同文の思想のもと混淆し、一つの民族を想像するー台湾における頼山陽の受容史(一八九五〜一九四五) 黄美娥(森岡ゆかり・合山林太郎訳)