著者 : 白川貴子
スペイン、カタルーニャ州の田舎町テラ・アルタ。町いちばんの富豪であるアデル美術印刷の社長夫妻が、惨殺された。夫妻は見るも無残な状態で血だまりの中に横たわっており、激しい拷問の末に殺されていた。獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪から足を洗い警察官となったメルチョールが事件の捜査に当たるが、彼は想像だにしない地獄へと引きずり込まれていくことになる…。正義と悪とは何かという根源的な問いを突き付ける、英国推理作家協会賞最優秀翻訳小説賞受賞のスペイン・ミステリの傑作。
住人たちが逃げ出し、二度と戻ってこなかったため廃墟になった村、パライソ・アルト。そこを訪れるのは、人生を諦め、命を絶とうと決めた人に限られる。逆立ちで現れた、うなじにコウモリのタトゥーがある少女。車に積んだ札束を燃やしたいと言う大物銀行家のような男。口を利かず、横笛の音色で受け答えする男。廃墟に住む「天使」は、彼らになぜパライソ・アルトにやってきたのか尋ね、生い立ちに耳を傾け、「向こう」への旅立ちを見送る。生と死、日常と非日常の狭間にたゆたう不思議な場所と、幻のような来訪者たち。詩人としても高く評価されているスペインの作家が贈る、美しく奇妙で、どこかあたたかな物語。
スペイン、バスク地方のバスタン渓谷で、連続少女殺しが発生する。絞殺された少女たちは森の中で、裸身を晒して仰向けに横たわるポーズをとらされていた。州警察は地元出身の女性捜査官アマイアに捜査主任を命じる。迅速に捜査を進めるべく奮戦するアマイアだが、故郷に戻ったことで否応なしに、捨てたはずの自分の過去に直面し、公私ともに追い込まれてゆく。さらに死体発見現場では、バスク神話の精霊である大男バサジャウンの姿が目撃されていた…歴史と伝説に彩られた秘境を舞台に展開する、大型サスペンス。