著者 : 田中文雄
諸葛孔明が五丈原で死んだのち、蜀の命運をひとり双肩に背負った姜維。不肖の後主、劉禅は酒色に溺れて政を忘れ、宮廷では宦官が権力をほしいままにする。厭戦ムードが高まる中、孔明の悲願である漢朝再興のために、彼はあえて中原に撃って出た。漢王朝の再興を期し、孔明が姜維に託した秘策がいま明かされる。蜀の興亡に己の命をなげうった孤高の忠臣、姜維の生きざまを描くオリジナル伝奇。シミュレーションゲームで人気の高い賢将の姿に、五丈原後の知られざる三国志の世界を見た。
宿命のライバル司馬仲達を討つため、五丈原を目前にした諸葛孔明がとった大戦略とは?当時、倭国といわれた邪馬壱国に舞台を移し、魏延が、姜維が覇権争奪をめぐって繰り広げる虚々実々の駆引き。孔明の死命を賭けた戦いの幕が下ろされる。五丈原までの孔明の空白の三年間にスポットを当てた異色作。新境地に挑戦する著者渾身の超大作。
パリスは和平とヘレネーの二つを賭けて、スパルタ王メネラーオスとの一騎打ちにのぞんだ。だが、闘いの最中、何者かが射た矢がメネラーオスを負傷させる。パリスの計略と誤解したギリシア軍との戦いは、避けられないものとなった。トロイアの財宝を狙うギリシア諸将の思惑どおり、戦いの火蓋が切られた。巨大な攻城櫓が次々に城壁に掛けられ、ギリシアの大軍がトロイア城内に攻め込んでいく-。
六本木のディスコで知り合ったおじいちゃん溝田清志は、典子と千尋の勤める白坂物産の筆頭株主、実業界の大物だった。その溝田氏が夫人ともどもふたりにある依頼をしてきた。『赤毛のアン』の舞台となったプリンス・エドワード島に行き、ある少女を捜してほしいというのだ。少女の名前はメグ・アルレー。アンのファンである夫婦が昨年島を訪れたとき、優しく世話をしてもらったという。消息の途絶えた娘を見つけようと島をめぐるふたりの前に「メグ・アルレー」は現れたのだがー。
日光の山並みが青空に浮き上がる北関東の城下町。鬼塚探偵社に、一人の若者がある女性の捜索依頼にきた。その女性・徳大寺しおりを捜索するうちに、鬼塚はいくつかの過去の事件につきあたる。三人の若い男女の蒸発事件、そして文学賞受賞作家の謎…。やがて、凍てついた雑木林から白骨化した一つの遺体が発見される。若者は、なぜ“冬の旅”を続けたのだろうかー?私立探偵・鬼塚渉の推理がさえる長篇サスペンス。
死ぬことはなかったのだ-紀元前1496年、エジプト女王・ハトシェプストは自ら建設した巨大な葬祭殿の前にたたずみ、自害した忠臣・センムトに思いを馳せていた。葬祭殿建設の最大功労者であり、愛人でもあったセンムトを、女王は忘れることができなかった。葬祭殿の一角に自らの像を刻んだことが発覚し、毒を仰いで死んだセンムトを-それから150年後、「死人起し」と呼ばれ、かつて凄腕の墓あらしだったパキの許に、昔の仲間が転がり込んだ。葬祭殿で死んでいる筈の女王を見たというのだ。パキの冒険が再び始まる…。書下し長篇英雄活劇。
鮎子を執拗につけ狙う暴力団の影、影…、そして急場に現われる寂しげな“少年”の亡霊、緊迫の逃亡劇の終着駅は秋の夕日に照らし出された赤煉瓦の西洋館だった。庭一面に咲き乱れるコスモス、蔦のからむ断崖、霧の中に浮かぶ錆びた鉄扉ー。著者会心のモダン・ホラーの長編傑作!